第28章 痛風や高尿酸血症と糖尿病 

インデックス 第1節 痛風人口の増加と糖尿病との共通点  | 第2節 高尿酸血症も合併症が怖い病気  | 第3節 高尿酸血症と糖尿病は併発しやすい  | 第4節 尿酸値が高ければ糖尿病予備群でも要注意  | 第5節 食事と運動で尿酸と血糖をコントロール  | 第6節 他の生活習慣病もチェックし動脈硬化を予防  | 第7節 痛風とは、高尿酸血症とは
  • 第1節 痛風人口の増加と糖尿病との共通点

    2節図3

    戦前の日本では痛風は非常に稀な病気でしたが、戦後、社会が豊になり食糧事情の好転とともに、急に患者数が増えだしました。このために痛風のことを「ぜいたく病」とみる向きもありますが、実際には、遺伝的素因が基礎にあり、それに食習慣やストレスなどいくつかの要素が重なりあって発病する病気です。

    このあたりの事情は糖尿病とよく似ていて、現代社会では多くの人が痛風や糖尿病になります。現在、国内の痛風患者数は約30~50万、痛風ではないものの尿酸値が高い「無症候性高尿酸血症(痛風予備群)」の人は、約500万と推計されています。

  • 第2節 高尿酸血症も合併症が怖い病気

    糖尿病は血液中のブドウ糖濃度「血糖値」が高い状態が続く病気ですが、痛風・高尿酸血症は血液中の尿酸という物質の濃度「尿酸値」が高い状態が続くのが特徴です。尿酸値が高い状態を「高尿酸血症」といいます。自覚症状は全くありませんが、治療せずにいると、痛風発作が起きたり、さまざまな合併症が発症し進行します。

    高尿酸血症は糖尿病と同じで、放置していた場合の合併症が怖い病気だ、ということです。主な合併症に、腎臓障害、尿路結石、動脈硬化などがあります。糖尿病との関係では、特に動脈硬化が問題となります。動脈硬化は、心臓病や脳血管障害などを起こして生命に危険に及ぼしたり、身体に障害を残す原因となる恐ろしい病気です。糖尿病も動脈硬化の大きな危険因子ですので、尿酸値と血糖値が高い人は、十分な注意が必要です。

    ◆糖尿病と高尿酸血症の比較
    糖尿病(2型糖尿病)高尿酸血症
    特徴血液中のブドウ糖濃度の血糖値が高い状態が続く血液中の尿酸濃度の尿酸値が高い状態が続く
    発病の原因遺伝的な要因と環境要因(生活習慣)
    血糖や尿酸が増える理由インスリン作用不足による糖代謝異常プリン代謝異常によるプリン体の過剰産生と腎臓での尿酸排泄低下
    治療目的血糖値を管理し合併症を防ぐ尿酸値を管理し合併症を防ぐ
    治療手段生活習慣の改善と薬物療法
    自覚症状高度の高血糖で、のどの渇きなど。著しい高血糖時には昏睡長時間、高尿酸血症が続くと痛風発作が起きる
    合併症三大合併症や動脈硬化、感染症など腎臓障害、尿路結石、動脈硬化など
  • 第3節 高尿酸血症と糖尿病は併発しやすい

    2節図3

    高尿酸血症は、遺伝的に尿酸値が高くなりやすい体質があり、それにさまざまな生活習慣が加わることで発病します。尿酸値が上がりやすい生活習慣とは、過食やアルコールの飲み過ぎ、運動不足、それによる肥満、精神的ストレスなどです。

    お気づきのように、これらは糖尿病を招く習慣と、ほぼ同じような内容です。事実、糖尿病の人は尿酸値が高い人が多く、また、高尿酸血症の人は糖尿病や耐糖能障害※になりやすいのです。逆にいえば、高尿酸血症を治療することは糖尿病の予防・治療につながりますし、糖尿病の食事・運動療法は、尿酸値にも良い影響を与えます。

    ※耐糖能障害とは:
    糖尿病と診断されるほどの高血糖ではないものの、血糖変動が正常でない状態。糖尿病予備群。ブドウ糖負荷試験の2時間値が140~199mg/dLの場合をいいます。
  • 第4節 尿酸値が高ければ糖尿病予備群でも要注意

