第3章 高尿酸血症と痛風〔放置したらどうなるか〕

インデックス 第1節 高尿酸血症ってどんな病気か〔尿酸って何なのか〕  | 第2節 痛風はどんな病気か〔痛風は他の病気の前兆〕  | 第3節 高尿酸血症・痛風の対策〔自分で出来る食生活〕  | 第4節 高尿酸血症・痛風の合併症〔他の病気との関係〕  | 第5節 高尿酸血症の治療〔生活指導か薬物服用〕  | 第6節 高尿酸血症の治療注意〔焦らず慌てず諦めず〕  | 第7節 日常生活の注意点〔殆どの病気で共通〕

高尿酸血症を治療しないで放っておくと、からだの中で多くなった尿酸が溶けきれずに、血流の曲がり角になる関節などで結晶化し、痛風やさまざまな病気になることがあります。時には、腎臓に結晶化して尿路結石や腎障害を引き起こします。

その他にも高尿酸血症の患者さんは高血圧症、資質異常症(高脂血症)などの生活習慣病を合併することが多く、動脈硬化が起こり易くなると言われています。本当に怖いのは、これらから派生する合併症なのです。

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結論を言えば、からだの中の尿酸が多くなる病気です。血液中の尿酸が、正常値の範囲を超えて多い状態を高尿酸血症と言います。高尿酸血症そのものは、何の症状もありません。しかし、放っておくと尿酸が関節や腎臓などで結晶の塊(しかも針状結晶)を引き起こします。

◆定期的に血清尿酸値をチェックして貰う

高尿酸血症かどうか、その診断は血液1dl(100ml)中の尿酸のmg量すなわち血清尿酸値を指標にして行います。血清尿酸値が7.0mg/dlを超えたら、定期的に尿酸値を測定して貰うことが大切です。そして、血清尿酸値が8.0mg/dl以上になったら、必ず医療機関へ行って、血清尿酸値だけでなく腎臓などのチェックを受けましょう。

高血圧や他の生活習慣病を合併していたり、合併症が無くても血清尿酸値が9.0mg/dl以上の場合には薬物治療が必要です。また、血清尿酸値の治療目標値は6.0mg/dl以下にするのが良いとされています。異論もあるようですが、虚血性心疾患や脳血管障害などになり難い、と言われている値です。合併症を発症発病する前に予防をしたいものです。

  • 第1節 高尿酸血症ってどんな病気か〔尿酸って何なのか〕

    ◆尿酸って何?

    尿酸は、からだの細胞の新陳代謝やエネルギーの消費によって出来る老廃物のことです。尿酸の元はプリン体という物質で、細胞や食品中などに含まれています。私達の体内では毎日のように、プリン体から尿酸が作られ、これが腎臓から尿に溶けて排泄されています。

    <尿酸はからだの中で結晶化する>

    尿酸は溶けきれずに結晶化してゆきます。この尿酸の結晶化したトゲだらけの針状結晶が、からだの中の色々な部分に沈着して害を及ぼすのです。

    特に、風が吹いても痛く感じるので「痛風」の名前になった病気が有名です。これは後半で説明いたしましょう。

    そもそも高尿酸血症は、尿酸の産生と排出とのバランスが崩れることで起こります。からだの中では、毎日ほぼ一定量の尿酸が作られる、ほぼ同量が主に腎臓から尿中へ排泄されています。しかし、尿酸が作られ過ぎたり、排泄されにくくなったりして、この産生と排泄とのバランスが崩れると、体内に尿酸の量が増え過ぎて高尿酸血症になります。

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    このバランスが崩れる原因ははっきりと解っていません。生まれつきの体質である場合が殆どで、その他には肥満、飲み過ぎ、食べ過ぎ、ストレス等の要因が関係している言われます。

    <高尿酸血症の3タイプ>

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    自分がどのタイプに該当するのかを調べて貰いましょう。

  • 第2節 痛風はどんな病気か〔痛風は他の病気の前兆〕

    痛風は、尿酸の結晶が関節などに沈着して起こる病気です。痛くて歩けずに、風が吹いて当たっても痛い気がする所から名前が付けられました。別名では贅沢病とも呼ばれたものです。でも、肉食の欧米型食生活もひとつの要因だったのでしょう。

