第10章 糖尿病生活Q&A 

インデックス 第1節 糖尿病といわれたら
  • 第1節 糖尿病といわれたら

    2節図3

    よい血糖コントロールを続けていれば、糖尿病があっても、健康な人と変わらない生活を送ることができると言われています。では健康な人と変わらぬ生活とは、どんな生活なのでしょうか。自由で活動的で、快適さのある生活というふうに言えるのではないでしょうか。

    癌よりも怖い糖尿病ですが・・・
    病気を発症させずに付き合って行く。

    糖尿病の初期は、合併症は気配すらみせないので、コントロールはついおろそかになりがちです。しかし、コントロールが不十分な状態が続くと、さまざまな合併症が発症し、その進行と共に、生活から快適さや自由さは確実に失われていきます。そして、失明や透析、下肢切断といった最悪の事態に至ります。

    そうしたことにならないよう、糖尿病の治療では、よいコントロールを保ち続けることが、何よりも重要です。糖尿病と診断されて、落ち込まない人はいません。しかし、1日も早く立ち直って、積極的に治療にはげみ、糖尿病と仲良く暮らしていきたいものです。ここでは、治療に役立つ日常生活上の知識を、Q&Aでご紹介します。

    Q1:太るとなぜ糖尿病によくないのでしょうか?
    A:
    2節図3 血糖が上がる原因として、インスリンの分泌力が低下することと、筋肉などの組織でインスリンの感受性が低下することの、ふたつがあります。太ると脂肪の量が増え、インスリンの感受性が低下するので、血糖がますます上がって、糖尿病が悪化します。
    太る(肥満):
    • 動作が緩慢になる
    • 疲れ易くなる
    • 着る洋服など大変になる
    • 色んな病気の引き金になる
    最近、インスリンの分泌や効き目を改善する薬も出てきていますが、そうした薬に頼るより、インスリンの感受性を増すために、まず食事量を減らし、標準体重にすることが大切です。太ると、糖尿病を悪化させるだけでなく、動脈硬化や高血圧などの生活習慣病も、合併し易くなります。
    Q2:ストレスが糖尿病に与える影響を教えてください。
    A:
    ストレスは、過食、運動不足とともに、糖尿病の3大原因のひとつです。そればかりか病状を悪化させる大きな要因でもあります。怒ったり興奮したり、時間に追われてイライラするといったストレスを感じると、体内ではカテコールアミンが大量に分泌されるので、インスリンの分泌や感受性が低下し、血糖が上がります。
    そのため、毎日の生活からストレスを減らす工夫が、治療上も非常に大切です。皆さんのライフスタイルにあった方法で、解消に努めてください。最近普及してきた、自律神経を強くする訓練なども有効ですが、何より重要なのは、働き過ぎず、リラックスする時間をもつことでしょう。
    Q3:補食が必要な場合は、どんな時ですか?
    A:
    補食は、ふだんより活動量が増えた時などに、低血糖を防ぐためにとる一時的な食事で山登りや水泳など強い運動の時、長時間運動する時、体育の授業の時などに、摂るものです。薬物療法の人はとくに必要です。
    補食をとらないで、薬物を減らして調整する方法もありますが、計算が簡単ではなく、インスリンを減らし過ぎる危険もあり、困難です。インスリンは、ブドウ糖の代謝だけでなく、成長期には身体の成長などの代謝にも必要ですので、このような時期に、運動のためにインスリンを極端に減らすことは、避けるべきです。特に、低血糖が起きやすい厳格な薬物療法の場合には、補食の上手な活用が欠かせません。
    Q4:天気が悪い時の運動には、どんな方法がありますか?
    2節図3
    A:
    プールなどで泳ぐ方法が一番良いのですが、そのような施設は中々見当たりません。雨の日に傘をさして歩くのも方法ですが、交通事故などの心配もあります。
    今日は雨だから明日からにしよう。
     今日は食べて明日から頑張ろう。
      今食べたのは明日の分と考える。
    梅雨どきや、雪が多い地域では、室内で簡単にできる自転車エルゴメータが良いでしょう。最近では、安くて静かでいいのが出回っています。雪の多い地域の場合は、マウンテン・スキーで、雪上を歩くのも良い方法かもしれません。
    Q5:運動療法ができない場合は、どんな時ですか?
    2節図3
    A:
    運動療法に制限があるのは、合併症があって、しかも進行している場合です。軽い合併症があっても、歩行など中程度の強さの運動であれば、まず問題はありませんが走る、泳ぐといった強い運動は、かえって病状を悪化させます。
    腎症、増殖網膜症、狭心症、眼底出血、下肢の動脈硬化による動脈の閉塞などがある場合は、禁止か、制限があります。合併症の程度や年齢などの違いもあるので、状態に応じた運動を主治医に処方してもらい、その範囲内で運動します。
    Q6:経口薬を飲み忘れた時の対応は?
    A:
    経口薬を服用し始めの頃には、よくあることです。糖尿病は、規則正しい生活をし、薬も決められた時間に飲むのがよいのはいうまでもありませんが、1回くらい飲み忘れても、それで合併症が一気に進むことはまずありません。
