第5節 活性酸素と病気との因果関係〔どんな病気と関係するか〕 

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動脈硬化、癌、虚血性疾患(心筋梗塞、脳梗塞)、胃潰瘍、臓器移植時、開心術時、各種炎症などの病気に、活性酸素が関与していることを述べました。最近になって、成人病の一つである糖尿病とも密接に関係していることが解って来ました。

すなわち、糖尿病の患者さんでは血中に糖値が増加します。この糖によって前述の悪玉コレステロール(LDL)や体に重要ないろいろな蛋白質が変性します。この変性は、糖尿病において生じる多くの合併症の原因になります。この過程で生じる活性酸素は血管を傷付けることがあり腎症、網膜症、動脈硬化などの糖尿病の合併する病気を引き起こしています。

その他にも、活性酸素は多くの病気の原因や増悪因子になっています。未熟児に大量の酸素を与える事で生じる未熟児網膜症は、未熟児が酸素の毒性を防御する機構を充分に備えていないので生じる病気です。

除草剤であるパラコートは、よく農家やゴルフ場などで使用されています。この雑草を枯らす方法として活性酸素を利用しているのです。散布中に鼻や口から、このパラコートが入ったり、自殺の目的でこれを飲むと、死に至る重篤な症状が現れます。

タバコの吸い過ぎによって生じる肺気腫、眼のレンズが白く濁ってくる白内障など、特に年令と共に忍び寄ってくる老化、なども活性酸素が重要な要因の一つです。では、この老化の原因が活性酸素と密接に関係していることを説明しましょう。

人間をはじめ生物にとって老化は避けがたい現象で、あまり好ましいものではありません。人間が歳をとると皮膚にシミやシワが生じ、関節は硬くなり、骨はもろく折れ易くなります。また、いろんな成人病(生活習慣病)の延長ともいうべき病気が数多く発生してボケてきたりもします。この様に、全ての人にとって厄介な老化現象はどうして生じるのでしょうか?

この原因についての明らかな解答は未だありません。しかし、その機構に関係していそうなものが幾つか見つかって来ました。その一つが「活性酸素」です。

私達は酸素が無ければ生きて行けません。ほとんどの生物は、生きるエネルギーを得るために酸素を呼吸して代謝活動を行っています。この結果生じる活性酸素などによる毒性が老化や寿命に関係しているらしい事が解って来ました。

また、寿命と代謝率当たりのSOD(活性酸素の一つのスーパーオキシドを消去する酵素)活性とは、強い正の相関関係があります。この様に活性酸素を消去する力が強い動物ほど長寿であるといえます。

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