第11章 歯周病〔こんなに怖ろしい病気〕

インデックス 第1節 歯周病の原因〔毎食後の歯磨き習慣〕  | 第2節 歯周病の治療〔急速な治療法の進歩〕  | 第3節 歯磨き・メンテナンス〔歯を長く持たせる〕  | 第4節 メンテナンスと口臭〔体臭と口臭の問題/他人に不快感の悪臭〕  | 第5節 歯周病が引き起こす病気〔原因は歯周病だった〕

これまで生活習慣病として、癌、心臓病、脳卒中、糖尿病等が知られていますが、歯周病も生活習慣病との考え方が歯科医などの間に広がっています。口の中を不潔にしておくと、歯と歯ぐきの境目に細菌が繁殖し、歯ぐきが炎症を起こして歯周病になります。歯槽膿漏も歯周病の一つです。この結果、食事の際に間違って大量の細菌が気道に入り肺炎が起こり易くなります。(嚥下性肺炎)歯槽膿漏の口臭の酷い人は、やがて心筋梗塞や糖尿病になるでしょう。

最近の米国の研究では、歯周病にかかっている人は歯周病でない人に比べますと心筋梗塞などの心臓病になる危険性が3倍も高いとの報告も出ています。歯周病をもたらす細菌の毒素が血管内に入ると、血栓(血のかたまり)が出来易く、これが心臓周囲の冠動脈血管に詰まって心臓病が起きやすくなるのではないか、と説明されています。

また、この毒素が血液の中に入り込むと、インスリンの働きを弱めて糖尿病を悪化させたり逆に、糖尿病の患者は歯周病になりやすいことも知られています。この他、歯周病を放置したまま妊娠すると早産、低体重児出生の危険が指摘されたり、骨粗鬆症との関係もあります。

歯茎が腐って(昔の歯槽膿漏)細菌だらけの膿となって、血液の中に入り込み、これが全身に廻って悪影響を与えるのです。そこで歯周病の予防と対策は、毎日のこまめな歯磨きでかなり予防ができます。お口のお手入れも生活習慣として身につけましょう。

◆歯周病のセルフチェック~思いあたる症状をチェックしましょう!~

  • 朝起きたとき、口の中がネバネバする。
  • ブラッシング時に出血する。
  • 口臭が気になる。(自分では気付かないのです)
  • 歯肉がむずがゆい、痛い。
  • 歯肉が赤く腫れている。(健康的な歯肉はピンク色で引き締まっている)
  • かたい物が噛みにくい。
  • 歯が長くなったような気がする。
  • 前歯が出っ歯になったり、歯と歯の間に隙間がでてきた。食物が挟まる。
  • 上記の項目3つ当てはまる:油断は禁物です。歯医者さんで予防に努めましょう。
  • 上記の項目6つ当てはまる:歯周病が進行している可能性があります。
  • 上記の項目全て当てはまる:歯周病の症状がかなり進んでいて危険な状態です。

◆歯周病(歯槽膿漏)ってどんな病気?

歯周病は、細菌の感染によって引き起こされる炎症性疾患です。歯と歯肉の境目(歯肉溝)の清掃が行き届かないでいると、そこに多くの細菌が停滞し(歯垢の蓄積)歯肉の辺縁が炎症を帯びて赤くなったり、腫れたりします。(痛みはほとんどの場合ありませんが臭います)

そして、進行すると歯周ポケットと呼ばれる歯と歯肉の境目が深く陥没して、歯を支える土台である歯槽骨が溶けて歯が動くようになり、最後は抜歯をしなければいけなくなってしまいます。虫歯で痛いときには歯医者さんへ行くでしょう。ところが、歯周病では気付かないものです。口臭を指摘されたり、一気に歯が抜け落ちたりする前に歯医者さんで治療しましょう。

  • 第1節 歯周病の原因〔毎食後の歯磨き習慣〕

    <歯周病の原因>

    お口の中にはおよそ300~500種類の細菌が住んでいます。これらは普段あまり悪いことをしませんが、ブラッシングが充分でなかったり、砂糖を過剰に摂取すると細菌がネバネバした物質を作り出し、歯の表面にくっつきます。これを歯垢(プラーク)と言い、粘着性が強くうがいをした程度では落ちません。

    この歯垢(プラーク)1mgの中には10億個の細菌が住みついていると言われ、虫歯や歯周病をひき起こします。 その中でも歯周病の細菌が特異的に存在していることが解明されています。

