第13章 腎臓病〔血液を濾過する機能〕

インデックス 第1節 腎臓の機能〔リサイクル機能の臓器〕  | 第2節 尿が作られる仕組み〔原尿と排泄尿〕  | 第3節 腎臓病の種類〔急性と慢性・早目の手当〕  | 第4節 腎臓病の種類〔前兆を見逃さない〕  | 第5節 代表的な慢性腎臓病と検査〔酷くなる前に治療〕  | 第6節 慢性腎臓病の治療〔日常の生活習慣も改善〕  | 第7節 透析治療への判断〔何時から血液浄化するか〕  | 第8節 透析治療の合併症〔合併症にも種類が多い〕  | 第9節 食事での注意事項〔特にリンの摂取の注意〕
2節図3

腎臓は体内の老廃物を尿として体外に排出するとともに、生命を維持するために必要な様々な成分のバランスを調整し、体内環境を整えるという重要な役割を担っています。

腎臓は、そら豆のような形をした握りこぶし大の臓器です。お臍の少し上あたりの背中側に左右一個ずつあります。そら豆の窪んだところは空洞になっていて、血管(腎動脈・腎静脈)や尿管がつながっています。心臓から出た血液の一部は腎動脈を通って腎臓の中に運ばれて、濾過されたあと、腎静脈を経て心臓へ戻ります。濾過された老廃物や余分な成分は尿となって尿管を通って膀胱へ運ばれ、尿毒素が排泄されます。

◆腎臓と周囲の臓器

腎臓の内側は、表面に近い「皮質」と内側の「髄質」の2層の構造になっています。入ってきた血液はまず皮質に運ばれて濾過されます。濾過された液体は、尿細管という管で運ばれながら髄質の中で尿になっていき、腎盂へ運ばれます。

◆腎臓の働き

老廃物を体外に排出する機能です。体内では、栄養成分の燃えかすや、古くなった細胞成分のカスなどの老廃物が発生します。腎臓は、この老廃物を全身を巡りながら回収してきた血液を、濾過し綺麗にして心臓へ戻します。また、不要となった老廃物を尿として体外へ出します。

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  • 血液の濾過と原尿再利用
  • 水分や電解質(ミネラル)調節
  • 体内のpH(ペーハー)を調節
  • 血圧を調節
  • 赤血球を生成
  • 活性型ビタミンDを生成
  • 尿生成と排泄
  • 第1節 腎臓の機能〔リサイクル機能の臓器〕

    <水分や電解質(ミネラル)調節>

    体内の水分には、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどの電解質(ミネラル)と呼ばれる物質が一定の濃度で含まれており、生命活動の上で大切な働きをしています。腎臓は、尿の量や成分の濃度を調節し、体内の水分量や電解質濃度を一定に保つ働きです。

    <体内のpH(ペーハー)を調節>

    人間の体は中性~弱アルカリ性に保たれていなくてはなりません。腎臓は、血液の中の酸を排出したり、重炭酸イオンを取り込んだりすることで、pHの調節を行っています。

    <血圧を調節>

    腎臓は、体内の水分や電解質(ミネラル)の調節を行うとともに、血圧を上げたり下げたりする働きをする物質(レニン、カリクレイン、キニン、プロスタグランジンなど)を分泌することで、血圧のコントロールを行っています。

    <赤血球を生成>

    腎臓は、エリスロポエチンという赤血球の産生を促すホルモンを分泌しています。血液中の赤血球が減り、貧血状態になっているのを感知すると、造血ホルモンのエリスロポエチンを分泌して、赤血球を増やします。

    <活性型ビタミンDを生成>

    食物として摂取したカルシウムが、腸で吸収されるのを助けるのが、ビタミンDです。但しビタミンDは活性化しないとその能力を発揮できません。腎臓は、このビタミンDを活性化させる働きを持ち、カルシウムの吸収を促し、骨を丈夫に保つという大切な役割を果たします。

    ◆腎不全:腎臓が働かなくなった状態

    腎不全には大きく2種類あります。急激に腎機能が低下する「急性腎不全」と、時間をかけ て少しずつ低下していく「慢性腎不全」です。急性腎不全は治療によって回復する可能性が ありますが、慢性腎不全は回復することはほぼありません。

    腎臓病の殆どが慢性腎不全の原因になる可能性があります。腎臓が殆ど機能しなくなると、 体外に排出されなくなった老廃物などが全身の臓器に影響を与える「尿毒症」という症状が 出て、生命を維持することができなくなり、透析や腎臓移植が必要になります。

    ◆日常生活における腎臓への負担

    日常の食生活の中で、腎臓に負担をかける主なものは、蛋白質と塩分です。栄養素の内で、炭水化物と脂肪は、体内で燃えると二酸化炭素と水に変化し、息や汗や尿として外に出るので老廃物は殆ど出ません。

