第47章 痛風〔風が吹いても痛いから痛風〕

インデックス 第1節 尿酸値について〔遺伝性と環境性があります〕  | 第2節 生活習慣の改善〔日常生活様式を改善すべき〕

◆痛風の原因

痛風発作の原因は尿酸という物質です。尿酸はどんな人の身体の中にも一定量あって、血液などの体液に溶けて循環し、尿の中に濾し取られて捨てられます。一部は、消化管から排泄されます。ところが、何らかの原因で血液中の尿酸の濃度が上昇して飽和濃度を越えると、身体の中に蓄積してきます。溶けなくなった尿酸はナトリウムと塩を作り、結晶になります。

尿酸の濃度が高い状態が続くと、この尿酸塩の結晶が関節の内面に沈着してきます。痛風発作は、尿酸塩に対して身体の防御機構である白血球が反応し、攻撃する時に起こります。

尿酸塩が関節に溜まると痛風発作になりますが、他の臓器にも溜まります。なかでも皮下に溜まりやすく、皮膚の下に結節ができます(痛風結節)。痛風結節はまれには脊髄に溜まり、神経症状の原因になる事もあります。腎臓も尿酸が溜まりやすく、高尿酸血症や痛風の人は腎機能に注意が必要です。さらに、痛風の患者さんでは心血管障害や、脳血管障害などの生命を脅かす成人病を合併する割合も高いのです。痛風発作の激痛は「尿酸が体に溜まっているよ、治療が必要だよ」という神様の警告と考えるべきでしょう。

◆尿酸ってなに?

尿酸は、最初は膀胱結石の中から発見された物質です。その後、尿酸は生物の情報とエネルギーと言う重要な役割を果たす物質の最終産物である事がわかりました。つまり、遺伝子を構成するDNA、エネルギーを担当するATPが分解されると尿酸ができます。尿酸は、人体の情報やエネルギーを受け持つ物質が分解されてできた老廃物です。

尿酸はほとんどの動物では分解され、体内に溜まりません。ところが人間と一部の霊長類は尿酸を分解する酵素(尿酸酸化酵素)が遺伝的に欠損しており尿酸がたまる傾向があります。

普通の人の体内では一日約0.6gの尿酸が作られます。この尿酸の産出が多くなったり排泄が低下すると尿酸は体内に蓄積し、痛風を起こします。要するに、尿酸はプリン体の老廃物、つまり、廃棄物であってプリン体の「ごみ処理」問題がうまくいかないと痛風になるわけです。

◆尿酸の正常値は?

健康診断、人間ドック、住民検診などの検査を受けると、検査結果の報告が来ます。痛風の原因である尿酸の血液中の濃度は「尿酸値」や「血清尿酸値」と記入されています。男女ともにこの値が7.0mg/dLまでは基準値内です。これを超えると異常で、高尿酸血症と呼ばれます。

よく検査結果の報告用紙には正常値とか基準値などが書かれていて、血清尿酸値の場合、男性で3.8~7.5mg/dL、女性で2.4~5.8mg/dLと記載されていることもありますが、これは参考程度に留めておいて結構です。

尿酸の基準値を 7mg/d以下に置く理由は、血漿中の尿酸の溶解度を基準にしたものです。通常の条件では、血漿の中で尿酸は7mg/dLまでは溶けます。しかし、これを超えると結晶になる傾向があります。尚、血清尿酸値が低い場合もあり、2mg/dL,1.5mg/dLあるいは1.0mg/dL以下(公式の基準は無い)を低尿酸血症と呼びます。低尿酸血症の人の一部には運動後の腎障害や尿路結石が起こることがあります。多くの場合SLC22A12というトランスポーター(膜を貫通して物質を輸送する蛋白質)の遺伝子に変異が起きています。

  • 第1節 尿酸値について〔遺伝性と環境性があります〕

    ◆尿酸値を上昇させる要因

    血清尿酸値を上昇させる要因は、遺伝的要因と環境要因に分けられます。最近の研究によりそのどちらの要因も詳細にわかってきました。

    <遺伝的要因>

    尿酸に関係する遺伝子は、希で影響が強い遺伝子と、頻度が高く影響が弱い遺伝子に分けられます。遺伝子の名前は大文字の英語で表わされますが、HPRT、PRPP、UMOD、SLC22A12、XDH、PNPなどは希で強い遺伝子です。

    強いと言う意味は、遺伝子が強い影響を与え、尿酸値を大きく動かすと言う意味です。このような遺伝子を持っている場合、遺伝病ということばが使われます。

    しかし、これらの遺伝子の変異を持っている人は極めて希なので大多数の痛風や高尿酸血症には関係しません。では、大多数の痛風や高尿酸血症に遺伝子が関係しないかと言うと、そうではありません。

    でも、大多数の痛風や高尿酸血症に関係する遺伝子は、頻度は高いが影響が弱い遺伝子です。20個以上の遺伝子です。これらの遺伝子には腎臓の尿細管に発現し、物質輸送に関係するものが多いです(トランスポーター)。ABCG2は消化管に分布し、消化管からの尿酸の排泄に関係している可能性もあります。