    <歯垢⇒歯石>

    歯周病とは、この歯と歯茎との間に残された歯垢(プラーク)の中の細菌によって歯肉に炎症をひき起こし、やがては歯を支えている骨を溶かしていく病気のことで、結果的に歯を失う原因となります。この歯垢(プラーク)は取り除かなければ硬くなり、やがて歯石と言われる物質に変化し歯の表面に強固に付着します。これはブラッシングだけでは取り除くことができません。この歯石の中や周りに更に細菌が入り込み、歯周病を進行させる毒素を出し続けます。

    次のことも歯周病を進行させる因子となります。

    • 歯ぎしり、食いしばり、噛みしめ
    • 不適合な冠や義歯
    • 不規則な食習慣
    • 喫煙
    • ストレス
    • 全身疾患(糖尿病、骨粗鬆症、ホルモン異常)
    • 薬の長期服用

    <歯周病の進行過程>

    健康な歯肉↓
    ・薄いピンク色の歯肉。
    歯と歯の間に歯肉が入り込んで弾力がある。
    歯肉が引き締まっている。
    ・ブラッシングでは出血しない。
    歯肉炎↓
    ・赤色の歯肉。
    歯と歯の間の歯肉が丸みを帯び膨らんでいる。
    ・ブラッシングで出血する。
    ・腫れた歯と歯肉との間に歯垢が溜まり悪化する。
    歯周炎↓
    ・赤紫色歯肉
    歯と接している歯肉が更に腫れる。
    ・ブラッシングで出血や膿がでる。
    歯と歯の間が広がり、食べ物もよく詰まる。
    歯肉が退縮して歯が長く見える。
    歯周ポケットが深くなり骨(歯槽骨)が溶ける。
    各種の病気を併発し悪化させる!周囲に不快な口臭を発散させる!
  • 第2節 歯周病の治療〔急速な治療法の進歩〕

    現在では歯周病は、予防でき治療も可能です。大切なのは予防、診断、治療、そしてメンテナンスです。2000年代から歯周病治療は急速な進歩を遂げました。以前は「不治の病」とさえ言われていた歯周病も、現在では進行を阻止することが可能となり、健康を取り戻すことができます。先ず、歯周病の原因は歯垢ですから、それを溜めない、増やさないことが基本です。

    その為に:

    • 正しい歯ブラシの方法で毎日実行することです。歯の表面を歯垢のない清潔な状態にしておく事が何より大切なことです。
    • 歯肉の中まで入っている歯石を完全に取り除き、さらに根の表面を滑らかにして炎症を引き起こす細菌を徹底的に除去することです。
    • 健康の保持のため歯科衛生士による専門的なクリーニングなどのメインテナンスを定期的に受けることです。
    • 傷んだ歯肉、骨を治療して健康に近い歯肉にすることです。

    歯周病の恐ろしい点は、初期や中期には痛みをあまり感じることがなく、症状がどんどん進むことです。痛みや腫れの症状が出てくるのは末期になってからで、それまでは殆ど自覚症状ありません。 これがこの病気の最大の特徴で、また一番恐いところです。

    歯周病は、おもに歯肉が歯に接する付近に存在する歯垢中の細菌が原因で進行します。歯肉と歯の間にできたポケットといわれるスペースが歯周病が進行するにつれ深くなり、細菌の増殖する空間が増え、歯肉を腫らし骨を溶かし、やがて歯は抜けてしまいます。歯周病は、その進行の程度により、いくつかの治療が適応されます。

    1)基本治療

    歯周病の進行の程度にかかわらず、初めに行われるべき治療が歯周基本治療です。原因である歯垢の除去および歯石の除去、歯の根の面の滑択化、ぐらぐらする歯の咬み合わせの調整などです。歯垢の除去をプラークコントロールといい、その殆どはご自宅でのセルフチェックとなります。場合によっては、歯科医院で器械的に行うこともあります。

    スケーリングは歯の表面や根の表面の歯垢歯石を器械で取除く事です。ルートプレーニングは、歯の表面がざらざらしたり、歯石で満たされていたり、毒素や微生物で汚染された表層を除去する方法で、多くの場合スケーリングと同時に行われます。

    また、歯周病の進行に伴い歯は動いてきますが、動いている歯で噛むとさらに負担が増すため、その負担を軽くするために歯を削るなどして咬み合わせの調整を行います。それでもぐらぐらして噛みづらい場合は歯科用の接着剤で隣の歯と接着し、ぐらぐらを抑えていきます。

    これら基本治療により歯周組織が改善され、ポケットの深さが浅く(2~3mm)維持されれば、メインテナンス(定期検診)に移行します。

    2)歯周外科療法(再生療法)