    2節図3

    高尿酸血症と糖尿病は併発しやすいのですが、実際には、糖尿病のコントロールが悪くて血糖値が高いと、ふつう尿酸値は少し下がります。このため、激しい痛風発作があり、なおかつ血糖値も著しく高いという患者さんはそれほど多くはありません。最近、痛風になりやすい遺伝子と糖尿病になりやすい遺伝子が沢山わかってきましたが、それらは互いに異なります。

    このような理由で痛風発作は、糖尿病の人よりもむしろ、糖尿病になる前段階の耐糖能障害の時期に併発することが多いのです。耐糖能障害のときには、糖尿病特有の合併症(三大合併症)は少ないものの動脈硬化は進行しやすく、高尿酸血症と重なるとさらにその進行が早まります。

    尿酸値が高いと指摘されたら、たとえ糖尿病ではなく糖尿病予備群だとしても、尿酸値や血糖値の積極的な管理が大切です。

  • 第5節 食事と運動で尿酸と血糖をコントロール

    糖尿病と高尿酸血症の患者さんに共通することで一番目立つのは、肥満している人が多いことです。肥満糖尿病の人が減量すると血糖値が下がることはよくありますが、それと同じように、太り気味で尿酸値が高い人が減量すると、尿酸値が低下してきます。もし、尿酸値や血糖値が高く、肥満しているのであれば、治療ではまず減量することが基本になります。

    1.食事は第一に、カロリーオフ

    肥満解消の基礎は食事です。尿酸値を低くする食事の基本は、その人の体格や消費活動量にあったカロリーで、バランスよく栄養を摂ることです。これは糖尿病の食事療法と全く同じことです。医師や栄養士に相談しながら、からだに良い食生活を送って下さい。

    なお、減量を急ぐあまり、絶食するなど極端に摂取カロリーを減らしすぎると、体内でエネルギー源として脂肪が利用される結果、ケトン体が発生します(ケトーシス)。血液中のケトン体濃度が高くなると尿酸は排泄されにくくなり、尿酸値が逆に上昇してしまいます。また、急な減量で細胞が壊れ、核酸からプリン体が放出されることからも尿酸値が上がります。

    2.プリン体を摂り過ぎない

    ◆食品中のプリン体含有量
    分類食品名と1人前の分量その分量に含まれる
    プリン体の量(mg)
    たまにしか食
    べないがプリ
    ン体が極端に
    多い食品
    あん肝(酒蒸し)50g
    イサキの白子50g
    牛焼肉レバー120g
    199.6
    152.8
    122.2
    プリン体が
    多い食品
    牛肉ヒレステーキ200g
    豚ロースステーキ200g
    カツオ切身80g
    クルマエビ80g
    アジの干物60g
    サンマ切身一切れ80g
    マグロ切身一切れ80g
    タラバガニ100g
    ヒラメ切身一切れ80g
    マダコ80g
    84.6
    79.8
    72.2
    68.6
    65.3
    54.4
    53.8
    47.4
    46.0
    45.8

    以前は尿酸値が高いと、プリン体を多く含む食品を食べないことが一番大切だと思われていたのですが、最近は摂取カロリー制限が第一で、プリン体摂取制限はそれほど厳しくいわれなくなりました。

    プリン体は、体内で作られる量のほうが、食べ物から直接摂り入れる量よりもずっと多いためです。とはいっても、プリン体を多く含む食品を好んで食べるのはよくありません。動物の内臓や魚の卵などは、控えめにしましょう。肉料理の場合プリン体は肉汁に溜まりますので、肉汁は飲まずに残しましょう。

    3.水分をたっぷり摂って

    水分を多く摂ると尿の量が増え、尿とともに尿酸が排泄されやすくなります。腎機能がかなり低下していたり心臓病などがない限り1日尿量2リットル以上を目安に飲んで下さい。ただし、飲んでよいのは水かお茶です。

    4.アルコールは極力控える

    2節図3

    尿を増やすのが目的ならアルコールを飲んでもよいのではないかと思われるかもしれませんが、それは大きな間違い。アルコールには尿酸の産生を増やす作用があり、また、尿酸の排泄を悪くする血液中の乳酸値も上昇させてしまいます。