    一方、蛋白質は燃えると尿素窒素や尿酸などの体に有害な物質になります。腎臓は、その有害物質の処理を一手に引き受けています。また、血液中に塩分(塩化ナトリウム)が増えると腎臓は余分な塩分を尿として排出しようと働きます。そのため、蛋白質や塩分を摂り過ぎると腎臓の負担が増えることになります。

  • 第2節 尿が作られる仕組み〔原尿と排泄尿〕

    腎臓に血液を運び入れた腎動脈は、腎臓の中で細かく枝分かれして毛細血管となり、皮質の部分で毛糸玉のような塊の「糸球体」になります。糸球体の膜はフィルターの一種で、蛋白質や血球などの分子の大きな成分は通さず、水分や分子の小さな成分を通すようになっています。ここで老廃物や分子の小さな物質が濾過されて糸球体の外に濾過されます。

    濾過された液体にはまだ体に有用な栄養分もたくさん含まれていて「原尿」と呼ばれます。原尿は、糸球体を袋のように包み込んでいるボーマン嚢から、尿細管という管に入ります。一方、血液は糸球体を出て腎静脈へ向かう途中で、尿細管の中を流れる原尿の水分や栄養分を、もう一度吸収し、血液の中に戻します。(再吸収)

    原尿は水分の99%と栄養分の大半を再吸収され、尿になって腎盂へ運ばれます。この糸球体ややボーマン嚢や尿細管という尿を作る基本単位を「ネフロン」と呼びますが、一つの腎臓にはネフロンが約 100万個あると言われています。ネフロンで作られた尿は、一つの腎臓に十数個ある腎杯に集められ、腎盂へ運ばれます。

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    <腎臓病の原因となる疾患>

    腎臓には、常に多量の血液が流れ込んでいるため、血液や血管の状態に影響を受けやすい臓器です。血管や血流に障害をきたす病気になると、腎臓の機能が低下し、腎臓病を発症し易くなります。代表的なものが「糖尿病」と「高血圧」です。糖尿病では細かい血管の障害、高血圧では動脈硬化が起こりやすく、どちらも腎臓病の原因となります。特に、糖尿病が原因の腎臓病は、近年増加しつづけています。

  • 第3節 腎臓病の種類〔急性と慢性・早目の手当〕

    <腎臓病の種類>

    腎臓病は、腎臓の異常が発生するプロセスによって、「原発性(一次性)」と「続発性(二次性)」に分けられます。また、病気の発生と進展の速さによって「急性」と「慢性」に分けられます。

    ・原発性の腎臓病
    腎臓それ自体に何らかの問題が起きて病気になるものです。糸球体や腎盂など、腎臓の部  位に炎症が起きる「腎炎」が代表的なものです。
    ・続発性の腎臓病
    腎臓以外の病気が原因となって腎臓の機能に障害が出るものです。糖尿病が原因で起こる  糖尿病性腎症、高血圧が原因で起こる腎硬化症、痛風が原因で起こる痛風腎などです。
    ・急性の腎臓病
    症状が急激に出て、時間や日の単位で悪化します。急性糸球体腎炎が代表的です。あっという間に腎臓の機能が低下し、尿が全く出なくなることもありますが、多くは治療によって改善し、回復することが可能です。
    ・慢性の腎臓病
    ゆっくり静かに進行します。1つの腎臓には尿を作る基本単位のネフロンが 100万個あります。病状が初期の場合には、いくつかのネフロンが破壊されても、残りのネフロンが破壊された分の機能を補います。そのため病状が末期に近くなるまで自覚症状が出ません。病気を発見するには、定期健診などでの尿検査が必要です。慢性の腎臓病には「慢性糸球 体腎炎」「糖尿病性腎症」「腎硬化症」「多発性嚢胞腎」などがありますが、根本的な治 療法がなく、多くの場合は腎臓の機能が果たせなくなる「腎不全」へと進んでしまいます。
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  • 第4節 腎臓病の種類〔前兆を見逃さない〕

    ◆腎臓病の症状

    腎臓病の自覚症状は、急性か慢性かによって出方が異なります。急性の場合は症状がはっきりと急激に出るため、早めに治療を行うことができます。しかし、慢性の場合は無症状であることが多く、症状が出た頃には病気がかなり進行しています。自分でチェックできるポイントとして「むくみ易い」「尿が泡立つ(蛋白尿)」などの症状があります。

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    • 尿の異常(血尿・蛋白尿・多尿・乏尿・無尿)
    • むくみ(浮腫)
    • 高血圧
    • 貧血
    • 痛み
    • 発熱

    ①尿の異常(血尿・蛋白尿・多尿・乏尿・無尿)

    糸球体や尿細管に異常があって血液の濾過や再吸収が正しく行われないと、本来血液に再吸収されるはずの血球や蛋白質などの成分が尿中に出て、血尿や蛋白尿などの症状が現れます。尿が濁る、くすんだ赤色になる、泡が立つなどの症状があれば「血尿」や「蛋白尿」の可能性があります。肉眼でわからなくても、尿検査で調べることができます。