    痛風の発作は、関節部位が赤く腫れあがり激しい痛みを伴うのが特徴です。ある日、突然起こり放っておくと1~2週間くらいで納まります。我慢強く痛みをこらえて、痛みが治ったも安心はできません。放置しておくと数年の内に再発し、徐々に慢性化してゆきます。

    <痛風は他の病気の警鐘>

    発作が治まっている間は何の症状もありません。しかし、放置しておくと尿酸の結晶が関節だけでなく、腎臓にも沈着して腎障害などを引き起こします。また、痛風関節と言われる尿酸の塊が耳や足の親指や肘関節などに出来たりします。痛風はこれらの病気の警鐘の役割をしています。歩くのが困難になって酷い症状に陥りますから笑っておれません。

    <どんな人が痛風に罹るのか>

    痛風に罹るのは殆どが働き盛りの男性です。比較的に几帳面で、行動的な人、仕事をバリバリやる人、アルコール類を沢山飲む人、肉食を好む人、干物を好む人などに多いと言われています。これは20歳代から50歳代に起こりやすく、女性や子供には少ない病気です。

    痛風になりやすいかどうかは、多少は遺伝的な要因が関係しています。また、最近は食生活の欧米化、アルコール摂取量の増加、体型の肥満化、ストレスの増加など環境要因の多様化によって、患者さんの若年化が進んでいます。

    <高尿酸血症と痛風の関係>

    今までの説明で明らかな様に、痛風の患者さんには必ず高尿酸血症が見られます。高尿酸血症が長く続くと、その間に尿酸の結晶化が進み、からだの中で色々な悪影響を与えて進行します。そのひとつが痛風なのです。したがって、痛風の人は必ず高尿酸血症なのです。

    逆に、高尿酸血症だからといっても必ずしも痛風とは限りません。現在では、健康診断やドックなどで統計によれば成人男性全体の10%程度の人は、尿酸値が高いといわれています。

    それでは「高尿酸血症・痛風」と診断されたらどうするのか?その治療法および日常生活上の注意点について以降で説明します。

  • 第3節 高尿酸血症・痛風の対策〔自分で出来る食生活〕

    医師から高尿酸血症とか痛風と診断されたら、先ずは食事内容から見直して改善します。

    • 総カロリーを制限する
    • 標準体重にコントロールする
    • 乳製品を多く取る

    などがポイントです。肥満の人ほど血清尿酸値が高いものです。体重が下がれば血清尿酸値も下がります。従って、カロリーの摂り過ぎに注意して、肥満を避けて標準体重へコントロールすることが重要になります。

    また、体重のコントロールは、高尿酸血症に良いだけではなく、高血圧症や脂質異常(高脂血症)などの合併症の予防や治療にもつながるのです。

    食物食品の中でプリン体を多く含むものは、肉類や内臓類や魚介類や魚卵類です。これらの摂取過剰は、高尿酸血症や痛風になりやすい事が知られています。しかし、最近の研究成果で同じプリン体の食品でも、干し椎茸などの野菜類は殆ど影響しない事が解ってきました。

    特に、低脂肪乳製品や大豆などは、継続的に摂取すると痛風の予防になる報告があります。意識してバランス良く摂取して下さい。ビールとかお酒の制約を知って実行している人も、お酒の肴や食事で鯵の干物を食べたらダメです。干物を止めれば驚くほど数値が改善されます。食事で鯵の干物を食べていたらダメです。干物を止めれば驚くほど数値が改善されます。

    【BMI指数を知ろう】

    BMI指数=体重kg÷身長÷身長m です。

    体重測定は、朝の食事前で排便排尿の後に測定した値が正確です。

    BMI指数は22が理想的体重です。BMI指数が25以上ならば肥満です。

    <食品と痛風発症の関連性>

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    <お酒は控え目に>

    アルコールはどんな種類でも飲み過ぎれば確実に血清尿酸値を上げます。これはアルコールが尿酸の産生を高めたり、尿酸の排泄を抑制するために起こります。また、お酒の中に含まれるプリン体が原因にもなります。落語「お酒を禁止されたから、焼酎に変えたよ!」

    1日の摂取量限度◆ビール500ml
    ◆日本酒約1合
    ◆スピリッツカクテルグラス2杯
    ◆ウイスキー60ml

    <休肝日を週2日以上に>

    お酒を毎日飲む人と、休肝日を設けている人とを比較してみれば、アルコールの摂取総量が同じであっても、毎日飲む人の方が血清尿酸値が高い事が知られています。なるべく、お酒を飲まずに我慢する日を設けましょう。いずれにしても食べ過ぎや飲み過ぎを裂けるべきです。