    飲酒は高尿酸血症の主要原因です。特に、ビールはプリン体を多く含んでいるので、一番よくありません。もちろん糖尿病があれば、飲酒自体、主治医の許可が必要です。

    5.野菜類をちゃんと食べる

    野菜を多く食べると尿がアルカリ性になり、尿中の尿酸が溶けやすくなって、尿路結石の形成を防ぎます。野菜類は糖尿病の治療にもよいので、積極的に献立に加えていきましょう。

    6.きつ過ぎない運動を継続する

    運動は肥満解消になり、尿酸コントロールには重要です。ただし息が切れるほどきつい無酸素運動では、エネルギーを出す ATP(アデノシン三リン酸)が再生されず尿酸になってしまうので、尿酸値が上がります。運動療法もやはり糖尿病の場合と同じで毎日少しずつ、適度なレベルで続けることが大切です。

    7.それでも尿酸値が高ければ薬が必要です

    食事や運動に気をつけても尿酸値が十分に下がらず痛風が起きる場合は薬で治療します。また、痛風はなくても尿酸値が9mg/dL以上なら、痛風と合併症の予防のために薬物治療を始めます。糖尿病・耐糖能障害、腎障害、尿路結石、高血圧、脂質異常症(高脂血症)、虚血性心疾患などがある場合には、8mg/dL以上から薬物治療がすすめられます。

    尿酸値を下げる薬は、尿酸の産生を抑えるタイプと排泄を促進するタイプの2種類があり患者さんに合わせて処方されます。尿酸コントロールの目標は、尿酸が血液に溶解する限界(7mg/dL)を下回った状態に保ち続けることで、その為に6mg/dL以下※が目安となります。

    ※ 4.6~6.6mg/dLにコントロールすると、最も痛風になりにくいという成績があります。

  • 第6節 他の生活習慣病もチェックし動脈硬化を予防

    2節図3

    痛風の患者さんは、さまざまな生活習慣病(高血圧、脂質異常症、耐糖能障害など)の併発が多く、痛風だけを患っている人はわずか4%にすぎません。これらの病気は、動脈硬化という合併症を共有しています。

    近年、こういった生活習慣病の発病には、インスリンが作用しにくくなる「インスリン抵抗性」が関係していることがわかってきて、高尿酸血症の発病にもインスリン抵抗性が関わっている可能性が示されています。そしてそのインスリン抵抗性を生む大きな要因が、体質面の遺伝的要素と、文字通り「生活習慣」といえます。

    遺伝的要素は現在のところ治療手段はありません。しかし、生活習慣は患者さん次第で改善できることです。尿酸値が高いといわれた人は、痛風や腎臓障害、尿路結石に気をつけるとともに、動脈硬化の予防のため生活面を工夫して、血圧や血清脂質、血糖値も適切にコントロールしていきましょう。