    基本治療で一部ポケットの深さが改善されず、ポケット内で細菌が生息し、ブラッシングで除去できない状態や、歯周病の進行が進んでしまった状態に対して外科的にポケットの深さを減少させる手術があります。

    また、特殊な材料を用いて部分的に失われた骨を再生させる手術(再生療法)を行う場合もあります。手術はそれぞれの病態にあった方法が適応されます。ポケットが改善されれば、メインテナンスに移行します。

  • 第3節 歯磨き・メンテナンス〔歯を長く持たせる〕

    <ブラッシング>

    ブラシの毛先があたっていなければ、プラーク(歯垢)はとれません。自分では磨いている積りなのに磨けていない人の殆どが、磨きたい所に毛先を当てられない人なのです。

    <磨き方のポイント>

    毛先を磨くポイントに、確実に、当てましょう。
    最初は、鏡を見ながら毛先が届いていることを確認するのも良いでしょう。
    動かし方は?
    小さく横にでも、縦にかき出す様にしても、円を描く様にしても、良いと思います。要は、 歯と歯肉を傷つけることなくプラークを落とすことができれば良いのですから。
    軽く磨く様にしましょう。
    力を入れて磨くと歯ブラシの毛先が開いてしまいプラーク(歯垢)が落とせません。更には歯や歯肉を痛めてしまいます。力の目安は、毛束がまっすぐなまま歯面に当たる程度で良いのです。
    細かく動かしましょう。
    毛先を使って磨く方法がプラークの除去には効果的です。 ついつい大きく動かしがちですが歯には凸凹があるため小刻みに動かさないと、引っ込んだ所には毛先がとどきません。 特に裏側や歯と歯の間を磨く時は、大きく動かすとせっかく入った毛先が出てしまいます。
    1ヶ所につき10回~20回ぐらい磨きましょう。
    プラークは粘着性が高いため、1~2回歯ブラシを動かした程では落としきれません。1日に最低1度は、時間(5分以上)をかけてゆっくりと隅々の歯垢を取り除いて下さい。可能であれば、毎食後磨くことが理想です。特に、寝る前に丁寧にゆっくりと磨くことです。

    <歯のメインテナンスの概要>

    メインテナンスとは歯周病を再発させず、健康な状態を維持していくための定期的な治療のことです。治療が終了した後は、3~6ヶ月ごとの定期検診の受診をお勧めします。歯周病は細菌の感染によって引き起こされる炎症性疾患です。歯と歯肉の境目(歯肉溝)の清掃が行き届かないでいると、そこに多くの細菌が停滞(歯垢の蓄積)し、歯周病が再発します。

    従って、この細菌の停滞(歯垢の蓄積)を除去し続けることで歯周病の再発を予防することができ、お口の健康を維持することができます。細菌の集団である歯垢(プラーク)は、毎日の適切なブラッシングでほとんど除去することが出来ます。しかし、深い歯周ポケットの中や歯並びの悪い所にある細菌はブラッシングでは除去できません。これらは歯科医院にて専門的なクリーニング(PMTCと言います)を行なうことによって除去することができます。

    歯周病は再発の多い病気といわれています。治療により症状が改善したとしても、そこは、一度歯周病に侵されたところです。治ったとしても溶けてしまった骨が完全に元通りに戻るわけではなく、殆どが歯と歯肉がそっと寄り添うような形で治っているのに過ぎません。油断は禁物です。ブラッシングが不十分であったり、メインテナンスを怠ると細菌が活動しはじめ歯周ポケットが深くなります。そして容易に再発をおこします。

    また、残念ながら治療に限界があるために、部分的に治りきらないところが残ることもあります。しかし、そのような部位でもメインテナンスを継続することにより、歯周病の進行を食い止めることができます。

  • 第4節 メンテナンスと口臭〔体臭と口臭の問題/他人に不快感の悪臭〕

    欧米では歯周病を「静かなる疾患」と呼びます。これは患者さん自身が再発や進行を自覚する事が困難であると言う事です。したがって、歯を失わないためにもトラブルを感じなくとも定期的に歯科医院で、歯のメインテナンスを受けることが必要なのです。

    <歯のメインテナンス>

    • 歯周精密検査
      • X線検査
      • 歯周ポケットの測定
      • 動揺度の検査 2.ブラッシングの再確認
    • ブラッシングの再確認
    • 噛み合わせのチェック
    • 生活習慣指導
    • トゥース・クリーニング(いわゆる歯石除去)
    • 抗菌剤の塗布、フッ素塗布など

