第2章 食事療法の基礎 

インデックス 第1節 なぜ食事療法が必要か?  | 第2節 食事療法こそ最高の特効薬です  | 第3節 どこが『療法』なのでしょうか?  | 第4節 食品交換表について
  • 第1節 なぜ食事療法が必要か?

    そのわけは、糖尿病が食事と密接な関係にあるインスリンの不足や欠乏から起こる病気だからです。インスリンが不足すると、食べ物を通して摂取したブドウ糖などの栄養素が利用されなくなり、体の各細胞が栄養不良になります。

    一方、利用されないブドウ糖はどんどん増え続け、血液中にあふれてきます。その状態が高血糖で、これを放置すると合併症が起きてきます。これを防ぐには、摂取する食べ物の量を調整し、各種の栄養素も不足しないよう、食事の摂り方を変えねばなりません。その人に合ったエネルギー量にする、栄養バランスのとれた食事に切り換える、それが食事療法です。

  • 第2節 食事療法こそ最高の特効薬です

    食事療法は、薬を飲むわけでもなくお金もかからないため軽視されがちですが、一番効果があり、またほかの治療法の効果も助ける、もっとも基本になる重要な治療法なのです。

    糖尿病を根治する治療法がみつかっていない現在、糖尿病治療の最大の目的は、合併症の予防におかれています。合併症は、高血糖を放置していれば、誰でも例外なく起きてくるものです。失明したり人工透析が必要になるなど、合併症が起これば、社会生活が不自由になるだけでなく、寿命も短くなります。

    しかし、食事療法を確実に実行し、血糖コントロールをよい状態に保ち続ければ、合併症と無縁の生活も可能です。特に、2型糖尿病の場合、多くの人が食事療法だけで、病状を十分に改善することができます。また、インスリン注射や飲み薬が必要な場合も、この食事療法がしっかりできていないと、その治療効果は上がりません。

    この治療法は、頭で理解しても実行しなければ意味がなく、また、続けてこそ効果があります。それには、コントロールのよい状態がいかに快適かを自分で実感すること。それが、治療を長続きさせる秘訣といえるでしょう。生半可な気持ちを捨て、自分の病気は自分で治す覚悟で、毎日食事療法に取り組むことが、糖尿病を克服する強い力となります。

  • 第3節 どこが『療法』なのでしょうか?

    食事療法といっても特別な食事があるわけではありません。1日の摂取エネルギー量が決められるだけ。あとは、炭水化物、蛋白質、脂質の三大栄養素の必要量を、バランスよく摂り、ビタミンやミネラルなども、欠かさずに摂ることが、治療です。つまり、それまでの食事の偏りを改め、健康的な食事に変えることが目的なのです。

    また、この食事療法は、糖尿病でない人が、生活習慣病を予防し長生きするための健康食として利用しても、効果的です。

  • 第4節 食品交換表について

    食事療法で難しさを感じるのは、食品を選ぶとき、食品のもつ栄養素やエネルギー量が、各食品よって全部違うことです。その面倒な部分をわかりやすく表にしたのが、日本糖尿病学会の『糖尿病食事療法のための食品交換表』(以下、交換表と略します)です。交換表は、普段よく食べられている一般的な食品について、栄養構成の点で似たもの同士を7種類に分類(6つの表と調味料)。

    同じ表同士の食品なら、交換(取り替え)可能な範囲を示したものです。これを使えば、使いたい食品のエネルギー量と重量が簡単にわかり、変化に富んだ献立にすることができます。

    ●食品の分類

    〔日本糖尿病学会編・著「糖尿病食事療法のための食品交換表 第7版」出典〕
    Ⅰ群Ⅱ群Ⅲ群Ⅳ群調味料主治医や管理栄養士の指導
    炭水化物蛋白質脂質ビタミンやミネラル
    表1表2表3表4表5表6
    穀物、芋、炭水化物の多い野菜および種実、豆(大豆を除く) 果物 魚介、大豆、大豆の製品、卵、チーズ、肉 牛乳と乳製品(チーズを除く) 油脂、脂質の多い種実、多脂性食品 野菜(炭水化物の多い一部の野菜を除く)、海藻、茸、こんにゃく 味噌、味醂、砂糖など アルコール、菓子、清涼飲料などのし好食品、インスタント食品、外食料理など

    治療法自体は少しも難しくないのですが、実践の段階で慣れるまでちょっと根気が必要です。そこで、食事療法のポイントを、思いきって6段階に整理し、1段階ごとにマスターすれば、簡単に食事療法の方法が身につくプログラムをつくりました。さっそく挑戦してみてください。