    2節図3
  • 第7節 痛風とは、高尿酸血症とは

    ◆尿酸とは
    2節図3
    ◆尿酸の結晶
    尿酸は専門的には「プリン代謝の最終産物」と説明されます。プリン体は、細胞ひとつひとつの中の核酸、DNAやRNAの構成成分として存在しています。体内では常に細胞の新陳代謝が繰り返されていますが、そのサイクルの中で、細胞が死滅する時には核酸も分解されます。
    そのあと核酸を構成していたプリン体は、最終的にそれ以上変化しない尿酸という物質になります。プリン体はまた、ATP(アデノシン三リン酸)という、高いエネルギーをもつ物質の中にも存在しています。ATPは身体活動のあらゆる場面で消費されますが、そのあと通常は再び元の状態に戻ります。しかし、無酸素運動をしたときなどは元に戻らずに尿酸になります。
    ◆尿酸の結晶尿酸値を上昇させる要因
    一時的な上昇持続的な上昇
    食事中のプリン体、
    果糖
    アルコール飲用
    激しい運動
    脱水
    ストレス
    薬剤(降圧利尿薬など)
    遺伝的要因
    肥満
    飲酒習慣
    腎機能低下
    ホルモンの異常
    ◆高尿酸血症とは
    尿酸値は平均で、男性 5.5mg/dL、女性 4.5mg/dLぐらいです。尿酸が血液に溶ける限度は7.0mg/dLまでで、それ以上の濃度では、溶けきらない尿酸が結晶として、からだのいたるところに蓄積されます。このように尿酸の濃度が高い状態を、高尿酸血症と呼びます。結晶ができやすいのは腎臓や耳たぶ、手足の関節です。
    ◆尿酸値が高くなる理由
     尿酸値が上がる直接的な理由は、次のふたつです。
    • (1)尿酸が多く作られすぎている、
    • (2)尿酸を排泄する力が低下している、
    上記の(1)の原因としては、前に解説したプリン代謝の障害や、食物として体内に摂り入れるプリン体の量が多いといったことが該当し、(2)の原因としては尿酸を排泄する腎臓の機能低下が該当します。遺伝的な体質と生活習慣的な要因が大きく関係していることがわかっています。
    高尿酸血症は圧倒的に男性が多いという(痛風では95~99%)きわだった特徴があります。年齢別でみると、かつては50代が多かったのですが、最近では発病年齢のピークは30代と、若年化が進んでいます。
    なお、頻度としては少ないのですが、生活習慣とは全く関係なく、遺伝的なことだけで尿酸値が高くなる人もいます。また、高血圧治療薬の一種の降圧利尿薬などの服用によって尿酸値が高くなることもあります。
    ◆痛風とは
    高尿酸血症を放置すると、尿酸の結晶が少しずつ大きくなります。尿酸は本来からだの中ではすべて溶けていて、結晶としては存在しないものですから、それに対して白血球が貪食(細菌や異物を取り囲んで食い殺そうとする活動)を試みます。貪食された尿酸結晶は、白血球を破壊する作用があります。
    そのため、その箇所に炎症反応が起こり、赤く腫れて激しい痛みが自覚されます。これが痛風発作です。足の親指の関節に起きることが多く(最初の発作では7割)、2か所以上の関節が痛むことはあまりありません。
    発作が起こりやすいのは、尿酸値が急激に変動したときや生活環境に変化が生じた時です。発作時には、鎮痛薬やコルヒチン(白血球の動きを抑える薬)などで症状を和らげます。また、患部を冷やすと多少痛みが抑えられます。注意したいことは、発作が治まっても、それは尿酸結晶と白血球のぶつかり合いによる炎症が鎮まっただけで、尿酸値が下がったことを意味するのではないということです。
    痛風発作が起きる起きないにかかわらず、合併症予防のため、高尿酸血症の治療継続が必要です。
    ◆高尿酸血症の主な合併症
    ①腎臓障害
    2節図3
    尿酸の結晶が腎臓内に溜まり、腎臓の機能が低下します。病気の進行とともに、尿酸を排泄する力が低下するため、ますます尿酸値が高くなるという悪循環が生じてしまいます。腎機能が著しく低下すると、生命維持に人工透析が必要になります。
    ②尿路結石
    尿酸はアルカリ性で溶けやすく、酸性では溶けにくい物質です。尿酸値が高い人は尿の酸性度が強い(ph が低い)ことが多く、このため血液中のみならず、尿の中でも尿酸が結晶化しやすいのです。腎臓内や尿管・膀胱・尿道などで、尿中の尿酸結晶を核にほかの物質が集まって尿路結石が形成されます。痛風の人に尿路結石ができる率は、痛風でない人の数百倍にのぼります。
    ③動脈硬化
    高尿酸血症の人は、高血圧や脂質異常症、糖尿病・耐糖能障害を高頻度で併発しています。これらが絡み合うと動脈硬化が加速度的に進行し、心臓病や脳血管障害の危険が高くなります。最近の研究では、高尿酸血症単独でも、心臓病や脳血管障害により死亡する確率が高くなることがわかってきました。
    ◆治療は3ステップで
    痛風・高尿酸血症の治療は、三つに分けて考えます。
    まず第一に、痛風発作の痛みをとること。第二に高尿酸血症を治療し痛風発作を防ぎ、同時に尿路結石や腎臓障害などの合併症を防ぐこと。第三は高尿酸血症の人が併発しやすい高血圧や脂質異常症、糖尿病・耐糖能障害などの生活習慣病を適切に管理・治療し、動脈硬化による心臓病や脳血管障害を防ぐことです。