    <口臭って何?>

    人それぞれ体に匂いがある様に、口の中にも匂いがあります。正常な匂いの場合、生理的口臭と言います。それが、病気やその他の原因で(多くの場合、口の中に原因が在ります)他人に不快な気持を与える匂いとなる場合があります。それを口臭と称します。自分以外の人の感じ方で、口臭かそうでないかが決まります。では、口臭の原因について見てみましょう。

    <口臭の原因>

    口臭の原因として、次の4つが考えられます。

    1)口腔(口の中)が原因

    口腔で一番考えられるのは歯周病です。過去の研究で歯周病と口臭の間には高い相関性がある事が知られています。(歯周病と言うよりも歯槽膿漏と漢字で書けば、膿の字があります)歯周病の特徴は歯周ポケットができることです。これは口の中の細菌の格好の住み家です。

    細菌の中でも嫌気性菌は代謝の過程で硫化水素やメチルメルカプタンを産生します。これが口臭の元になります。客観的に口臭の度合いを測定する装置がありますので、調べてもらうとよいでしょう。また、歯周病のチェックも必要です。

    ◆お口の中チェック

    1.歯ぐきからよく出血する。歯周病が原因です。歯周病で口腔内細菌で分解された物質が悪臭を放つ
    2.歯ぐきがよく腫れる。
    3.口の中がネバネバする。
    4.グラグラした歯がある。
    5.歯と歯の間に食べ物がよくはさまる。
    6.穴のあいた歯がある。虫歯で食べ物が腐敗する
    7.歯の表面を舌でさわるとザラザラしている。歯磨き不良により、歯垢や食物残渣で臭い
    8.義歯、ブリッジ、冠などが、入っている。
    9.舌を磨いたことがない。
    10.口の中がパサパサしている。唾液が少ない口腔乾燥症

    2)全身の病気が原因

    次の表に示すような臭いが感じられることがあります。

    呼吸器系(肺癌、肺腫瘍)タンパク質の壊疽臭
    消化器系(胃癌、食道気管)甘い匂い
    耳鼻咽喉系(扁桃炎、咽頭膿瘍、咽頭癌)
     咽頭、気管支、肺のカンジタ感染
    糖尿病アセトン臭
    肝硬変、肝臓癌アンモニア臭
    トリメチルアミン尿症魚臭

    癌に罹っているかどうか、最近では犬が臭いを嗅いで見分ける方法も取られているのは、これらの臭いを感じとっているのでしょう。

    3)食餌性の口臭

    ニンニク、ニラ、ネギ、沢庵、酢ラッキョウ、納豆など、臭いの強いものを食べたり、アルコールや喫煙によりいったん体内に取り込まれた臭いの元になる成分が胃の中で消化され、血液を介して全身に循環し肺を経由して吐き出される。お口を綺麗にしても臭うことがある。

    4)生理的口臭が原因

    朝起床時や空腹時に臭うことがあります。女性の場合は、生理時やその前後ホルモンバランスの不調により口臭を感じるときがあるのです。

    上記の3)と4)は、通常そのような臭いは時間の経過と共に減少していきます。この様に生理的口臭には日内変動がみられますが、ゼロ(無臭)になるということはありません。私たち人間は生きている限り、毎日食事をし、口の中では様々な代謝が行われているので、無臭でいることはありえません。ですから、あまり神経質になる必要はなく、他人を不快にさせるような強い臭い(膿の腐った臭い)がでないように気をつければいいのです。

    問題となるのは、病気によって発生する口臭です。口の中の病気、鼻のどの病気、呼吸器系の病気、消化器系の病気などが口臭と関連していると考えられています。口の中の原因が、口臭全体の90%以上です。口臭が気になったら、先ずは歯科医院で相談されると良いでしょう。

    <気になる口臭、なんとかならない?>

    臭いの強いものを食べたら、歯だけでなく舌も磨くとよいでしょう。他人の口臭は気になるものですが、自分の口臭となると、たいてい自分では気づかないものです。外出先でマウススプレーやマウスウォッシュを利用することもお勧めします。営業マンで顧客と会話する際に、相手方に不愉快な気持ちにさせたら営業行為も失敗します。これは飲食業などでも腋臭の酷い悪臭では、お店のマイナス効果と同じです。

    普段気になるようでしたら、お口のお手入れ不足か、舌に汚れが付着していることも考えられます。口臭の大きな原因は歯周病を起こす細菌によるものです。歯垢を染め出して磨き残しをチェックするか、舌の表面が白色、茶褐色または黒色になってないか確認してみましょう。丁寧な歯磨きと、1週間に1回、舌を専用ブラシ(タンクリーナー)でお手入れしましょう。