    また、尿を作ったり尿の量や濃度を調節する機能がうまく働かないため、薄い尿が頻繁に出る(多尿)、尿が少ししか出ない(乏尿)、ほとんど出ない(100mL以下=無尿)などの症状が出ることもあります。尿の泡がなかなか消えないのは蛋白尿の可能性があります。

    ②むくみ(浮腫)

    水分や塩分の調節がうまく出来なくなると、体内に水がたまってむくみが生じます。腎臓病でむくみが現れ易いのは、足と顔です。すねの骨の部分を指で押してみても、くぼんだ部分がなかなか元に戻らなければ、むくみと考えられます。また、水が体内に溢れてくると、肺や胃腸、肝臓などにも水が溜まるようになり、呼吸困難やお腹がパンパンに膨れるなどの症状が現れます。

    ③高血圧

    血圧のコントロールや水分・塩分の調節がうまく出来なくなると、高血圧になります。

    ④貧血

    造血ホルモンのエリスロポエチンの分泌が低下すると、血が薄くなり、顔色が悪くなる、疲れ易い、動くと息切れや動悸がするなどの貧血症状が現れます。

    ⑤痛み

    まれに、背中・腰・腹部・わき腹などに痛みが出ることがあります。普段はなんともないのに、背中を叩くと激しい痛みがある「叩打痛」が代表的なものです。

    ⑥発熱

    腎盂や腎杯に起こった炎症が腎臓全体に広がった状態の腎盂腎炎に注意します。主に、膀胱に感染した菌(大腸菌、ブドウ球菌など)が、尿管を通って腎臓に感染することで起こります。腎盂腎炎になると、風邪のような症状(発熱、ふるえなど)が出て、尿が白く濁ります。治療には抗生剤などの薬物療法を行います。この腎盂腎炎の場合、まれに、発熱をともなう場合があります。

  • 第5節 代表的な慢性腎臓病と検査〔酷くなる前に治療〕

    代表的な慢性腎臓病には、以下のようなものがあります。

    • 慢性糸球体腎炎
    • 糖尿病性腎症
    • 腎硬化症
    • 多発性嚢胞腎
    • ネフローゼ症候群

    ①慢性糸球体腎炎

    一般に「腎炎」と呼ばれるものは、正しくは「糸球体腎炎」といいます。糸球体に炎症が起きて、腎臓の濾過機能が低下する病気で、急性と慢性があります。急性の場合、多くは治療によって腎臓の機能が元に戻ります。一方、慢性の場合、腎臓の機能が元に戻ることはありません。原因は免疫の異常と考えられています。初期には症状がほとんどなく、大半は尿検査で発見されます。

    ②糖尿病性腎症

    糖尿病で血液の中のブドウ糖が過剰な状態が続くと、血管の壁は厚く固くなり、血管がもろくなって血液が流れにくくなります。特に細い血管が障害を受け易いため、毛細血管である糸球体は障害を受け易いと言えます。糸球体の濾過機能をはじめとする腎臓の様々な働きに異常が出て、腎臓の働きがどんどん低下していきます。初期の自覚症状はほとんどないので、尿検査でチェックする必要があります。

    ③腎硬化症

    高血圧も、糖尿病と同様に血管をもろくします。特に動脈硬化を進行させるので、腎臓に血液を運ぶ動脈にも障害が起きます。血液量は少なくなり、腎臓は硬く小さくなり、機能も低下していきます。良性と悪性があり、良性はほとんど症状がありません。一方、悪性は、重い高血圧、視力障害、頭痛、吐き気、意識障害などの症状が現れ、一刻も早い治療が必要にです。

    ④多発性嚢胞腎

    腎臓に嚢胞という、液体の入った袋状のものが出来て増えていきます。年齢とともに腫れて大きくなるため、腎臓の働きが徐々に低下していきます。これは遺伝性の病気です。嚢胞が大きくなると、腹部膨満感や鈍痛などの症状が出ます。

    ⑤ネフローゼ症候群

    ネフローゼ症候群とは、尿蛋白が出ること等により引き起こされる症状の集まりの事です。主な症状として「足や顔、腕のむくみ」「体重増加」「尿が泡立つ」があります。

    ◆腎臓病の検査

    腎臓病の診断や治療の経過観察のために、検査が行われます。

    • 尿検査
    • 血液検査
    • クレアチニン・クリアランス
    • 画像検査
    • 腎生検

    ①尿検査

    尿検査では、蛋白尿や血尿の有無を調べます。腎臓の機能がどれくらい低下しているかや、腎臓に病気があるか、糖尿病や肝臓病などの腎臓以外に病気があるかが分かります。

    ②血液検査

    腎臓病の血液検査では、血球成分の状態、血液中の蛋白質の量、ナトリウムやカリウムなどの電解質(ミネラル)の量、尿素(尿素窒素)、クレアチニン、尿酸などの老廃物の量を測定し、貧血や電解質のバランス異常がないか、尿中に排出されなくてはならない物質が血液中にどれくらい含まれているかを調べます。これによって、腎臓の働きがどれくらい低下しているかが分かります。