    <環境要因>

    1)食生活の問題

    食生活の問題食事内容は尿酸値に影響します。長期の調査によると、肉食は痛風を増やし海産物も痛風を少し増やします。野菜は痛風を減らし、乳製品も減らすと考えられています。

    しかし、あまりにも極端な食事管理では長続きしませんし、かえって他の病気を招きます。野菜の多い食事を心がける程度で結構だと思います。それより、痛風の患者さんの60%には、肥満があり、肥満度が大きいほど尿酸値は高くなります。また肥満は痛風の人に多い合併症の大敵です。食事を減らし、よく歩き、標準体重を守ることが大切です。

    2)飲酒の問題

    アルコール飲料を飲むと尿酸値は一時的に上がります。アルコールが体内で分解される時に尿酸が作られます。その際にできる乳酸が体内に尿酸を蓄積され、一部のアルコール飲料には尿酸の元になるプリン体が多く含まれていることなどがその主な原因です。アルコールが代謝されるときに尿酸値が上がるので、どんな種類のお酒でも尿酸値や痛風には良くない  訳です。

    尿酸の素になるプリン体を含む量は種類によってかなり違います。プリン体はビールに最も多く含まれ、ウイスキー、ブランデー、焼酎などの蒸留酒はあまり含まれていません。長期に渡る研究では、ビールが痛風を増やし、蒸留酒も少し増やします。これに比べてワインは少し減らすと言う結果がでています。日本では長期の調査が無いので、残念ながら日本酒についてはわかりませんが、焼酎はおそらく蒸留酒と考えてよいでしょう。

    低プリンビールなどはプリン体が少ないのでビールより痛風に悪くないと考えられますが、長期的な影響は研究されていません。ただ、ビールが大好きな人が完全にビールを止めるのも難しいと思われるので、これまで述べた知識を元に、柔軟に対処すれば良いと思います。

    3)ストレスや、行動パターン

    ストレスは尿酸値を上昇させるようです。運動もやり方次第では尿酸値を上げ、特に激しい運動は尿酸値を一時的に上昇させます。発汗や下痢で脱水状態になったときも血清尿酸値は上昇します。ストレスはうまく発散させるようにしましょう。

    4)他の病気の影響

    腎機能が低下したり、血液の病気があったりすると尿酸値が上がることがあります。悪性腫瘍が原因で高尿酸血症になることもありますので注意が必要です。

    5)薬剤の影響

    薬剤の影響挿絵薬剤の中には、尿酸値を上昇させるものがあります。

    • サイアザイド系降圧利尿薬(フルイトランなど)
    • ループ利尿薬(ラシックスなど)
    • 喘息の治療薬のテオフィリン(テオドールなど)
    • 結核治療薬のピラジナマイド(ピラジナミドなど)
    • 少量のアスピリン(小児用バファリンなど)

    その他、薬剤ではありませんが健康食品といわれるものの中に、核酸成分を大量に含むものを毎日食べ続けて尿酸値が高くなることがあります。

  • 第2節 生活習慣の改善〔日常生活様式を改善すべき〕

    ◆日常注意するポイント

    尿酸値を下げるためには次のような点で日常生活の注意をしてください。

    ①肥満を解消する
    総カロリーを制限し、偏食を避け、多品目を少量づつ、ゆっくり噛んで、食べることです。
    ②アルコール飲料を控える
    一気飲みしない、沢山飲まない、休肝日を設ける。ビールばかりにしないことを気を付ける。
    ③積極的に水分を摂取する
     季節を問わず尿が一日2リットル以上になるようにすること。少なくとも毎日2リットル以上の水分をとること。
    ④軽い運動を行う
    ウォ-キングなどの有酸素運動は尿酸値を上げず、痛風の人に多い高血圧などの合併症にも有効です。
    ⑤精神的ストレスをうまく緩和する
    のんびり、ゆっくり型のストレス対策が必要です。

    ◆尿をアルカリ性にする

    尿をアルカリ性に傾ける食品を積極的に食べると尿酸値が下がります。尿酸は酸性ですから尿が中性からアルカリ性に傾けば、尿酸は溶けやすくなります。排泄も通常より促され、尿酸を体外に排出しやすくし、尿酸値を下がる働きをします。

    アルカリ性の食品には以下のようなものが挙げられます。

    • <海藻類>わかめ、ひじき、昆布
    • <野菜類>ほうれんそう、ゴボウ、人参、キャベツ
    • <イモ類>ジャガ芋、里芋、薩摩芋
    • <果物類>メロン、バナナ、グレープフルーツ

    女性は男性に比べて尿酸を排出し易いので、殆ど痛風は男性に多い。

    プリン体の多い食品類を避けること!

     ・干物、干し椎茸、卵類(魚卵、鶏卵)、アルコール類、など

    要は、体質をアルカリ性にするのが最優先です。そして、水分を大量に摂取することです。