第1節 検査結果の判定基準〔健康状態から改定される数値〕 

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◆健康診断の判定基準を改訂<人間ドック学会>

日本人間ドック学会と健康保険組合連合会はこのほど、血圧や血糖値、コレステロール値、肥満度などについて、健康診断や人間ドックで「異常なし」と判定する血液検査の新たな基準範囲を策定すると発表した。

日本人間ドック学会などが新たに策定する基準の範囲は、「健康な人」の検査値であり、高血圧学会や糖尿病学会など専門学会の診断基準の値とは異なるが特徴となる。同学会は、調査研究委員会を設け、同学会が認定している「人間ドック健診施設機能評価認定」200施設より、約 150万人の健診受診者のデータを集積した。新たに予防医学の観点から27項目について、基準範囲を性別、年齢別に作成する。

◆健康診断の判定基準を改訂<人間ドック学会>

同学会などは、2年間の研究事業(2013年~14年)を開始した。今後5年間をかけて追跡調査する。「新たな健診の基本検査の基準」は、下記の行程を経て作成される。

  • 人間ドック健診受診者個々の健診結果データを解析し、新たに予防医学の観点から大規模研究により検査の基準範囲を性別、年齢別に作成する。
  • 人間ドック健診受診者の個々の臨床検査値や他の健診指標を、同じく大規模研究により5年間追跡調査を行い、他の企業定期健診受診者のデータと比較検討し、人間ドック健診の有用性を検証する。

研究事業では、米国の臨床検査標準である「CLSI」の基準をもとに、(1)癌などの重大な病気の既往歴がない、(2)高血圧や糖尿病などで薬を服用していない、(3)喫煙習慣がない、(4)飲酒は1日1合未満などの条件により、人間ドック受診者約 150万人から約34万人の「健康人」を選び出した。このうち検査値をもとに、1万5000人の「超健康人」(スーパーノーマル人)に 絞って、「健康」と判断できる数値の範囲を決めた。

なお、男女差や年齢差によって数値が変わってくるので、性別に加えて、年齢別の基準範囲では、年齢を「30~44歳(壮年期)」、「45~64歳(中年期)」、「65~80歳(高齢者)」の3つのグループに分けて策定した。

◆コレステロールや中性脂肪など基準値を大幅変更

現在、検討中の新しい基準では、現在の基準で正常とされている数値の範囲を、大幅に緩められる見込みだ。コレステロールや中性脂肪など従来の学会基準と大きく異なるものが少なくない。例えば、収縮期血圧は従来129mmHg以下を「異常なし」としていたが、147mmHgでも健康と判定されるようになる。肥満度を表す体格指数(BMI)も、現行の25以上は肥満とされている。しかし、男性は27.7まで、女性は26.1までは健康とされる。

また、LDLコレステロールは、従来は60~119mgを「異常なし」としていたが、45~64歳では男性72~178mg、女性73~183mgは健康とされる。中性脂肪や、アルコールによる肝障害の指標になるγ-GTPなども大幅に変更される。

人間ドックや企業の健康診断では、同学会が公表している判別値を使う施設もあれば、日本高血圧学会など専門学会が定めた診断基準を利用する施設もあるなど、バラバラな状況だ。同学会は「これまでにない大規模調査の結果で求められる新基準を、健診施設などで統一基準として利用してほしい」と説明している。

◆新たな健診の基本検査の基準範囲<日本人間ドック学会>

従来の基準値と大きく異なるのは、①年代別と②性別との新たな基準が導入された事です。

従来値
(男女共通)
新基準
男性女性
血圧収縮期血圧130未満88~147
拡張期血圧85未満51~94
体格指数(BMI)25未満18.5~27.716.8~26.1
γ-GTP0~5012~849~40
総コレステロール140~199151~25430~44歳
145~238
45~64歳
163~273
65~80歳
175~280
LDLコレステロール60~11972~17830~44歳
61~152
45~64歳
73~183
65~80歳
84~190

と、これを発表されるとマスコミなどで間違った攻撃がありました。誤解は、緩和された値になった!との勘違いです。そこでNPO法人の日本人間ドック学会がコメントを発表:

▼以下、そのコメントです。

日本人間ドック学会は、大規模調査から基準範囲に関する新たな調査結果を発表しました。一部の検査項目においては対象者や統計手法の違いから生じうる差異がマスコミでクローズアップされ、誤解を招いております。この点についてわかりやすくご説明申し上げます。