    ③クレアチニン・クリアランス

    血液検査では不十分なところを補うために、血液検査と尿検査を交互に、時間を置いて行う「クリアチニン・クリアランス」と呼ばれる検査を行うことがあります。これによって、糸球体の濾過機能の状態を調べることができます。

    ④画像検査

    腎臓の形や大きさ、内部の状態、位置、まわりの臓器との関係などを見るために、画像検査を行います。画像検査には次のようなものがあります。

    画像検査の種類検査方法検査でわかること
    超音波検査
    (エコー検査)
    超音波を体の外から当てて腎臓を縦・横の断面をみます。腎臓の形、大きさ、内部の様子、位置がわかります。
    X線撮影X線を使ってフィルムに撮影します。腎臓の形や大きさ、位置などがわまります。特に結石の有無を調べるのに有効です。
    造影剤を使ったX線撮影注射や点滴で血管に造影剤を 入れ、造影剤が血管を流れて腎臓や腎孟、尿管などを通るところを時間を置いて連続してX線撮影します。尿ができて流れていく様子を見る事ができます。
    CTスキャン
    (コンピュータ断層撮影法)
    X線とコンピュータを組み合わせて、体を輪切りにした画像を撮影します。腎臓の内部の様子を詳しく調べることができます。
    MRI
    (核磁気共鳴画像診断)
    強い磁気を当てて映像をコンピュータ上に映し出す検査です。体を自在な断面で映し出すことができ、腎臓の内部をCTスキャンよりも詳しく調べることができます。
    アイソトープ
    検査
    微量の放射性物質を含む薬を血管に注射し、体外に向かって出される放射線の強さや量を特殊なカメラで撮影します。また、薬が腎臓を通る様子を左右別々に時間を追って撮影します。(レノグラフィー)腎臓の形や機能を左右別々に調べることができます。

    ⑤腎生検

    腎臓の組織の一部を採取して、顕微鏡で詳しく調べる検査(腎生検)を行うことがあります。病状の進行や状態を正確に知ることができるので、診断と治療方針の決定に役立ちます。採取の仕方は、腰の背中側から腎臓に針を刺して組織を取る方法と、手術で切開して切り取る方法があります。事前の検査を含めて1週間前後の入院が必要です。 

  • 第6節 慢性腎臓病の治療〔日常の生活習慣も改善〕

    慢性腎臓病の治療の第一は、できる限り腎臓の機能を保ち、進行を遅らせることです。つまり、ネフロンが壊れて数が減っていくのを防ぐことです。

    • 慢性腎臓病の治療
    • 生活指導管理
    • 食事療法
    • 薬物療法
    • 透析療法
    • 腎臓移植

    ①慢性腎臓病の治療

    慢性腎臓病では、日常的な腎臓の負担をできるだけ少なくするよう、食事などの生活習慣を管理した上で、薬を使ってコントロールします。また、慢性腎臓病は心臓病や脳血管病などの合併症を引き起こし易いので、その予防や治療も同時に行います。薬物治療と食事療法などを続けていても腎臓の機能低下が進み、尿毒症を起こす危険が出てきたら、透析療法や腎臓移植などの治療を選択します。

    ②生活指導管理

    腎臓病の種類や症状などに応じて、仕事や家事、学校生活はどの程度行えるか、通勤通学は可能か、血圧や体重のコントロール方法、運動の程度など、それぞれの患者さんの状態に最適な方法を見つけます。

    ③食事療法

    腎臓病の治療では食事療法はとても重要です。食事療法をきちんと行えば、非常に高い効果が期待できます。食事療法の基本は、腎臓に負担をかけないようにするということです。病気の種類や症状などによって内容はそれぞれ異なりますが、基本は「塩分の制限」「蛋白質・リンの制限」「エネルギーの十分な摂取」です。また、透析患者さんにとって、水分の制限はとても重要です。腎機能が著しく低下すると、摂取した水分を尿として排泄することができなく なり、体内に水分が過剰に蓄積してしまいます。透析では、それぞれの透析患者さんのドライウエイトを目安に透析回数や透析時間を決定し、この過剰な水分を除去します。

    ④薬物療法

    慢性腎臓病の治療では、薬によって腎臓の負担を軽減し、病気の進行を遅らせるとともに、合併症を予防します。また、症状を緩和する対症療法も行います。治療薬には主に次のようなものがあります。

    目的薬の種類薬の効果
    肝臓の負担を軽減降圧薬血圧を下げます。
    吸着薬血圧の機能が落ちたために排出されず体内にたまった老廃物や、量の調節ができなくなった体内に過剰にたまった電解質(ミネラル)などを体外に出します。
    エリスロポエチン製剤造血ホルモンを注射し、貧血を改善します。
    病気の原因を解決免疫抑制剤・
    副腎皮質ステロイド薬
    免疫システムを調整します。
    症状を緩和・改善利尿薬尿をたくさん出して、むくみや乏尿を改称します。