  • 第5節 歯周病が引き起こす病気〔原因は歯周病だった〕

    <歯周病と全身疾患>

    歯周病は細菌の感染症です。生活習慣病とも言われ、タバコ、ストレス、悪習癖など歯周病を悪化させる因子は様々ですが、その直接の原因となるのは細菌です。歯周病を悪化させる細菌の種類は解明されており、それらはお口の中の常在菌とは違います。

    近年、歯周病と全身疾患の密接な関係が明らかにされいます。歯周病の原因菌は、お口から体内に侵入することで、様々な疾患を引き起こします。体内に細菌が侵入する経路の殆どは、お口を通して起こります。お口の中を綺麗にし、歯周病を治療し予防することは、全身疾患の予防にも繋がるのです。義歯に付着する汚れの正体も、歯周病の細菌とほぼ同じです。義歯を綺麗に保つ事も全身の健康のためには大切です。

    <歯周病と関連のある全身疾患>

    • 糖尿病
    • 心臓疾患や動脈硬化や脳血管疾患
    • 肺炎
    • 低体重児出産・早産
    • 骨粗鬆症、腎炎、関節炎 etc

    ◆糖尿病

    糖尿病と歯周病の関係は特に密接です。糖尿病を治療することで歯周病が改善しますが、逆に、歯周病を治療することで糖尿病が改善すると言われています。

    ◆心臓疾患や動脈硬化や脳血管疾患

    歯周病の原因となる細菌の毒素が、血流に乗って血管に作用し動脈硬化を引き起こします。また、それにより心臓疾患も引き起こすと言われています。

    ◆肺炎

    誤嚥によって歯周病の細菌が肺に入り、肺炎を引き起こします。

    ◆低体重児出産

    歯周病になると体内に産生される物質が血流を渡って胎盤に流入し、早産を引き起こします。

    ◆骨粗鬆症、腎炎、関節炎

    女性の閉経(女性ホルモンの関係)後から、増骨細胞と破骨細胞とのバランスが崩れて骨粗鬆症が始まります。これすらも歯周病が大きく関与しています。

    以下、次ページから関連する全身疾患について簡単に説明します。単なる歯の問題や口臭問題が恐ろしい病気へ気付くための重要な予兆だったのです。

    <血管内に発生するプラーク>

    動脈硬化は、不適切な食生活や運動不足、ストレスなどの生活習慣が要因とされていましたが、別の因子として歯周病原因菌などの細菌感染がクローズアップされてきました。歯周病原因菌などの刺激により動脈硬化を誘導する物質が出て血管内にプラーク(粥状の脂肪性沈着物)が出来て、血液の通り道は細くなります。プラークが剥がれて血の塊が出来ると、その場で血管が詰まったり、血管の細いところで詰まります。

    狭心症・心筋梗塞

    動脈硬化により心筋に血液を送る血管が狭くなったり、ふさがってしまい心筋に血液供給がなくなり死に至ることもある病気です。

    脳梗塞

    脳の血管のプラークが詰まったり、頸動脈や心臓から血の塊やプラークが飛んで来て脳血管が詰まる病気です。歯周病の人はそうでない人の2.8倍脳梗塞になり易いと言われています。血圧、レステロール、中性脂肪が高めの方は、動脈疾患予防のためにも歯周病の予防や治療はより重要となります。

    心血管系疾患

    その昔、アメリカで有名な雑誌の表紙をかざったショッキングなタイトルが Floss or Dieで、歯周病を治療するのを選ぶか死を選ぶか、という歯周病と心血管系疾患の関係を扱った内容のものでした。原因として考えられたのは、歯周病源菌が体内に入り込み、血液にのって運ばれ、体の他の部分に血栓を作るという推論でその後も、アテローム性動脈硬化症や心筋梗塞といった心血管系疾患と歯周病との関連性を扱った研究が多数寄せられました。

    統計学的に重度の歯周病患者は、心血管系疾患になる確率が健常者の1.5~ 3倍であることが報告され、以後、生物学的に、臨床的に、微生物学的に研究が進められてきました。賛否両論寄せられましたが、総合的に解釈すると双方の病気に何かしらの関係はあるようです。しかし、直接的な因果関係の有無を見つけるのは難しいようでした。ところが、2009年7月時点のアメリカ歯周病学会と心臓病学会が出した統一見解としては、この二つの病気の関連性を強く疑われ、内科的な治療と歯科的な治療の両立が大事なようです。

    糖尿病

    歯周病は以前から、糖尿病の合併症の一つと言われてきました。実際、糖尿病の人はそうでない人に比べて歯肉炎や歯周炎に罹っている人が多いという疫学調査が複数報告されています。

