第16章 花梨(カリン)〔古くから咽喉の特効薬〕 咽喉の痛み 疲労回復
◆見分け方の特徴


カリンは、落葉性の高木で高さが8mくらいにもなり、棘状の小枝があって樹皮は緑褐色で鱗片状にはがれて雲紋状になります。幹からでる枝は細く四方に広がります。葉は、有柄で倒卵形から楕円形で互生して、葉縁には鋸歯が葉柄まであります。
若葉の裏面には綿毛がありますが、だんだん脱落して無毛になり、堅い葉になります。花は4~5月ころに短枝の頂上に1個咲きます。花弁は5枚で淡紅色の楕円形で、花径は2~3cmで、花弁の基部は短柄様となっています。
雄ずいは多数で、果実は初め淡緑色ですが黄色に熟し、大きく長い西洋梨形をして大きさは10~15cmです。果実面は、少し凸凹があって、ろう質が分泌されて光沢があります。暗黄色に熟してきて果実の重みで枝が湾曲して、強い芳香がり、落葉後も果実は枝に残ります。
果肉は堅く酸味が強く生では食べることができませんが、籠に盛って室内に置いて香気を楽しむことができます
- 科名:バラ科/属名:ボケ属
- 和名:花梨/花櫚
- 学名:Chaenomeles sinensis
- 中国原産の落葉性高木で日本全国で広く植栽されている。
- バラ科マルメロ属マルメロ(榲桲)
<その他>
カリンは、榠摣(めいさ)とも呼ばれていて、中国中部の原産です。古くに日本へ渡来しましたが年代はわかっていないようです。カリンの材は、辺材が淡赤色で心材は暗紅褐色をしていて、非常に堅硬緻密でしかも粘りが強く、色調光沢ともに美しいので床柱、造作の装飾部分、家具、玉突台、杖、額縁、彫刻材料、バイオリンの弓などに用いられています。
マルメロは、中央アジア原産、カリンは、中国原産で、マルメロ、カリン共に近縁種で落葉高木です。カリンは、中国から古い時代に渡来して庭木や盆栽などに植栽されていました。マルメロは、寛永11年ころに、長崎に渡来したという記録が残っていて、現在は長野県を中心に栽培されています。
◆採集と調整
カリンは、落葉後の10~11月に、樹上に残って暗黄色に熟したものを採取して、10分程度湯通しして縦割りにして乾燥させます。これを生薬で、木瓜(もっか)といいます。
◆薬効〔疲労回復と咽喉の痛みに効果的〕
有効成分:果実にリンゴ酸、クエン酸などの有機酸。鎮咳薬として、木瓜をさらに細かく刻んで、1日量5~10gを適量の水で煎じて服用します。
カリン酒
疲労回復の薬用酒として、果実(未熟果でも完熟果でも良い)冬期に採取した果実5~6個を、縦横6~8個くらいに刻んで、ホワイトリカー1.8リットルに漬け込み、砂糖や蜂蜜を300~400gを入れます。
完全に熟成するまでには半年以上かかりますが、漬けてから2ヶ月程度で美しい淡黄色になり、芳香が出てくるので飲むことができます。カリン酒の味は苦味がありますが、鎮咳薬として効き目があります。
※果実は果肉と種子も一緒にお酒に漬け込みます。場合に寄っては『蜂蜜漬け』も良い。
<栽培>
カリンは、挿し木により殖やすことができます。挿し木には、春ざしと夏ざしがあって、春ざしは、前年に伸びた枝を10~15cmに切って、鹿沼土と川砂の混合土に挿し木をします。また、夏ざしは6~7月上旬に、その年に伸びた枝を10~15cmの長さに切って、春ざしと 同様に挿し木をします。半日日陰に置いて、葉水を与えるようにします。発根したら、鉢植えか、庭などに定植します。
カリン酒

カリンは、タワシで皮をきれいに洗い、ざるに上げてよく乾かします(一日位置く)。
保存瓶はきれいに洗って乾かし、内側にホワイトリカーを噴霧して消毒する(蓋の裏側も)。
カリンを輪切りにし、保存瓶に種ごと入れる。カリン~氷砂糖~カリン~氷砂糖の順に入れ、最後にホワイトリカーを注ぎ蓋をする。
涼しい場所に保管し、時々、瓶を揺すり、ホワイトリカーに浸かっていないカリンに、回しかける。
1カ月で飲めるようになりますが、熟成には6カ月以上必要。
6カ月たった後は、実を取り出して、お酒を濾して、別の瓶へ移しかえます。