第16節 飢餓と肥満〔カロリー摂取だけではない〕 

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◆飢餓で張っているお腹は腹水で腫れています。

飢餓で重度の栄養失調になると、血液に溶け込んでいる蛋白質が薄まります。この血液に溶け込んでいる蛋白質は血漿タンパク質と呼ばれますが、これが血管の中に水分を溜め込んでいるのです。この溜め込む力は水に溶け込んでいる物質の濃度で決まります。もし、血漿中に溶けている蛋白質の濃度が低ければ、血管内に水を溜め込む力が弱くなることになります。

栄養失調状態が長期に続くと、肝臓の血漿タンパクを作る力が弱まります。すると、血漿タンパクの量が減るので、結果、血管の中に水を溜め込む力がなくなって、血管の外ににじみ出てきます。これがお腹の血管の場合、腹水となるので「お腹が太っている」ように見えるわけです。また、お腹周りの脂肪、筋肉も衰えているので、より張っているように見えるわけです。

蛋白質が水を溜め込むという意味ですが、ちょっと難しい説明になりますが、浸透圧という言葉をご存知ですか?砂糖水と水をガーゼの膜で二分しておいたら、そのうち綺麗に混ざりますよね。この膜を水しか通らない膜(半透膜って言います)にすると、砂糖水から水のほうには砂糖は移動しませんが、逆の砂糖水の方には水が移動してきます。結果、砂糖水の水位が上がります。このような水を吸い込む力、逆に言えば水を離さない力を浸透圧っていいます。

血管の壁もそのような半透膜の性質を持っているので、同じことが起こっているのです。蛋白質が濃いと、血管からそとに水が移動しにくいわけです。

肥満問題がより深刻なのは、先進国よりもむしろ途上国です。肥満の主な原因がカロリーの過剰摂取にあることは言うまでもないが、先進国の多くは、概ね「過小摂取」「適量摂取」の時期を経て「過剰摂取」つまり肥満の時代を迎えています。

しかし、途上国で起こっている肥満問題は、この適量摂取の期間がほとんどなく、過小摂取からいきなり過剰摂取に移行することにより起こっています。信じられないようなスピードで肥満が進行しているのはこのためです。

◆飢餓肥満

さて、近年の沖縄の県民に肥満が増えたと言われています。ではカロリー摂取過多か?お酒の飲み過ぎか?いいえ、むしろ全国平均よりも少ないのが実態です。飢餓肥満ではないかと疑われています。真相の解明が待たれます。

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