    • 強く疑われる人=約890万人
    • 可能性を否定できない人=約1320万人  合計で2210万人いると推定される。

    更に最近、歯周病になると糖尿病の症状が悪化する、という逆の関係も明らかになってきました。つまり歯周病と糖尿病は、相互に悪影響を及ぼしあっていると考えられるのです。

    歯周病治療で糖尿病も改善することも分かってきています。歯周病菌は内毒素(細菌の細胞壁に含まれる毒物、細菌が死滅しても毒は残り、エンドトキシンともいう)をまき散らす歯周病菌は、腫れた歯肉から容易に血管内に侵入し全身に回ります。

    しかし、歯周病菌の死骸の持つ内毒素が体内に残り、血糖値に悪影響を及ぼします。血液中の内毒素は脂肪組織や肝臓からのTNF-αの産生を強力に推し進めます。TNF-αは、血液中の糖分の取り込みを抑える働きもあるため、血糖値を下げるホルモン(インスリン)の働きを邪魔してしまうのです。

    歯周病の治療による血糖コントロールへの影響

    歯周病を合併した糖尿病の患者さんに抗菌薬を用いた歯周病治療を行うと、血液中のTNF-αの濃度が低下するだけではなく、血糖値のコントロール状態を示す HbA1c値も改善するという結果が得られています。

    日本における糖尿病患者は、潜在的な患者数も含めると、成人の5~6人に1人という統計データが厚労省によって明らかにされています。(本当は潜在的に日本人の100%が因子持ち)糖尿病は、網膜症や腎症等のさまざまな合併症を引き起こすことで知られています。歯周病もその内のひとつです。

    アメリカ歯周病学会も過去50年に渡って、歯周病に対する糖尿病の影響を研究してきました。その結果、糖尿病に罹ると歯周病になり易くなったり、歯周病になった場合、重症化する頻度が高いということがわかっています。また、糖尿病患者は、実際の歯周病の治療効果が上がりにくいということもわかっています。そこで糖尿病と歯周病の両方に罹っている方は、内科の先生と連携した総合的なアプローチが必要となります。

    また、「歯周病の治療をすると、糖尿病が改善するのか」といった疑問が寄せられ、実際に歯周病の治療をした後、血糖値が改善したとの研究報告が複数発表され、注目を浴びました。しかし、その後の研究では、改善しない場合も見つかり、今のところ、歯周病が治ると糖尿病が治るとは必ずしも言えないようです。しかしながら、歯周病治療と糖尿病の治療の両立は、両方に良い影響があるのが確かなようなので総合的に治療を勧めます。

    毎日の食生活を含めた生活習慣を見直し、歯周病を予防する事が全身の生活習慣病を予防する事につながります。歯医者は口腔内の変化をみる事のできるプロです。口腔ケアも自分一人できちんと行うのは難しいと言われています。半年に一度は歯科医を受診し、生活習慣も含め口腔内のケアを受けるようにしてください。

    妊娠

    一般に妊娠すると歯肉炎に罹り易くなると言われています。(妊娠性歯肉炎)これには女性ホルモンが大きく関わってきます。特に、エストロゲンという女性ホルモンがある特定の歯周病原細菌の増殖を促すこと、また、歯肉を形作る細胞がエストロゲンの標的となることが知られています。その他、プロゲステロンというホルモンは、炎症の元であるプロスタグランジンを刺激します。

    これらのホルモンは妊娠終期には月経時の10~30倍になるといわれており、このため妊娠中期から後期にかけて妊娠性歯肉炎が起こり易くなるのです。ただ、基本的には歯垢が残存しない清潔な口の中では起こらないか、起こっても軽度ですみますので、妊娠中は特に気をつけてプラークコントロールを行いましょう。油断すると出産後に本格的な歯周病に移行する場合もありますので、注意が必要です。

    また、まれに妊娠性エプーリスという良性腫瘍ができる場合もありますので、その場合は掛り付けの歯医者さんにお早めに受診してください。歯周病の膿病原菌は、妊娠中の胎児にまで早産化の影響を与えます。

    低体重児早産

    近年、さまざまな歯周病の全身への関与がわかってきました。なかでも妊娠している女性が歯周病に罹患している場合、低体重児および早産の危険度が高くなる事が指摘されています。これは口の中の歯周病細菌が血中に入り、胎盤を通して胎児に直接感染するのではないか、といわれています。その危険率は実に7倍にものぼるといわれ、タバコやアルコールや高齢出産などよりもはるかに高い数字なのです。