    SU薬などの朝夕に1回または2回飲む薬の場合、1~2時間程度の遅れならふだんの量をそのまま、数時間以上の遅れなら半分に減らして飲みます。忘れたからと2回分まとめて飲むと、低血糖の原因になります。食後過血糖改善薬のように食前に飲む薬の場合は、食後に飲んでもあまり意味がないので、次から忘れずに飲むようにして下さい。
    Q7:インスリンを打ち忘れた時の対応は?
    2節図3
    A:
    インスリンを忘れた場合に大切なのは、量を打ち過ぎないことです。経口薬にくらべてインスリンは効き目が早く、時間単位で効いてくるからです。打ち忘れに気付いたら、まず落ち着いて血糖値を測り、その状態に合った量を注射するのが、原則です。量の加減は個人差もあるので、主治医と相談してある程度の目安を事前に決めておきましょう。
    Q8:薬の飲み合わせが心配です。
    A:
    薬物療法の人が、ほかの病気の治療で薬を飲まなければならない場合、通常の、風邪薬や下痢止めなどの市販薬と飲み合わせる場合は、まず心配ありません。しかし、鎮痛薬の一部で、血糖降下薬の作用を増強するものもありますので、気を付けて下さい。
    合併症の治療などで複数の医師にかかる場合には、それぞれの医師に服用中の薬を、知らせる必要があります。数ある薬の中には、低血糖の症状をわかりにくくするなど、副作用をもたらす場合があるからです。また、ステロイド薬などは血糖を上昇させるので必ず血糖測定しながら、経口薬やインスリン量を決める必要があります。
    Q9:低血糖の時に、砂糖では効かない薬があるそうですが…。
    A:
    薬物療法の人が、αグルコシダーゼ阻害薬を服用した時に起こる低血糖の場合は、砂糖ではなく、ブドウ糖を使わないと、回復が遅れることがあります。この薬は、食後の高血糖を抑える作用をもった薬で、ふつうの砂糖の吸収を遅らせるからです。
    しかし、もしブドウ糖を持っていない時に低血糖が起きてしまった場合は、砂糖やコーラ、ジュースなど、手近なものでトライして下さい。糖分の吸収は遅れても、最終的には、全部吸収されるようになっています。ですから、低血糖の回復は遅れても、それらが効かないことは、まずありません。また、コーラ、ファンタグレープなどには、ブドウ糖が入っているので、回復が早いようです。
    Q10:雑誌にあった「糖尿病が治る」という薬を、試したいのですが。
    2節図3
    A:
    そうしたふれこみで、じつに多くの民間療法が出回っています。しかし、それらの療法は治療効果の裏付けに乏しく、たとえ効いたとしても、効果は微々たるものです。しかも高価で、だまされたも同然のものが少なくありません。
    本当に効くなら、とうに治療に取り入れているはずです。これらを信じて治療を止めてしまい、症状を悪化させる例がしばしばあるのは、残念です。民間療法に惑わされず、糖尿病と仲良く生きる気持ちをもって、本来の治療に専念して下さい。
    Q11:入浴は、血糖にどんな影響を与えますか?
    A:
    入浴は、運動と同じくエネルギーを消費し、血糖を下げます。また、インスリンの注射の後に入浴すると、皮下の体温が上がって、インスリンの吸収が早まり、低血糖を起こす場合があります。注射した周辺をマッサージするような洗い方も、吸収を促進するので注意して下さい。
    経口薬の場合も、血糖が下がるので、注意が必要です。入浴中の低血糖は発見が遅れやすく、溺れることもあります。空腹時は避け、食後2時間くらいで入浴すれば、まず問題ありません。
    Q12:トイレの回数が多く、熟睡できません。
    A:
    頻尿になる一番の理由は、高血糖です。糖が水分を伴って、尿として排泄されるために頻尿や多尿になります。これは、血糖コントロールをよくすれば、自然と改善します。ただ、コントロールは悪くないのに頻尿になる場合は、膀胱炎や前立腺肥大、弛緩性膀胱(糖尿病性の自律神経失調症で、膀胱がパンパンに張り、尿が少量ずつしか出ない)が疑われます。これらは高齢者に良くみられるものです。
    Q13:糖尿病になると、ほかの病気にかかりやすいというのは本当ですか?
    A:
    確かに糖尿病の患者さんには感染症が多く、最近は結核が増えています。コレステロールが原因の胆石に伴った胆のう炎も少なくありません。
    感染症が多いのは、白血球の機能の低下や、高血糖で脱水になりやすいことが、原因です。脱水になると血流が悪化し、末梢まで白血球や酸素が行き渡らなくなり、細菌の繁殖に都合のよい状態になります。歯の治療や手術の時も、感染症にかかりやすいので、医師に糖尿病を必ず伝えてください。
    Q14:タバコは、なぜいけないのですか?
    2節図3
    A:
    タバコは血管を収縮する作用があります。糖尿病の患者さんは、動脈硬化が進んでいることが多く、タバコの作用が、心筋梗塞や足の壊疽などの病状を促進します。また、肺の感染症も起こしやすいので、まずはタバコをやめるのが先決です。
    X = 1日に吸うタバコの本数 * 吸い続けた年数
    Xが 600未満なら未だ間に合う。
    Xが 600以上ならやがて病気の百貨店に!

