第36章 貧血〔高齢者では意味合いが違う〕

インデックス 第1節 貧血の診断と治療〔素人療法は危険です〕  | 第2節 貧血を防ぐ食事〔食生活を見直しましょう〕  | 第3節 鉄分の多い食品〔ひじきはカルシウム食品です〕

◆高齢者の貧血

血液には、白血球、赤血球、血小板という細胞成分が含まれています。血液の成分の中で、赤血球やヘモグロビン濃度が基準値より低下している状態のことを貧血とよびます。ヘモグロビンとは、赤血球に含まれる酸素を体のさまざまな組織に運搬するはたらきのあるタンパク質のことです。

高齢者における貧血の原因は、若年者とは異なる傾向になることも多いです。高齢者における貧血の特徴、症状や原因、診断方法などについてまとめます。

◆高齢者における貧血の特徴

若年者における貧血は、偏った食事による鉄分不足や女性の場合には月経過多、消化管からの持続的な出血などによるものが多いといわれています。つまり、鉄分の摂取不足や出血により血液の産生に必要な鉄が不足し貧血を引き起こしています。

高齢者の場合にも鉄不足による貧血は起こります。しかし、若年者に比べると、体の状態が悪いことによって、鉄は十分にあるのにうまく利用できない貧血(悪性腫瘍や感染症、膠原病など)や赤血球を産生する骨髄の病気による貧血が起きる可能性が高いという特徴があります。

◆高齢者における貧血の症状

貧血の症状というとめまいが起きると考えている人も多いですが、貧血でめまいが起きる時は短時間で急激に出血している場合だけです。一般的には、貧血の症状は動悸や息切れ、疲れやすい、倦怠感などです。

高齢者の場合には、日常の生活動作がゆっくりであることも多く貧血の症状に気づかない可能性があります。また、認知症のような物忘れや狭心症に伴うような胸の痛み、食欲がわかないなどという症状が出ることもあります。

◆高齢者における貧血の原因

高齢者において起きる可能性のある貧血の原因についてまとめます。

①鉄欠乏性貧血
栄養不足による鉄分不足や悪性腫瘍による持続的な出血によって起きる貧血です。特に、高齢者の場合には、胃癌や大腸癌などを発症する可能性があるので胃や大腸の内視鏡検査を勧められることがあります。
また、腰痛や関節の痛みに対して整形外科から処方される消炎鎮痛剤の内服によって胃から出血することもあるので注意が必要です。
②慢性炎症性疾患による貧血(悪性腫瘍、感染症、膠原病)
体の状態が悪いと十分に鉄があってもうまく血液を作れない状態になります。高齢者の場合には、悪性腫瘍による貧血が最も多く、次に感染症と膠原病が続きます。膠原病は、関節リウマチなどが含まれます。
③骨髄性疾患(骨髄異形成症候群、再生不良性貧血など)
骨髄異形成症候群(MDS: myelodysplastic syndromes)は高齢者に多く発症する骨髄の病気で血液の細胞を作る骨髄に異常が起きて貧血になります。再生不良性貧血は、薬剤や放射線によって引き起こされることがあり、骨髄で血液を産生できない状態になっていることをさします。
④老人性貧血
原因不明の時に、老人性貧血と診断されることがあります。加齢にともなう赤血球産生能の低下や赤血球を刺激するホルモンに対する感受性の低下などが原因として考えられています。
  • 第1節 貧血の診断と治療〔素人療法は危険です〕

    ◆貧血の診断

    貧血の診断は、まず採血検査で行います。血液検査では、赤血球やヘモグロビンだけでなく白血球や血小板、血液中の鉄に関連する項目、腎臓や肝臓の機能などについて調べます。赤血球やヘモグロビンが正常値以下に低下している場合に貧血と診断されますが、貧血において重要なのは原因となっている病気を特定することです。

    血液検査で異常があり、血液を作る元である骨髄の検査が必要と判断された場合には骨髄穿刺を行って最終的に診断します。

    ◆貧血の治療

    貧血の治療は原因によって異なります。鉄欠乏が原因の場合には鉄剤を補充します。悪性腫瘍や感染症、膠原病などの炎症性の病気がある場合には元の病気を治さないと貧血は改善しません。骨髄の病気による場合には、健康な造血細胞の移植や抗癌剤治療、輸血を行うことがあります。