    ⑤透析療法

    腎臓の機能が著しく低下し、生命の維持ができなくなった時は、透析療法を行います。透析とは、腎臓の代わりに人工腎臓の装置などを使って腎臓の仕事を代行させるもので、血液中に溜まった老廃物や余分な電解質(ミネラル)を除去し、pH(ペーハー)を適性にすることができます。透析療法だけでは補うことができない機能もあるため、薬物療法と併せて行います。

    透析療法には「血液透析」と「腹膜透析」の2種類があります。現在は、医療や透析技術の進歩により、透析を20年~30年続ける人も少なくありません。(日本透析医学会の調査によれば最長透析歴は約42年)

    ⑥腎臓移植

    健康な腎臓を手術で移植する方法です。腎臓が殆ど機能しなくなる「腎不全」と呼ばれる状態に至ったとき、治療の選択肢の一つとして挙げられます。いくつかの条件を満たす必要がありますが、成功すれば健康な人とほぼ同じような生活を送ることができます。健康な家族や血縁者から片方の腎臓を提供してもらって移植する「生体腎移植」と、亡くなった人の腎臓を移植する「献腎移植」があります。近年、移植後の拒絶反応を防ぐ優れた薬が開発されたことや臓器移植法が改正されたことなどにより、腎臓移植の件数は増加しています。

    ※ドライウエイト

    ドライウエイトとは、体の中から過剰な水分を取り除いた時の体重のことです。目標体重や 至適体重とも呼ばれます。患者さんや季節などのいろいろな原因によって変わってくるため 主治医と相談して決定します。

    ◆血液透析の経過

    透析療法は、一度始めると、腎臓移植を行わない限り一生続ける必要があり、血液透析は、次のような経過をたどるのが一般的です。

    ・腎不全期(血液透析導入前)
    体に尿毒素がたまり、体に様々な不調が現れて、日常生活に支障が出てきます。
    ・血液透析導入期
    吐き気、倦怠感、頭痛などの尿毒症の症状がなくなり、体調が良くなります。また、食欲も出てきます。
    ・血液透析維持期
    身体の調子も、精神状態も安定し、日常生活や仕事や学校などの社会生活も健康時とほぼ同じくらいできるようになります。しかしながら、健康な腎臓と完全に同じ働きをする事はできないため、長く続けている内に合併症(透析や腎不全が原因で起こる別の病気)等が生じて、そのための治療が必要となることがあります。
  • 第7節 透析治療への判断〔何時から血液浄化するか〕

    ◆透析療法を始めるとき

    薬物療法や食事療法などの治療を行っても腎機能低下が進み、症状も改善せず普通の生活を送るのが困難になった場合、透析導入を考える必要があります。

    • 透析療法を始める時期
    • 血液透析と腹膜透析の選択

    ◆透析療法における食生活

    透析療法によって腎臓の働きを全て代行できるわけではありませんので、食事療法は透析導入後も続ける必要があります。また、合併症を防ぐためにも大切です。透析中の食生活のポイントは、腎臓病の食事療法と同じです。

    ①透析療法を始める時期

    透析療法は、必要な時期に始めないと、心臓・肺・脳など他の臓器への影響の危険性も高くなります。長期に渡って続けるので、主治医の判断に従うだけではなく、患者さん自身が前向きに取り組むことが大切です。医療スタッフと十分に相談し合い、納得の上で決断しましょう。

    旧厚生省が出した「長期透析導入基準案」などを参考に、それぞれの患者さんの条件をふまえて主治医が必要と判断した場合、透析を勧められます。導入の基準になるのは、「症状」と「腎臓の機能」と「日常生活」のそれぞれの観点で現在の状態に点数をつけ、合計が60点を超えたら、透析療法を始めたほうがよいとされています。

    透析療法には「血液透析」と「腹膜透析」の2種類ありますが、どちらを選択するかは、それぞれの治療方法の利点および欠点と患者さんの生活習慣や透析開始時にどれくらい腎機能が残っているかなどを照らし合わせて決められます。

    【慢性腎不全に対する透析導入の目安】合計60点を超えたら透析治療!

