第4節 活性酸素が引き起こす病気〔活性酸素と生物との寿命〕 

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活性酸素によって、こうした変化が体内で起きる結果、さまざまな病気が生起してきます。老化も進み、体も弱って来ます。

では、活性酸素がどんな病気に関係しているかを、以下に述べます。

1.老化

 

老化と活性酸素の関係が注目されるようになったのは生物の寿命の研究からでした。動物はだいたい体が大きく、脳の重さが重いほど長生きする傾向にあります。ネズミや小鳥などの小さい動物は、心臓の鼓動も人間に比べて早く打ち、体温も高く、始終食べ物を食べていなければならず、短い寿命しか持てません。それに比べて人間を始めゾウ、サイ、クジラといった体の大きい動物は一般に長生きします。

体の小さな動物の心拍が早く、体温が高いことは、非常に早く新陳代謝を行っていることを示しています。その結果、酸素の害をより多く受けることとなり、それが寿命に影響している、と考えられています。それほど酸素のもたらす障害は、生体に深刻な影響を与えている、ということです。

体は、あとで詳しく述べる様に、活性酸素の害から体を守る働きが備わっています。この働きを担う酵素の一つをSODといいます。SODの働きが強い動物ほど長生きなのです。つまり、活性酸素の害から体を守る物質が、体内で活発に働いていると、老化を遅らせることが出来る、と考えられるのです。

しかし、残念なことに、SODの働きは歳をとるに従って低下する、ということが報告されています。特に、活性酸素が増えたわけではなくても、この防御機構が弱まればやはり活性酸素の害を多く受け易くなり加歳が進むことになります。

2.動脈硬化→脳出血・虚血性心疾患

活性酸素によって生じる過酸化脂質は、動脈硬化の元凶です。動脈硬化は動脈の壁に何らかの原因で小さな傷が付き、そこに過酸化脂質が集まってくる事によって起こります。こうしていったん硬化を生じた血管壁には、血小板や好中球といわれる白血球、更にはバイキンを食べるのが専門のマクロファージなどが集まってきます。

これらがまた活性酸素を放出するので、さらに過酸化が進むことになります。他にコレステロールが酸化されて変性するとマクロファージがそれを食べて「泡沫細胞」に変わり、動脈硬化になることが最近になって解って来ました。

動脈硬化は風邪以上に万病の元です!「人は血管と共に歳を取る」と言われており、血管が若くて生き生きしていれば、体の隅々にまで必要な酸素と養分がスムースに運ばれ、疲労もたやすく回復します。また、肩凝りやスタミナ切れ、といった血流の渋滞に原因すると考えられる様々な症状に悩まされることもありません。

しかし、ひとたび動脈硬化が始まると、体は急速に老化現象を起こして来ます。更に進むと日本人の三大死因といわれる「脳出血・虚血性心疾患・癌」に結びついて行くのです。

虚血性心疾患は、心臓を養っている環状動脈の血流が途絶えることが原因です。治療には、血液の流れを元通りにしなければなりませんが、治療の結果、血流が再開するとそれによって更に大量の活性酸素が放出されるのも問題です。その結果、いっそう組織の障害が進むこともあるのです。抗酸化剤によって、その反応が防止できます。

3.糖尿病

過酸化脂質が増えると血液中にTBAと呼ばれる物質が増加します。TBAというのは「チオバルビツール酸」のことで、動脈壁に含まれるTBAの量と動脈硬化の進み具合とは、密接な関係があることが分かっています。

糖尿病の患者では、やはりこのTBA値の上昇が認められます。つまり、活性酸素によって作られた過酸化脂質が、糖尿病の発病に何らかの影響を与えていると考えられ解明が進められています。(尤も、糖尿病は100%の遺伝性ですから発症するか否かが重要です)

4.皮膚の老化・シミ

老人の肌には多少ともシミが見受けられます。このシミはリポフスチンという物質が皮膚に沈着することによって起こります。そして、この忌まわしいリポフスチンは活性酸素によって生じた過酸化脂質が、数段階の化学反応を経て作られた物です。

シミにはメラニン色素が沈着しています。このメラニン色素の生成にも活性酸素が絡んでいることが、最近わかって来ました。つまり活性酸素によってドーパ反応などを経てメラニン色素の形成が促進されます。

5.発癌

発癌に活性酸素が大きく関わっていることが最近の研究で明らかになって来ました。癌は、正常な細胞が何らかの理由で異常化して、無限に増殖するようになった物です。オランウータンは人間と90%以上の類似DNAを持っています。しかし、オランウータンの発癌率は2%ほどです。何故に人間は30%以上もの発癌率なのでしょう?最近、進化の過程でそうなった研究成果が出されています。その結果、酸素の害をより多く受けることとなり、それが寿命に影響している、と考えられます。

細胞が、どうしてこんな異常性を獲得するかというと、細胞が分裂する時に正しい情報を伝えるべき遺伝子(DNA)に何らかの異常な変化が生じて、細胞が癌化すると考えられています。活性酸素は、この大切な遺伝子情報を握るDNAを障害して、細胞が癌化するきっかけを作るのです。

ということは、活性酸素の働きを抑えてやれば〔これを抗酸化作用といいます〕発癌が抑えられるはずです。実験の結果、確かにそうであることが判明しています。活性酸素は、この様に強い細胞障害作用を持っているために、これを利用して癌細胞をやっつける薬(アドリアマイシンやプレオマイシンといった抗癌剤)も考えられています。

6.消化器

消化器はストレスの影響を直接受ける敏感な臓器であることは良く知られています。胃、十二指腸、小腸、大腸、肝臓、膵臓などの病気には、活性酸素が深く関わっている事が解って来ました。

特に、ストレスなどによる胃潰瘍の発生にも活性酸素が関与している可能性があります。腸は特に虚血状態に弱く、虚血性腸炎や壊死性腸炎、などは活性酸素が発病に大きく影響しています。十二指腸潰瘍や胃潰瘍などはストレスそのものなのです。

そこで活性酸素の働きを抑えることが出来れば、病気の治りを早める事が出来るはずです。事実、胃潰瘍を起こしているネズミにSODとカタラーゼという活性酸素を抑える物質を与えてやると、そうでないネズミと比べて、治りが早いという実験結果が出ています。

7.炎症

炎症とは、ケガやヤケドを負った時に、それを治そうとして生体が起こす種々の反応で、腫れたり、熱を持ったり、痛んだり、することは日常に経験することです。こういった炎症箇所には活性酸素が発生して、炎症の発生に関与しています。

ケガやヤケドは治れば炎症が治まりますが、様々な原因によって炎症状態が固定し、ずっと続く病気も沢山あります。リューマチや関節炎がそうです。こういった時に活性酸素を抑えてやれば、炎症を軽減することが判明しています。

以上に触れた以外にも、活性酸素とその影響で出てくる過酸化脂質は様々な病気や困った症状の原因になっていると考えられています。それを次のページで一覧にして整理してみます。