◆どうして新たな基準範囲を調査・発表したの?
基準範囲(以前は正常値と呼ばれていました)の選定方法は国際的に決められていますが、検証する対象者が少なかったため、各医療機関によって基準範囲が異なっていました。それらを統一するための第一歩として調査・発表したのが今回の基準範囲です。
◆どうやって基準範囲を調査したの?
全国の 150万人余りの人間ドック受診者から、他の一般的な検査に異常なく、飲酒はビール相当1本以下、喫煙もしない15000人余りの厳選された健常者の検査値を元に算出しました。"この選定方法は国際的に決められています。
◆今回の基準範囲に照らし合わせると、今まで治療していた私は治療をやめてもいいの?
今回の発表により、多くの方に誤解されている点です。今回の値は、予防医学的閾値とは異なります。今回の値で基準範囲内になったからといって、治療を受けなくてもよい、薬を中止してもよいという自己判断せず、かかりつけ医師と相談してください。
◆どうして従来の基準範囲と異なるのか?
たくさんある検査項目の中で、肥満度(BMI)、コレステロール・中性脂肪(脂質)、血圧、糖代謝(血糖、HbA1c)の項目は、異常になるほど将来脳卒中や心臓病などを引き起こすため、危険域となる「予防医学的閾値」が設定されています。
今回の基準範囲の上限値と予防医学的閾値は、自ずと違いが生じます。今回の値は、他の一般的な検査に異常なく、飲酒はビール相当1本以下、喫煙もしないなど場合に限ったものです。当てはまらない場合はより厳しい基準から判断する必要があります。また将来事故を起こしやすいとされる値を超えている場合は、将来事故(脳卒中や心臓病など)を起こす危険性が高まります。自己判断されず、掛り付け医師と相談し、予防医学的閾値を重要視されますように。
▲以上、そのコメントです。

特に、最近では癌の早期発見が騒がれています。健診の機会を逃さずに必ず年に1回は受診をする様に心掛けて下さい。[早期の発見、早期の治療、手遅れ防止]

◆健康な人の検査値から上下2.5%を除いた、95%内に含まれる数値が基準値

人間ドックの検査結果は、わかりやすいように「正常範囲」「経過観察」「再検査」「精密検査」で示されます。血圧や尿検査などでは、検査数値が「基準値」の範囲に入るものが正常と判定され、それ以外はなんらかの異常が疑われます。

基準値は、過去に大きな病気の経験がない、健康な人の検査結果から求められます。健康な受診者の検査値から上下2.5%を除いた、95%内に含まれる数値が基準値とされます。 日本人間ドック学界では、医療機関によって若干のばらつきがある基準値を統一するために、全国のデータをもとに基準値のガイドラインを作成しています。日本人間ドック学界などによる認定施設や一部の医療機関では、このガイドラインが利用されています。

◆実際は「正常」でも異常値が出やすい項目があります

検査時の心理状態や食事などによって、実際には正常であるにもかかわらず、異常が疑われる数値が出やすい項目があります。以下はその代表的な項目です。

・血圧
医師や看護師などに緊張して血圧が上がることがあります。これを「白衣高血圧」といいます。普段から家庭で血圧を測定しておくと、白衣高血圧なのかどうかの判定に役立ちます。
・総コレステロール
総コレステロール値が基準より高い場合、動脈硬化が起こる可能性が高くなりますが、閉経 後の女性では閉経前よりも 20mg/dlほど数値が高くなる傾向があります。多くの場合は心配 ありません。
・中性脂肪
検査前日に脂肪分の多いものを食べたり、アルコールを摂取していると、中性脂肪の値が一時的に高くなることがあります。
・尿蛋白
陽性の場合は腎炎などが疑われます。ただし、高蛋白の食事をとったり、スポーツをしたり強いストレスがあったりすると、病気がなくても尿蛋白が陽性になることがあります。

◆基準値範囲外は赤信号

検査結果が基準値から外れていた場合、病気の危険信号なのかどうかの判断が必要です。人間ドックでは、医師が問診で受診者の生活習慣なども確かめた上で、総合的に判定します。

・オプション検査
特定の病気を発見するために受診者が選択して受ける追加検査です。
・動脈硬化を調べる検査
心筋梗塞や脳卒中の発症と関係の深い動脈硬化を調べます。
・癌を早期発見する検査
PET、マルチスライスCT、マンモグラフィなどの画像検査
・異常を指摘されたら
再検査や精密検査を受けて、病気ではないかどうか確認します。