    症状のA~Gのうち3項目以上あてはまれば30点、2項目は20点、1項目は10点です。

    症状の種類具体的な症状
    A 体液貯留前身のむくみ、高度の低たんぱく血症(血液中のたんぱく質の濃度が低い)、肺水腫(肺に水がたまる。呼吸困難や咳や痰)
    B 体液異常管理不能な電解質(排出されるべき電解質(ミネラル)が血液中にたまる、血液中のカルシウムが減る)、酸塩基[pH(ピーエイチ/ペーハー)]の平衡異常(血液が酸性になる)
    C 消化器症状吐き気、嘔吐、食欲不振、下痢など
    D 循環器症状重度の高血圧、心不全、
    E 神経症状中枢・末梢神経障害、神経障害(ボーっとして集中できない、頭痛、イライラ、ムズムズ、しびれ、麻痺、幻覚、意識を失うなど)
    F 血液異常高度の貧血症状(動悸、息切れ、疲労、倦怠感など)、出血傾向(鼻血、歯茎からの出血、下血など)
    G 視力生涯尿毒症や糖尿病による網膜症(眼底出血による視力低下、視野が狭くなる、白目の出血など)

    腎臓の機能

    血清クレアチニン(mg/dL)クレアチニンクリアランス(mL/分)点数
    8以上10未満30
    5〜8未満10〜20未満20
    3〜5未満20〜30未満10
  • 第8節 透析治療の合併症〔合併症にも種類が多い〕

    日常生活の問題

    日常生活の問題の程度点数
    尿毒症のため起床できない30
    日常生活が著しく制限される20
    通勤・通学・家庭内労働が困難10

    血液透析と腹膜透析の選択

    血液透析腹膜透析
    利点・病院での治療のため状態が変化した場合にすぐに対応できる。
    ・長時間行える。
    ・在宅での治療のため、自分の生活習慣に合わせて行える。
    ・透析不均衡症候群が起こりにくい。
    欠点・ブラッドアクセスが必要である。
    ・透析不均衡症候群が起こることがある。
    ・週に数回、病院に通う必要がある。
    ・カテーテルの挿入部に感染や腹膜炎が起こることがある。
    ・限られた期間のみしか行えない(5〜10年)。
    ・自己管理が必要である。

    ◆透析療法の合併症

    透析療法を続けていると、様々な原因で合併症(別の病気)が起こることがあります。透析を始めて直ぐの時期に体が透析に慣れないために起こる合併症(短期的合併症)と、透析を長く続けているために起こる合併症(長期的合併症)があります。

    ここでは、長期的合併症を中心にご紹介します。

    <透析不均衡症候群>

    透析を行うと、血液中の老廃物や水分は急激に減少し、血管と細胞の間に水分や成分濃度の大きな差(不均衡)が生じます。普通は、血管の外の細胞の成分や水分が、血管内に入ってきて、この不均衡は小さくなりますが、透析ではこれらが急激に減少するため間に合わなくなります。これによって体を流れる血液の量が減ってしまい、様々な症状を引き起こします。

    主な症状は、低血圧、頭痛、だるさ、四肢のふるえ、吐き気、嘔吐、意識障害、筋肉の痙攣などです。

    <長期的合併症>

    透析療法は人工腎臓に腎臓の働きを代行させる治療方法ですが、腎臓の機能を完全に代行できるわけではありません。透析や薬では補えない機能もあるので、合併症が生じます。長期的合併症には、次のようなものがあります。

    ・高リン血症

    骨折透析では、腎臓ほど高い効率で老廃物や余分な電解質(ミネラル)を処理することができません。高リン血症は、電解質(ミネラル)の一つであるリンが、透析で十分に除去ができず、血液の中に溜まってしまう合併症です。余ったリンが血液の中でカルシウムと結合して、血管の壁などにくっついて石のようになり(石灰化)、動脈硬化を発生させます。

    また、血液中のリン濃度が高くなると、副甲状腺ホルモン(PTH)というホルモンが分泌されるために、リンやカルシウムが骨から溶け出てしまい、骨を脆くしてしまいます。治療としては、リンの摂取を抑える食事療法とともに、リンを便と一緒に排出させる薬を服用します。

    ・副甲状腺ホルモン(PTH)の増加

    副甲状腺で作られる副甲状腺ホルモンが、高リン血症の影響で血液中に増えてしまう「二次性副甲状腺機能亢進症」という合併症があります。PTHが増えると、骨がもろくなったり、関節が痛くなったりします。また、動脈硬化、心臓の機能異常、性機能の異常、貧血、だるさ、痒みなど様々な症状が起きることがあります。

    治療としては、薬物療法と食事療法で、リンを除去したり、活性型ビタミンDを補います。PTHを下げるカルシウム受容体作動薬が用いられることも有ります。改善が見られないときは、手術で副甲状腺を取り除きます。

    ・副甲状腺ホルモンの低下

    副甲状腺ホルモンが基準値より低くなる人もいます。骨折などからの回復が遅くなったり、動脈硬化、心臓の病気などを起こすことがあります。治療としては、食事や運動を改善し、服薬している薬や透析液の見直しを行います。

    <透析アミロイド症>

     β2-ミクログロブリンという尿毒素が体内に少しずつ蓄積され、アミロイドという繊維になって骨や関節につく病気です。手のつけ根のしびれや痛み、肩の痛み。バネ指(指がスムーズに曲がらず、曲げようとするとガクっと急に曲がり、痛む)などの他、様々な症状が出ます。