    歯周病は治療可能なだけでなく、予防も十分可能な疾患です。産まれてくる元気な赤ちゃんのためにも確実な歯周病予防を行いましょう。

    誤嚥性肺炎

    誤嚥性肺炎とは、食べ物や異物を誤って気管や肺に飲み込んでしまう事で発症する肺炎です。肺や気管は、咳をすることで異物が入らないように守ることができます。しかし、高齢者になると、これらの機能が衰えるため、食べ物などと一緒にお口の中の細菌を飲み込み、その際むせたりすると細菌が気管から肺の中へ入ることがあります。その結果、免疫力の衰えた高齢者では誤嚥性肺炎を発症します。特に、脳血管障害の見られる高齢者に多くみられます。

    誤嚥性肺炎の原因となる細菌の多くは、歯周病菌であると言われており、誤嚥性肺炎の予防には歯周病のコントロールが重要になります。

    骨粗鬆症

    骨粗鬆症は、全身の骨密度が低下し、骨がもろくなって骨折しやすくなる病気で、日本では推定千万人以上いると言われています。そして、その約90%が女性です。骨粗鬆症の中でも閉経後の骨粗鬆症の中でも閉経後骨粗鬆症は、閉経による卵巣機能の低下により、骨代謝に関わるホルモンのエストロゲン分泌の低下により発症します。

    閉経後骨粗鬆症の患者さんで歯周病が進行しやすい原因として、最も重要と考えられているのがエストロゲンの欠乏です。エストロゲンの分泌が少なくなると、全身の骨がもろくなるとともに、歯を支える歯槽骨ももろくなります。また、歯周ポケット内では、炎症を引き起こす物質が作られ歯周炎の進行が加速されると考えられています。

    多くの研究で、骨粗鬆症と歯の喪失とは関連性があると報告されています。従って、閉経後の女性は、たとえ歯周炎がなくてもエストロゲンの減少により、歯周病に罹り易く、広がり易 い状態にあると言えます。また、骨粗鬆症の薬としてよく用いられるビスフォスフォネート製剤(BP系薬剤)というのがあり、これを服用している方が抜歯などをした場合、周囲の骨が壊死するなどのトラブルが報告されています。歯周病でぐらぐらしているから自分で抜く、などという事は絶対に行わないようにして下さい。抜歯の際は必ず服用薬を医師に示して下さい。

    歯周病と骨粗鬆症との関係を示した研究は多数あり、骨密度の低下により、歯がなくなる可能性は、高いようです。骨粗鬆症治療薬の服用やカルシウムの摂取により、歯周病の進行が遅くなるという研究も発表されています。

    あくまでも、歯科医師による歯周病治療と併用するのが条件ですが骨粗鬆症の治療は、歯周病治療にも良い影響を与えるようです。しかしながら、歯周病治療の中には、外科的治療が必要なものもあり、ある種の骨粗鬆症の治療薬は、外科的治療後の治りを阻害する事もあります。

    ※どういった骨粗鬆症の薬を、いつ頃から飲んでいるのかを、正確に歯科医師に伝える事!

    関節炎・腎炎

    関節炎や糸球体腎炎が発症する原因の一つにウィルスや細菌の感染があります。関節炎や糸球体腎炎の原因となる黄色ブドウ球菌や連鎖球菌の多くは、歯周病原性細菌など口腔内に多く存在します。これらのお口の中の細菌が血液中に入り込んだり、歯周炎によって作り出された炎症物質が血液に入り込むことで、関節炎や糸球体腎炎が発症することがあります

    メタボリックシンドローム

    メタボリックシンドロームとは、内臓脂肪蓄積を臍部の内臓脂肪面積 100㎠以上と定義されウエスト周囲径が男性で85㎝、女性で90㎝以上を基盤とし、さらに、血中脂質異常や高血圧や高血糖の3項目のうち2つ以上に異常所見が見られる病態です。

    大きな特徴は内臓脂肪を基盤とすることであり、高血圧、高血糖、脂質異常の値がさほど高くなくても脳卒中や心筋梗塞の危険性が高くなります。未だ詳しいメカニズムは解明されていませんが歯周病の病巣から放出されるLPS(歯周病菌由来の毒素)やTNFαは脂肪組織や肝臓のインスリン抵抗性を増加させ、血糖値を上昇させます。

    2節図3

    また、重度歯周病患者では血中CRP値が上昇し、動脈硬化や心筋梗塞発症のリスク亢進と密接に関与すると考えられています。更には、この慢性炎症が個体の老化を促進するという論文も出ました。このように歯周病とメタボリックシンドロームの関連性が注目されています。

    <メタボ判定>

    内臓脂肪の蓄積:ウエスト周囲径(男性85cm以上、女性90cm以上)

