第5節 運動機能の低下を防ぐ〔体力低下は病気の元〕 

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ひとつ発症すると複数の症状を合併することも多いため、負の連鎖を断ち切るためにも定期的なチェックと改善が必要です。ここでは「運動機能の低下」について説明します。

<運動機能の低下を防ぐには?>

体力の要素にはいわゆる運動機能(筋力、持久力、パワー、敏捷性、協調性、平行性、柔軟性など)があります。こうした身体的要素に、免疫力や精神的要素(意思・決断・判断など)が加わり体力が構成されます。

加齢による体力の衰えとは、免疫力や精神的要素を含めたすべての衰えのことです。年を重ねると疲れやすくなる、病気になりやすいなども体力低下が原因といえます。余談ですが振込め詐欺に多い被害者は65歳以上の人が8割にもなります。老人は詐欺に遭いやすい?いいえ脳の機能の衰え(判断能力、運動能力など)があるからです。

体力の中でも、加齢により最も衰えやすいのが運動機能です。 特に、運動機能のひとつである筋力の衰えは顕著です。筋肉は年齢とともに細く弱くなります。80歳では、20歳代の40%も筋肉が減少すると言われています。特に素早い動きに対応する速筋線維の委縮は、遅筋線維に比べて低下が著しいため、高齢者は素早い動きに対応できなくなります。また、こうした委縮は、上肢よりも下肢に表れやすく、移動能力を低下させ、日常生活レベルを低下させる主な要因となります。

20歳を過ぎると筋力をはじめとして運動機能は衰えていきます。ロコモは40代から注意が必要とされていますが、予防は40代で始めるのではなく、若いうちから生活習慣を整え、運動を定期的に行うことで、運動機能の低下を防ぐことが重要なのです。

<運動器の疾患>

年齢とともにロコモの重症度が増す背景には、加齢による運動器の損傷があります。ロコモの代表的な運動器の疾患には次の3つがあげられます。

  • 骨粗鬆症・骨粗鬆症による骨脆弱性骨折
  • 変形性膝関節症や関節炎による下肢の関節機能障害
  • 脊椎間狭窄症による脊髄・馬尾・神経根障害

骨粗鬆症は、加齢による骨密度の低下により骨が脆くなり、骨の変形や痛みが起こる症状です。軽い衝撃での骨折や、腰椎の圧迫骨折の原因にもなります。

変形性膝関節症や脊椎間狭窄症は、長年に渡る関節の使用により、軟骨や椎間板が磨耗することで発症します。軟骨や椎間板は、関節内で身体を支える骨と骨のクッションの役割をしています。運動や加重のストレスにより、年齢とともにクッションがすり減っていき、軟骨が無くなると、骨と骨がぶつかり炎症を起こしたり、神経を圧迫したりして、痛みやしびれなどを引き起こすのです。

こうした疾患のほとんどは加齢によるもので、病院に行くと「年齢のせいです」と言われて痛み止めの注射や薬の処方をされる場合が多いようですが、対処的な治療では根本的な改善はありません。一度変形してしまった関節や狭くなった脊椎間をもとに戻すことはできません。

しかし、症状の悪化を防ぐことはできます。強い痛みが治まったら、患部周辺の筋力を強化し、生活習慣を見直して、患部にかかる負担を軽減することで痛みを出にくくするのです。寝たきりや要介護状態を防ぐためには、なるべく早い段階で対処することが望ましいのです。

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