    <これは簡単!よくわかる食事療法のコツマスターのための6つのステップ>

    ①ステップ1:あなたに必要なエネルギー量を知る

    2節図3

    血糖値の上がり過ぎを抑え、正常な状態に変えていくためには、あなたが1日に必要なエネルギー量を正確に知って、それ以上の余分なエネルギー量を摂らない様にすることです。1日に必要なエネルギー量は、年齢、性別、身長、体重、活動量などを考慮して医師が総合的に決め、患者さんに指示します(指示エネルギー量といいます)。算出の方法もいろいろですが、ここでは最近よく使われている、肥満指数を使った計算方法を紹介します。

    身長170センチで事務職の人の場合

    1)まず標準体重を出す。
    身長 1.7 × 身長 1.7 × 22 = 標準体重 63.5kg
    2)必要なエネルギー量(指示エネルギー量)を出す。
    標準体重 × 作業強度 = 指示エネルギー量

    ●身長でみるあなたの適正エネルギー

    • 作業強度の目安は、成人では 25~30kcal
    • 肥満の人と高齢者の場合は25kcal。
    • 痩せている人と若い人の場合は 30kcal を目安とする。
    • すると 63.5×25=1587kcal。100 以下を四捨五入する。
    • 結果は、1600kcal が適正な指示エネルギー量となる。

    ②ステップ2:尺度を知る

    キロカロリーはエネルギーの尺度ですが、交換表では80kcalを1単位として、ひとつの基準にしています。例えば、指示エネルギー量が1600kcalの人の場合、1600÷80=20となり、1日20単位分の食品が食べられるというふうに使います。

    なぜ1単位が80kcalかというと、私たちが普段よく食べる食品の常用量が、80kcal前後のことが多いからで、この単位を使えばエネルギー量の計算がしやすく、覚えやすいという利点があるのです。

    食品1単位は、例えば、御飯は小さめの茶碗半杯、食パン(6枚切り)は半枚、卵は1個、魚は切り身1枚といった具合。ただ、エネルギー量と重量は食品によって全部違うため、交換表を使って、食品ごとに1単位は何グラムなのかを確かめる必要があります。

    ③ステップ3:あなたにあった栄養(単位)の配分を知る

    ●栄養素の働き

    炭水化物
    エネルギーとして使われる主要な栄養素です(正確には食物繊維を除く炭水化物=糖質がエネルギー源です)。消化吸収されてブドウ糖となり、血液中に供給されます。食後に血糖値が上がるのはこのためです。1gで約4kcalのエネルギーになります。
    蛋白質
    筋肉や血液となります。炭水化物や脂質の摂取量が少ないときには、エネルギーとしても使われます。炭水化物と同じく1gで約4kcalあります。腎臓の病気がある場合、治療のために蛋白質の摂取量を減らすことがあります。
    脂質
    エネルギーとして利用されるほか、ホルモンや細胞膜に使われる栄養素です。1gで約9kcalあるので、摂り過ぎると体重が増えやすくなります。また、動脈硬化の進行が速まります。
    ビタミン、ミネラル
    からだの諸機能を整えます。ミネラルのうち、カルシウムは骨や歯の材料となります。
    食物繊維
    炭水化物のうちエネルギーにならない栄養素が食物繊維です。食物繊維は食べても血糖値が上がらないばかりか、血糖値の上昇を抑えたり、おなかの調子を整えてくれます。エネルギー量の次に大事なのが、栄養のバランスです。

    各栄養素は右表のように、それぞれの役割があります。良好な血糖コントロールを保ちながら、健康を維持するためには、指示エネルギー量をこれらの栄養素に、過不足なくふり分けることが大切です。栄養バランスがよくないと、仮に血糖値はよくコントロールできていても、脂質異常症、慢性腎臓病、骨粗鬆症、動脈硬化などの病気が進みやすくなってしまいます。

    理想的な栄養バランスとは、1日の摂取エネルギー量の50~60%を炭水化物でとり、蛋白質は体重1kgあたり1.0~1.2g、そして残りのエネルギー量を脂質でとるのがよいとされています。下に具体的を挙げますが、例えば指示エネルギー量1600kcal(指示単位20単位)で炭水化物55%の場合、表1が9単位、表2が1単位、表3が5単位、表4が1.5単位、表5が1.5単位、表6が1.2単位、調味量が0.8単位で、計20単位となります。

    下の表は、栄養学的に計算した場合の、単位の配分表の一例です。通常は、あなたに合った単位の配分を記した「単位配分表」が医師や栄養士から渡されることが多いので、それに従って食品を組み合わせます。

    ●1日に必要な単位配分表と、単位配分例〔日本糖尿病学会編・著「糖尿病食事療法のための食品交換表 第7版」、日本糖尿病協会/文光堂 2013年発行より引用改変より引用〕