    予防としては、新しいダイアライザーで透析を十分に行います。治療としては、症状を抑える薬物療法を行います。また、外科的な手術で症状を緩和することもあります。

    <腎性貧血>

    ホルモンを産生する腎臓の機能が低下するため、造血ホルモンのエリスロポエチンが不足し貧血になります。症状として、疲れ易い、動悸、息切れ、食欲不振、倦怠感などがあります。治療としては、「ヒトエリスロポエチン型製剤」を注射します。

    <心肥大と心拡大>

    高血圧や貧血、水分と塩分のとり過ぎなどが原因で、心臓が大きくなることがあります。放置すると命の危険につながります。予防としては、水分・塩分・血圧の管理を十分に行います。治療としては、貧血の予防と治療を行います。

    <尿素窒素(BUN)が高い/低い>

    老廃物の一つである尿素の濃度を表す「尿素窒素(BUN)」という検査値には注意が必要です。数値が高い状態が続くと、嘔吐や食欲不振などの症状や合併症が出てくるおそれがあります。数値が低い場合は、蛋白質の摂取量が足りないということなので、食事の見直しをしなくてはなりません。

    <多嚢胞化萎縮腎>

    小さく縮んで表面がかたくデコボコになった腎臓(腎萎縮)に、嚢胞という袋が沢山できて大きくなる合併症です。自覚症状は殆どありませんが、高い割合で腎臓癌が発生します。また嚢胞が破れて出血することがあります。治療としては、出血した場合に、輸血をしたり、手術で血管を詰まらせて止血します。

    <痒み>

    透析患者さんの中には、透析に入る前(腎不全期)から痒みの症状を訴える人が多くいます。痒みの症状の出方は多種多様で、リンやカルシウム、副甲状腺ホルモン、尿毒素など数多くの原因が痒みの発症に関与しているためと考えられています。予防としては、まず高リン・高カルシウムの防止、副甲状腺ホルモン値の適正化、十分な透析など原因と考えられる要素を改善していくことがあります。

    また、規則的な入浴、皮膚への刺激を避ける、保湿剤を塗るなどの、皮膚への対策も有効です。治療としては、痒みを止める抗ヒスタミン剤の塗布や服用、ステロイド外用薬、保湿剤、抗アレルギー薬の注射など、対症療法が行われます。

    <感染症>

    2010年の調査によると、透析患者さんの死亡原因の第一位は「心不全」ですが、感染症は第2位の死亡原因で増加しています。透析患者さんは以下のような理由で免疫力が落ちているため感染症にかかり易いと考えられています。

    ◆免疫力の低下を招く原因

    • 食事制限による栄養やカロリー不足や貧血
    • 尿毒素の体内への蓄積
    • 透析器(透析膜)など人工の異物との頻回接触
    • 皮膚や鼻・咽喉(気道)などの粘膜の乾燥
    • 糖尿病などの病気
    • ブラッドアクセスや腹膜アクセスの留置
    • 血液のpH(ペーハー)(酸性になっている)
    • 使用している薬の影響

    予防としては、次のようなことが重要です。(治療には抗生剤など薬物療法)

    • 皮膚や体を清潔に保つ(シャント部分は特に)
    • マスクやうがい、手洗いなどの感染防止をまめに行う
    • 食事療法に準じた栄養のバランスの取れた食事をとる
    • 少しでも異常を感じたら、すぐに医師に相談する

    ◆慢性腎臓病の合併症「CKD-MBD」

    人工透析を受けている患者さんが注意しなければならない合併症のひとつに、「慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常」があります。英文の頭文字をとって「CKD-MBD」と呼ばれます。カルシウムやリンなど、体内のミネラルが正常に代謝されるためには、腎臓の働きが重要な役割を果たしています。慢性腎臓病の方では、腎臓の機能が低下していますので、ミネラルの代謝異常から、様々な問題が起こり易いのです。骨をつくるべきリンやカルシウムが正しく代謝されないため、骨折しやすくなるのもその一つです。

    そのため慢性腎臓病の合併症は長い間、骨の病気として考えられてきました。しかし、実際この合併症の問題は「骨の病気」だけではありません。リンやカルシウムの代謝が原因で、血管がガチガチに固まってしまう「血管の石灰化」が起こることがわかってきたのです。動脈硬化が進むと、血管壁が厚くなって血液の通り道が狭くなりますが、そこに石灰化が加わると、一層、心筋梗塞や脳梗塞などのリスクが高くなります。つまりCKD-MBDは、人の寿命にも関わる問題なのです。

  • 第9節 食事での注意事項〔特にリンの摂取の注意〕

    ◆食事からのカルシウム、リン摂取との関係

    CKD-MBDの発症に関係すると言われているのが、カルシウムとリンです。高リン血症は、カルシウムの代謝にも影響しCKD-MBDを引き起こす要因になると考えられているため、透析患者さんは日常の食事でリンの摂取を控えるよう指導されます。