◆人間ドックで発見される癌の8割は早期癌

人間ドックで発見される癌は、男女合わせると胃癌が最も多く、女性に限った場合は、乳癌が増えています。人間ドックで見つかる癌のおよそ8割は、早期癌だとされています。早期発見に有用な画像検査には、次のようなものがあります。

・PET(陽電子放射断層撮影)
陽電子を放出する放射性医薬品を静脈から注射して、陽電子によって出される放射線を特殊なカメラを使って画像化します。癌の検査の場合には、ブドウ糖に似た放射性医薬品を使います。
癌細胞は、正常な細胞よりもブドウ糖の消費量が多いので、この薬剤は細胞に多く取り込まれます。つまり、癌のあるところから放射線が多く放出され、それが画像に映し出されて、癌の所在が明らかになるのです。
参考>
PET検査は、一度に全身を撮影できるうえ、5mm程度の小さな癌を見つけることも可能です。しかし、前立腺や腎臓、膀胱など、放射線医薬品を尿とともに排泄する部分の癌は見つけにくいのが欠点です。検査時間は、一度に全身を撮影するので、2時間程度かかります。また特殊な装置が必要なため限られた医療機関でしか行えません。
・マルチスライスCT(コンピュータ断層撮影)
CT検査は、体を輪切りにするようにエックス線撮影し、コンピュータで処理をして画像に表わすものです。マルチスライスCTは、通常のCTよりも細かい間隔で、高速で体を連続撮影することができます。
従来のCTでは画像と画像の隙間にあって見逃されてきたような小さな病巣や血管の異常を発見することが可能です。また、得られたデータから、鮮明な三次元の立体画像を作ることもできます。検査時間は5~15分程度です。
・マンモグラフィー(乳房エックス線撮影)
圧迫版で乳房を上下と左右から挟み、エックス線撮影する検査です。ごく小さな癌や、石灰化(癌細胞の中心部が死んで、カルシウムが沈着して固まった状態)をとらえることができしこりになる前の早期の乳癌を発見できます。厚生労働省は、40歳以上の女性の乳癌検診には、マンモグラフィーを使用すること勧めています。

◆健康診断の目的と検査項目

健康診断(健診)は、特に自覚症状のない人が、自分の健康状態を知って生活習慣病を予防したり、隠れた病気を発見するために行われます。健康診断には、職場や自治体の健診などがあります。企業などに勤めていないと受けにくいことがあるかもしれませんが、健診の大切さを理解し、1年に1回は受けるようにしましょう。

・検査項目
健診では、血圧測定、尿検査、血液検査、肺機能検査、胸部エックス線検査、心電図検査、視力検査、眼圧測定、眼底検査などが行われます。尿検査では、尿糖、尿たんぱく、尿潜血反応など、血液検査では総コレステロールや血糖、GOT(AST)、GPT(ALT)、γ-GTP、赤血球数などさまざまな項目を調べます。
・医師による診察
検査項目の数は、職場や自治体などによって異なります。「人間ドック」の場合は、健診より検査項目が多く、オプションの検査を加えることもできます。健診や人間ドックでは、検査項目ごとに、結果を数値で表したり、異常の有無を示します。また、複数の項目から、脂質代謝、糖代謝、肝機能、腎機能などを調べ、「異常なし」「経過観察」「要再検査」「要  精密検査」などと判定されます。

◆基準値について

数値で示される検査項目には「基準値」が設けられています。健康な人の集団の検査値をもとに、その95%の人が含まれる範囲を統計的に求めた値が基準値とされ、医療機関ごとに値が違うことがあります。各検査値が基準値の範囲内であれば、問題ないとされます。

◆生活習慣病を予防する

毎年の検査結果は保管しておき、今回と前回の値を比べてみましょう。基準値の範囲内であっても、前年から大きく変動している場合は、注意が必要です。例えば、総コレステロール値が高くなっている場合は、現在の生活習慣をそのまま続けるとさらに値が上昇し「高脂血症」になる可能性があります。

また、生活習慣病に関係する検査項目の場合、値が基準値の範囲を少々外れていても、「再検査」ではなく、「経過観察」と判定されることがよくあります。これは「すぐに治療を始めるほどではないが、生活習慣病を改善する必要がある」という意味です。生活習慣病があると動脈硬化が進み心筋梗塞などが起こりやすくなります。その予防のためにも、生活習慣の改善 に取り組みましょう。

◆隠れた病気を見つける

「要再検査」あるいは「要精密検査」と判定された場合、病気がある可能性があります。必ず医療機関を受診して診断を受けたり、治療を受けることが大切です。

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