    2節図3
    〔日本糖尿病学会編・著「糖尿病食事療法のための食品交換表 第7版

    配分で大事なことは、栄養のバランスが偏らないようにすること、また食事の回数は3食以上にし、単位数をなるべく均等に配分することです。朝食を抜いて、その分、夕食をたっぷりとるような配分は、血糖のコントロールを乱し、好ましくありません。また、炭水化物の割合が55%、50%の場合、蛋白質や脂質が増え過ぎないように注意しましょう。

    ④ステップ4:交換のルールを知る

    食事療法を守りながら、毎日の献立に楽しみや変化をつけるには、交換の可能性と限界を知ることです。交換の原則は、同じ表の食品同士なら、自由に交換(取り替え)がきくということです。表1の御飯を、同じ表1に分類されているうどん、あるいはジャガイモと交換したり表3の肉のかわりに同じ表3の魚にしたりということは、まったく自由です。

    しかし、違う表との交換は原則としてできません。表1の御飯を、表3の肉と交換したり、表3の魚を表6の野菜と交換することは出来ないのです。

    砂糖、味噌、味醂などの調味量は、1日あわせて0.8単位とします。醤油など、エネルギー量が少ないため単位を計算せすに使用できるものもありますが、調味量は塩分を沢山含んでいるものが多いので、できるだけ控え目にしましょう。

    菓子などのし好食品はエネルギー量が多く、コントロールを乱しやすいので交換の対象にはなりません。例えば、御飯(表1)とフランスパン(表1)は交換できますが、御飯をあんパンなどの菓子パン(し好食品)に変えることの可否は、主治医や管理栄養士の指導を受けてください。

    2節図3
    ●交換できるもの、できないもの

    ⑤ステップ5:自分の食事をチェックする

    献立をつくる前段階として、まず今食べているもののチェックをしてみましょう。食べたものの量を全部書き出し、それを表に配分してみて、1日の単位内で収まっているか、栄養のバランスはどうかを細かくチェックしてみます。自分で食べたものを記録することで、何を何単位食べたか、何が問題かがみえてくるようになり、また交換表の使い方もわかってきます。よく使う食品の1単位の重さを書き出し、一覧表にしておくと便利です。

    ⑥ステップ6:食べたい献立に変える

    さて、いよいよ仕上げの段階です。最後は、既にある献立表を使って、あなたが食べたい献立に変える方法の練習です。ここに20単位(1600kcal)で炭水化物55%の和風の献立表があります。この献立の昼食を、洋風の献立に変えるには、どうすればいいのでしょうか。和風の昼食の献立の構成はこうです。

    • 御飯(3単位)
    • 豚のしょうが焼き、トマト添(2.1単位)
    • コールスローサラダ(1.2単位)
    • わかめと野菜の酢のもの(0.1単位)

    この献立の単位数は計6.4単位。これを同単位の洋風の献立に変えたい場合、例えばこんな風に変えることができます。

    • パン(3単位)、マーガリン(0.6単位)
    • ロースハム、トマト添(1.6単位)
    • 生野菜のサラダ(0.8単位)
    • コーヒーの砂糖(0.2単位)
    2節図3

    では、交換の内容を具体的にみてみましょう。

    表1では、ごはん3単位分を→フランスパン3切れ(3単位)に(フランスパン1切れが1単位)。

    表3では、豚肉のしょうが焼き1.5単位分を→ロースハム3枚(1.5単位)に。

    表5では、しょうが焼き用の油0.3単位分とコールスローサラダのマヨネーズ1単位分をパンにつけるマーガリン6g(0.6単位)とサラダのドレッシング大さじ1(0.7単位)に。

    表6では、しょうが焼きの根生姜とプチトマト(2つ)、コールスローサラダの生野菜、酢の物をプチトマト(3つ)やサラダの生野菜をあわせて計120gに。

    調味料では、しょうが焼き用のさとう0.2単位 (小さじ1強)を→コーヒーに(0.2単位)。

    洋風にした場合の食品の単位数は計6.4単位となり、和風の献立の単位数とぴったり一致します。これで、交換が可能になりました。こうしたやり方をすれば、朝食、夕食の交換も簡単です。また交換に馴れるにつれて、全部の献立を自分でつくることもできるようになります。

    これで、6ステップは終わりです。季節の変化や、みなさんの好みを取り入れた献立づくりに挑戦して、ぜひ食事療法をバラエティーに富んだおいしく楽しいものに変えて下さい。