    Q15:痛みの少ない採血方法があると聞きましたが…。
    2節図3
    自分で注射するのですか!
    A:
    細い採血針(30Gや33Gの針)と、穿刺の深さ調節のできる採血器具を組み合わせるとより痛みの少ない方法で、血糖測定に必要な血液量を得ることができます。また、指先ほどは痛点が密集していないといわれる、腕(上腕の外側)や手のひらなどから採血する方法もあります。
    この場合には、血液を吸引する器具(名称:ファインレット/(株)三和化学研究所)を利用すると、十分な血液量を容易に得られます。
    Q16:インスリンの使用ずみ針などの処分は、どうしたらよいですか?
    A:
    インスリン注射で使った針の処分は、専用の容器などに入れ、病院で回収してもらうのが一番良い方法です。自宅でゴミとして処分すると、盗まれて麻薬に使われたり、清掃員のケガの原因になるので、注意して下さい。
    Q17:医療費が安くなる場合があると聞きましたが…。
    A:
    18歳未満の場合は「小児慢性特定疾病」の対象になり、医療費の自己負担が軽減されます。市区町村の保健所に申請してください。18歳になった時点ですでにこの制度の対象になっている場合は、20歳になるまで延長されます。なお、自己負担額の上限は、所得によって異なります。
    成人の場合は特別な補助はありませんが、糖尿病に必要な治療のほとんどは保険が適用されます。また、もし失明や透析開始、下肢切断などになった場合には、障害の程度などに応じて医療費の助成、介護保険の申請、障害年金の受け取りが可能なことがあります。自治体、日本年金機構にお問合せください。
    Q18:海外旅行で、一番気をつけたいことは?
    A:
    やはり、ふだん飲んでいる薬やインスリンは、忘れずに身につけておくということでしょう。簡単なことですが、飛行機に乗る時、薬をうっかりスーツケースに入れたまま、預けてしまう失敗はけっこうあるのです。
    また、食事の回数や量が増えてカロリーオーバーになったり、時差の影響などでストレスも増えます。とくに、インスリンの場合は、時差により、注射のタイミングを調整する必要がありますので、事前にその方法の指導を主治医から受けてください。血糖自己測定も必要です。
    経口薬の場合の時差への対応は、1日何錠といった程度に、おおざっぱに考えればよくそれほど神経質になる必要はありません。食事の前に飲むタイプの薬なら、いつもどおり1日3回、毎食前に飲んで下さい。
    また、糖尿病であることと治療の内容を主治医に英語で簡単に書いてもらい、それを持参すると、何か問題が起きた時に安心です。