    原因がわからないといわれている老人性貧血の場合には、定期的に外来で経過観察を行い、進行しないようであれば、特に治療は必要ありません。

    ◆貧血に対する予防法

    貧血を引き起こす病気の中で予防できるものは、鉄分不足による鉄欠乏性貧血です。それ以外のものは、出血や炎症性疾患(膠原病や悪性腫瘍など)、白血病になる可能性もある骨髄の病気が含まれるので自分で予防することが難しくなっています。

    高齢になると若い時よりお腹が空きづらかったり、運動不足により必要とする食事量が減ることがあります。1日30分以上は歩くように心がけ、バランスのよい食事を摂るように心がけると栄養不足にならず、十分な鉄分を摂取できる可能性があります。

    それから特に症状がなくても、年に1回定期的に健康診断を受けるのも早めに貧血に気づける良い機会となるかもしれません。

  • 第2節 貧血を防ぐ食事〔食生活を見直しましょう〕

    ◆貧血とは

    血液中の赤血球に含まれるヘモグロビンは酸素を体内のすみずみまで運搬する大切な働きをしています。貧血とは赤血球またはヘモグロビンが減少した状態です。貧血になると全身が酸素不足になり、頭痛・めまい・疲労・肩こり・消化不良が起きたり、顔色が悪く、イライラしたり、といった症状が出てきます。

    貧血は色々な原因で起こりますが、最も多く見られるのが、ヘモグロビンの重要な構成成分である鉄が欠乏するという貧血(鉄欠乏性貧血)です。鉄の摂取不足のほかに、胃摘出などで鉄の吸収が障害されている場合や、消化管出血や子宮筋腫等による出血過多で鉄が損失している場合にも鉄欠乏貧血が起こります。

    必要な場合は治療を受けるとともに、赤血球の寿命は120日くらいと言われ、毎日少しずつ作りかえられているので、材料となる鉄やたんぱく質を毎日の食事で補うことが大切です。

    ◆貧血を防ぐ食事

    〇ポイント1:鉄を多く含む食品を毎日とりましょう
    肉類やレバー、血合い(血を多く含んだ暗赤色の部分)の多い魚や貝、豆と豆製品、ひじき、青菜など鉄を多く含む食品を組み合わせて、毎日必要量の鉄を摂るようにしましょう。
    〇ポイント2:良質たんぱく質をじゅうぶんにとりましょう
    必須アミノ酸をバランスよく含む良質たんぱく質源の肉や魚、卵や乳製品、豆製品などをじゅうぶんにとりましょう。動物性たんぱく質を一緒にとることで鉄の利用率もよくなります。
    〇ポイント3:鉄の吸収率を高めるビタミンCをとりましょう
    体内で鉄が吸収されるときにビタミンCが必要となります。ビタミンCを多く含む緑黄色野菜や果物、芋などを積極的にとりましょう。また、肉や魚、乳製品、納豆から取れるビタミンB12、ほうれん草などの緑黄色野菜や大豆に含まれる葉酸も貧血防止に効果があります。
    〇ポイント4:鉄の吸収を妨げるものに注意しましょう
    日本茶、紅茶、コーヒーに含まれるタンニンは、鉄の吸収を妨げます。食事をしてすぐに紅茶を飲んだ場合、鉄の吸収率は約3分の1に低下するといわれています。貧血が強い場合は、タンニンを多く含む飲み物は食後30分以上たってから飲むとよいでしょう。また、ほうじ茶やウーロン茶はタンニンが多くないのでお勧めです。
    〇ポイント5:規則正しくバランスのよい食事を
    色々なものを偏りなく食べることが必要です。一日3回の食事を規則正しく、しっかりととりましょう。
  • 第3節 鉄分の多い食品〔ひじきはカルシウム食品です〕

    <参考>鉄を多く含む食品(単位:g) (mg)

    食品名1回の摂取量鉄分
    肉類豚レバー607.8
    鶏レバー605.4
    牛レバー602.4
    コンビーフ301.1
    牛もも肉:脂身つき800.8
    魚介類煮干し101.8
    めじまぐろ701.3
    牡蠣701.3
    あさり:剥き身10個301.1
    しじみ:剥き身10個201.1
    公魚(わかさぎ)800.6
    豆類がんもどき501.8
    納豆501.7
    高野豆腐:乾燥201.4
    茹で大豆501.0
    茹で隠元豆501.0
    茹で小豆500.9
    きなこ:大匙半分100.9
    卵類鶏卵500.9
    野菜類切干し大根201.9
    茹で小松菜501.1
    茹で法蓮草500.5
    海藻ひじき:乾燥84.4
    種子胡麻:大匙1杯101.0