    ●糖尿病20単位(1600kcal)、炭水化物55%献立例

    献立名食品名量(g)表1表2表3表4表5表6調味料
    緑黄色淡色
    ごはんごはん1503
    味噌汁小松菜40
    油揚げ40.2
    味噌120.3
    削りぶし
    ごま浸し三つ葉20
    鶏ささ身250.3
    しめじ20
    白ごま1
    醤油
    納豆納豆401
    マスタード少々
    醤油
    即席漬け30
    蕪葉5
    少々
    ごはんごはん1503
    生姜焼き豚もも肉901.5
    根生姜10
    砂糖40.2
    醤油
    30.3
    プチトマト20
    コールスローサラダキャベツ30
    カイワレ15
    人参15
    マヨネーズ101
    酢の物生わかめ15
    胡瓜25
    茗荷5
    酢、醤油5
    ごはんごはん1503
    刺身マグロ901.5
    青紫蘇1枚
    大根30
    山葵、醤油
    煮物コンニャク40
    タケノコ40
    フキ20
    干し椎茸1枚
    砂糖30.15
    醤油、だし
    茸炒め茸類3種50
    根深葱30
    20.2
    牡蠣油100.2
    かき卵汁250.5
    小惣5
    塩、醤油
    漬物茄子漬け20
    間食果物りんご1501
    牛乳牛乳1801.5
    20.0単位9151.51.51.20.8
    2節図3
    朝食
    2節図3
    間食か各食事配分
    2節図3
    夕食

    <食事療法>のQ&A

    Q:
    運動すれば好物のケーキを食べられますか?
    A:
    運動によるエネルギー消費は意外に少なく、食べ過ぎたからといって、それを運動で消費するのはかなり大変です。運動療法の主目的は、エネルギーを消費することではなくインスリンの働きをよくして血糖コントロールをしやすくすることです。食事と運動は原則として交換できないと考えてください。なお、ショートケーキ1個分の4~5単位を運動で消費するには、ランニングなら1時間程度、ウォーキングならさらにその2倍前後の時間を、普段の運動療法に追加しなければなりません。
    ちなみに大福は2~3単位、ポテトチップは1袋で5単位ぐらいあります。特に、スナック菓子は、食べ始めたら途中で止まらず、全部食べてしまいがちなので注意です。
    Q:
    アルコールはなぜいけないのですか?
    A:
    アルコールを飲み始めると、つい限度を超えて飲んでしまいがちです。おつまみのエネルギー量や塩分も問題です。アルコールには、エネルギーはあるのに栄養素ではないので、飲むために御飯を減らしたりすると、不健康に痩せてくる心配もあります。
    結果として、血糖コントロールや合併症に悪影響を及ぼします。更に、低血糖を起こしやすくしたり、低血糖に気付きにくくする、低血糖を長引きやすくする、という影響があります。
    このようなことからアルコールはお勧めできないのですが、コントロールが安定していて、合併症や低血糖の心配がなく、2単位(例えば日本酒1合弱)を守れる意志の強さがあれば、1合程度はよいとされることもあります。
    Q:
    「カーボカウント」「糖質制限食」「低GI食」とはどういう意味ですか?
    A:
    カーボカウントとは、食後の血糖上昇を決める主要な栄養素の一つである炭水化物(英語のカーボハイドレート。略してカーボ)の量を目安で計る(カウントする)ことです。その量にあわせてインスリン注射の単位数を調整することなどで、血糖コントロールに役立つことがあります。
    糖質制限食とは、糖質(食物繊維以外の炭水化物)の摂取量を抑えて血糖値や体重を管理しようとするものです。ただし、栄養バランスが大きく偏りやすく、運動療法・薬物療法と噛み合わずに血糖値が乱れやすくなったり、合併症(腎症や動脈硬化など)の進行が速まる可能性があります。
    GIとはグリセミック・インデックスの略で、ある食品を一定量食べた後に血糖値がどれくらい高くなるかを示す指標のことです。同じエネルギー量の食品でも、低GIの食品は食後血糖値の上昇が穏やかです。

    <食事療法の効果を高めるアドバイス>

    • ゆっくりとよく噛めば、腹八分でも満腹感が得られます。
    • 6つの表から満遍なくとれば、30以上の食品がとれて理想的。
    • 魚の油(EPA)は動脈硬化を防ぎます。魚も食べるようにしましょう。
    • 血糖の急速な上昇を防いでくれる食物繊維もたっぷりと。
    • 間食のエネルギー量も忘れずに計算に入れましょう。
    • 迷信や民間療法よりも自分の食事療法を信じましょう。

    ◆血糖値のコントロールが総てです。

    • 間食をしない事
    • 糖分を節制する事
    • 適度の運動をする事

    ※何に注意して飲食すればいいのか?

    • 糖分
    • 塩分
    • 脂肪分