    具体的な食事指導としては、蛋白質の一日摂取量を制限されることが一般的です。では、必要なタンパク質を制限して、その結果としてリンを低下させることがよいのでしょうか。過度な食事制限によりリンがコントロールされている状態は、必要な栄養素が十分摂取できない可能性があり、低栄養状態を引き起こしてしまう危険性があります。

    2節図3

    ◆高リン血症の管理は早期から

    食事制限はあまり厳しくし過ぎず、好きな食事を楽しみながら高リン血症を防ぐ工夫が大切です。透析患者さんが元気で長生きするためには、「血管の石灰化」を予防することは大切ですが、食事制限をあまり厳しく行なうことは、患者さんにとっても家族にとってもストレスが掛ります。

    人間にとって、好きな食事を楽しめないことは、生活の質も低下してしまいかねません。好きな食事を楽しみながら、高リン血症に対しては、経口リン吸着剤などのお薬を使って、血中のリンの値を下げるという方法が有効です。こうすれば、食事を楽しみながらリン管理もでき低栄養状態も防ぐことができます。

    血管の石灰化は一朝一夕に起こることではありません。しかし、一度石灰化してガチガチになってしまった血管はもとに戻ることはありません。ですから高リン血症の治療は、石灰化を予防するためにも、しっかり行なうことが大切です。

    ◆リンは生物に必須のミネラル

    透析を受けている患者さんにとって留意しなければならない栄養素に「リン」があります。リンは、卵黄、油揚げ、たらこ、しらす干しなど蛋白質の多い食品に多く含まれています。また、ハムやソーセージなどの加工食品には「リン酸塩」というリンの化合物が使われており、これもリンの供給源になります。

    リンは生物が生きるのに欠かせないミネラルの一つで、骨や歯を造るのに必要な別名で骨のミネラル、として知られています。また、細胞一つ一つの細胞膜を構成する成分でもあり、細胞がエネルギーを産生することにも関わっているなど、その働きは多岐にわたることがわかってきました。

    リンは太古から人間にとって非常に貴重な成分でした。「ミネラルの宝庫」と言われる海水にも、人間の血液の1000分の1程度の濃度のリンしかありません。自然界の中で貴重なもののため、人間の体は積極的にリンを取り込もうとする構造になっています。そして、食品から摂取されたリンは、胃腸などの消化管から排せつされることなく、全て体内に取り込まれます。

    ◆過剰なリンは老化の原因に

    体に取り込まれたリンを適正な量に調整して、余った分を排泄するのが腎臓の役割です。健康な腎臓であれば、血液中のリン濃度は正常値に保たれます。しかし、腎臓病の方、人工透析を受けている患者さんでは、リンの排泄がうまくできません。そのため、透析患者さんの血中リン濃度は高くなり、「高リン血症」となります。

    「高リン血症」は直ぐに症状が出るようなものではなく、自覚症状がありません。しかし、長期的には様々な合併症の原因になり、さらには老化そのものを進める要因になります。まだ総てが解明されているわけではないのですが、最近の医学では、リンは根本的に寿命や老化に直結するミネラルであると考えられています。

    人間の体に絶対必要ではあっても、多過ぎれば細胞にダメージを与えるもの、という点ではコレステロールと同じです。そこで昨今、リンは「新たなコレステロール」と呼ばれるようになりました。現代では腎臓病の患者さん以外でも、高リン血症の方が増えつつあります。人類は太古から、リン不足は起こり得ても、余るという状況は想定外でした。現代の豊かな食生活でその状況が一変し、過剰なリンが健康にもたらす影響が徐々に明らかになってきました。

    ◆食事と薬で適切な管理

    リンの量を考えた食事は「アンチエイジング食」と呼ばれます。粗食とは“飽食”と反対にある“質素な食事”のこと。一汁三菜を基本に、お米や野菜を中心としたバランスの良い食事は、魚や肉を使った料理よりもリンの値が低く、アンチエイジングにもお勧めです。

    透析患者さんの高リン血症の改善策として最も望ましいのは、透析で十分にリンが排出できるように医療技術が改善されることです。現在の透析液はリン濃度0%に保たれ、極力リンを排出できるように工夫されていますが、それでも排泄しきれないのが現状です。

    患者さんの側でできることとしては、必要な栄養素を摂取した上で、リンの過剰摂取を控えることですが、現実的にはなかなか継続することは難しいものです。そこで、リン吸着薬というお薬で、体内のリンの量を調節することが重要です。

    透析中の方以外でも、健康管理のためにはリンの過剰摂取に注意したいもの。高カロリーで加工食品の多い食事では、リンの摂取が多くなります。あるアンチエイジング医療専門のクリニックでも、患者さんにリンの少ない食事を勧めているそうです。ただ、腎臓病の患者さんにとっては、食事療法は一生向きあっていくものです。中途半端に取り組んでリバウンドしても体にはよくありません。

    むしろお薬をきちんと飲んで、食事は「はめを外さない」程度の軽い気持ちで取り組むほうが長続きするのではないかと思います。