    以下の1項目を満たす場合を予備軍、2項目以上を強く疑われる者とする。

    • 血圧)収縮期血圧が130mmHg以上で拡張期血圧が85mmHg以上
    • 血糖値)HbAlc5.5%以上
    • 血中脂質)HDLコレステロール40mg/dl未満

    口腔乾燥症

    通常、健康な人で一日1~ 1.5リットルの唾液が分泌されていますが、その唾液が不足するドライマウスが最近急増しています。

    ここで唾液の役割について説明しましょう。

    1.消化作用
    唾液の酵素でデンプンをマルトースに分解する。
    2.溶解作用
    味物質を溶解して味覚を促進させる。
    3.洗浄作用
    食べ物のカスを洗い流す。
    4.円滑作用
    発音や会話をスムーズにする。
    5.抗菌作用
    抗菌作用を持つ物質で病原微生物に抵抗する。
    6.緩衝作用
    phを一定に保ち細菌の繁殖を抑える
    7.保護作用
    歯の表面に皮膜を作り虫歯を防ぐ。

    唾液は多くの重要な役割を果たしているのです。その唾液が不足するとどうなるのか?常に口の中が乾燥していると虫歯や歯周病になり易かったり、舌の痛み、口臭の原因、物がうまく飲み込めない、口が乾いて話しにくい等、様々な症状を引き起こす原因になります。では、ドライマウスの原因は何でしょうか?

    加齢とともに唾液の分泌は少なくなるとも言われます。薬の副作用や糖尿病や腎不全などの全身疾患、ストレス、喫煙、シェーグレン症候群など複合的な事が考えられます。薬の副作用や全身疾患やシェーグレン症候については未だわからないことも、多いようです。

    それではストレスに関してはどうでしょう。ストレスをかけるとリラックス時に比べ、唾液の分泌が約3割減少するといわれています。なぜ唾液が減ったのでしょうか?緊張すると、リラックス時とは違う物質が神経から出てきて、唾液を作る細胞にくっつきます。この物質は、リラックスした時に出る物質に比べ、唾液を作る細胞のなかに水分を取り込む働きが小さい為作られる唾液は少なくネバネバしたものになるのです。

    一時的なストレスなら問題ありませんが、ストレスが長期にわたって続くと、自律神経が失調し唾液の分泌が抑えられてしまうのです。ストレスとは厄介な現代病ですがストレス(いろんな病気の危険因子)とうまく付き合いリラックスするには『笑い』を生活の中に取り入れる事で、確実に免疫力のアップにつながるようです。

    食生活でも気を付けなければいけない事があります。軟らかいものばかり食べていると、よく噛む事をしなくなるので、口の周りの筋力が衰え唾液の分泌が減少する原因になるのです。お口の健康が重要な鍵を握っているのです。もう一度お口の健康を確認してはいかがですか?

    タバコ

    ご存知ですか?タバコがお口の健康にも良くないって事を!タバコの煙には、数千もの化学物質が含まれていて、そのうちニコチンや発癌性物質などの有害物質は200とも300とも言われます。喫煙者は、お口が臭い、ヤニがついて汚い、だけではなく歯周病(歯槽膿漏)に罹りやすく、酷くなりやすいので、更に治療しても治りにくいことが解っています。

    ある統計データによると、歯周病にかかる危険は1日10本以上喫煙すると 5.4倍に、10年以上吸っていると 4.3倍に上昇し、また重症化しやすくなります。タバコを吸っていると歯肉の腫れや出血が見た目では抑えられ、患者さん自身が歯周病に気づきにくくもなります。

    実際に治療を始めても歯肉の治りは悪く(勿論何もしないでいるよりは改善しますが)手術を行ったとしても効果の現われ方が非喫煙者よりも低いのです。しかも、治療後経過を追っていくと、喫煙者の歯肉は再び悪くなっていく傾向にあります。

    どうしてこういう事が起こるのでしょうか?タバコの煙に含まれる「一酸化炭素」は、組織への酸素供給を妨げますし、ニコチンは一種の神経毒で、血管を縮ませるので、体が酸欠や栄養不足の状態になります。ニコチンは体を守る免疫の機能も狂わせますので、病気に対する抵抗力が落ちたりアレルギーが出やすくなります。

    更に、傷を治そうと組織を作ってくれる細胞(線維芽細胞といいます)の働きまで抑えてしまうので、手術後も治りにくくなります。また「ヤニ」という形で歯の表面に残っているので、歯がざらざらしてバイ菌が張り付きやすくなるのはもちろん、いつまでもお口の中や歯肉にニコチンが染み出しつづけることになるのです。歯周病の膿とニコチンは悪臭が酷くなる。