    ついついカロリー摂取過多になってしまいます。呆れるのは、散々に飲食した後でラーメンで締めくくるなど、自分の不摂生振りを自慢げに話す人、きっと寿命を短くする自殺行為でしょうか。

    <運動で注意すること>

    激しい運動を裂けて、軽い運動から始める事が大切です。慌てて汗をかく激しい運動やスポーツで逆に心臓などへ負担を掛けてはマイナス効果です。肥満を避けるためにも、適度の運動は必要です。水泳、軽いジョギング、早足での散歩、軽いサイクリングなどの有酸素運動は、肥満防止の観点からも必要です。自分に合った運動を定期的に継続しましょう。

    血中の脂肪分が溶け始めるのは、早足散歩の20分後からです。それ以上の時間で、徐々に筋肉内の脂肪分が燃焼して、血液中に溶け始めます。汗が滲む程度を持続するのが大切です。汗を流せば運動をした気になるのは勘違いです。汗をかくのは水分です。また塩っぽい汗は毒素汗です、さらさら汗の方が良い汗なのです。塩吹くまで水分を出すのはいかがなものか。

    <水分補給を忘れずに>

    運動によって大量に汗をかいて、そのままにしたら血液から水分が減って、ドロドロの濃い血液になってしまいます。この状態は極めて危険な状態で、血清尿酸値が上がったり、尿も濃くなって尿酸が融けにくくなります。有酸素運動でエアロビクスをやって汗を沢山かいて喜んでいては危険なのです。汗をかいたら必ず水分を十分にとりましょう。

  • 第4節 高尿酸血症・痛風の合併症〔他の病気との関係〕

    血清尿酸値が高い人は、そうでない人に比べて資質異常症(高脂血症)の割合が高く、血液中のコレステロールや中性脂肪が多いことが解っています。また、高血圧症、脳血管障害、虚血性心疾患との合併が多いことも解ってきました。

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    高尿酸血症や痛風だから、これらの病気に罹るという訳ではありません。しかし、罹り易いリスク因子を持っているので注意しましょう。体質改善こそが予防のための注意です。このように血清尿酸値が高いといろいろな病気のマーカーになりますので、定期的な通院でチェックすることが大切です。治療医学の前に予防医学を勧めます。

    <痛風発作が起こったら>

    発作が起こった部位は、赤く腫れて熱を持ちます。このような場合には、患部を心臓よりも高い位置に保ち、冷やせば痛みは軽減されます。勘違いして温めたりマッサージしたりすればかえって悪化するので避けましょう。冷やすことが先ずは応急処置なのです。

    痛風発作の起こり始めには、患部がむずむずしたり、腫れぼったくなったりする場合があります。この前兆期にコルヒチンを1錠服用すると発作を防ぐことが出来ます。しかし、コルヒチンは起こってしまった発作には効果が期待できません。また、長期的に服用すると重大な副作用を引き起こすので注意が必要です。

    痛風発作が起こったらインドメタシン、オキサプロジン、プラノプロフェン、ナプロキセンなどの消炎鎮痛剤を発作の間だけ短期的に服用します。痛風発作は通常1~2週間で大体は収まります(患者さんの激痛が続くのです)これらの薬を長期間服用し続けることはありません。

  • 第5節 高尿酸血症の治療〔生活指導か薬物服用〕

    食事の調節やアルコール制限などをしても、血清尿酸値が高い人は薬物療養を行います。血清高尿酸値を下げる治療は、痛風発作の痛みを取るだけの対処療法に対して、高尿酸血症や痛風その物を改善する根本療法となります。

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    <尿酸値を下げる薬のタイプ>

    尿酸が排泄されにくいタイプ
    尿酸の排泄を促進する薬
    ベンズブロマロンなど
    尿酸が産生しやすいタイプ
    尿酸の生成を抑制する薬
    アロプリノール、フェブキソスタットなど

    自分の高尿酸血症のどのタイプなのかで薬が違います。当てはまる薬を飲むことによって、効率よく治療することが出来ます。また、副作用の再現を抑えることにもつながります。

  • 第6節 高尿酸血症の治療注意〔焦らず慌てず諦めず〕

    焦らず慌てず諦めずは、病気になった時の心構えです。血清尿酸値は薬によって正常に戻ります。しかし、高尿酸血症そのものは非常に治りにくい病気なので、薬を飲むのを止めると、だいたい2週間で元の高尿酸血症の状態に戻ってしまいます。長い間放置されると尿酸塩の沈着による合併症の恐れがあります。ですから、根気よく薬を飲み続けることが大切です。

    健常者が最も怖い状態を想像すれば、それは光を失うことです。仮に、緑内障の患者さんの場合は、眼圧を下げるキサラタンに代わって、最近では認可されたルミガンという特効薬もできました。

    案1)この目薬を使わなくなったら20年後に完全失明します。
    案2)この目薬を使い続けると今の状態が一生維持できます。

    と、眼科医に薬の使用法を教えられます。どちらの案を選ぶかは患者さんの自由なのです。これと同じで高尿酸血症の場合にも合併症を招くか、罹らないようにするか、患者さんの自由なのです。

    <治療中の注意>

    自分の勝手な判断で薬の服用を中断していて痛風発作が再発したら、慌てて医療機関へ駆け込む患者さんもいます。そんな時には、尿酸値を下げる薬の服用を中断していた事を必ず医師に伝えて適切な処置を受けましょう。

    • 服用中の薬があれば医師に伝える。(おくすり手帳)
    • 何か異常があったら直ぐに医師に相談する。

    <薬の飲み始めに発作>

    尿酸値を下げる薬を飲み始めた途端に痛風発作が再発する場合があります。これは関節などに溜まっていた尿酸が、薬で溶かされて無くなる途中だからです。治療を始めて半年間は、発作が発生することも有ります。こんな場合には、尿酸値を下げる薬を飲みながら、併用して痛みを抑える消炎鎮痛剤を合わせて飲みます。

    尿酸値を下げる薬の服用を中断すると、痛風発作が酷くなる可能性があるので注意しましょう。焦らずゴールを目指すのが大切です。慌てず、焦らず、諦めず・・・

    <尿路管理>

    尿酸は尿に溶けた状態で排泄されます。ところが、尿が酸性であれば非常に溶けにくくなる性質を持っています。そのために、次のような尿路管理が必要です。先ず、水分(水やお茶)を多く飲んで尿の総量を増やします。健康な人の尿量は1日に1~1.5リットルぐらいです。高尿酸血症や痛風の患者さんは1日に2リットルぐらいが良いでしょう。

    重症の腎障害や心臓病などで水分摂取を制限されている患者さん以外は、お茶を飲んだり、多めの水で薬を飲むなど、工夫して水を多く摂取して下さい。

    尿酸は、中性~アルカリ性の尿には溶けやすいのです。尿が酸性の人は、尿をアルカリ性にする薬もあるので、弱アルカリ性のPH7.2~7.8にしましょう。また、野菜や海草や牛乳などのアルカリ姓食品を摂取することを心がけてください。

    酸性(肉類、穀物類)アルカリ性(野菜類、果物類、海草類)

  • 第7節 日常生活の注意点〔殆どの病気で共通〕

    高尿酸血症や痛風の場合に、下記の日常生活上の注意点を励行して下さい。高血圧などの一般的な病気の予防にも有効です。

    <日常生活の注意点>

    • 標準体重を保つ
    • 食事は総カロリーに気をつけ、乳製品を多く摂る
    • お酒は控えめに適量制限に
    • 水分を多く摂る
    • 適度な運動を継続する
    • 医師の指示通りの薬を服用を続ける
    • 定期的に検査を受ける

    薬の副作用をチェックするためにも、尿酸値や肝機能を検査するのが良いでしょう。

    <肝機能チェックのポイント>

    肝臓の働きが低下してくれば、下記のような症状がよく見られます。薬を服用しはじめてから、少なくとも半年間は定期的な通院で肝機能検査を受けて下さい。

    • 尿の色が濃く(茶色)なった
    • 皮膚や白目が黄色くなった(黄疸の疑い)
    • 食欲が無くなった
    • 体がだるくなった(倦怠感など)
    • 体が痒くなった
    • 皮膚に発疹がでた

    この様な症状に気がついたときには、医師または薬剤師にすぐ相談して下さい。