はじめに 

はじめに

人間が生きて行く上で必要な物は、空気と水と食べ物です。特に、食べ物の中でも栄養素を調べて、青果(野菜と果実)に関して下記の分野で執筆予定でした。

  • 病気を予防改善するには、どんな青果があるか
  • その青果を食材に使う、どんな料理があるか
  • その青果を収穫するには、どんな育成があるか

この内で、②は料理(調理)の本が溢れ、③は農業(園芸)の本が溢れています。そのためここでは①に限定して作成しました。

<東洋医学の食養について>

東洋医学(中医学)による食事療法があります。医食同源(身体を温める食品と冷やす食品そして食品の健康への効能)と五味の分類と作用(食味と生活習慣病に効果のある食品)が伝統的に整理されています。 

西洋医学が解剖学と細菌学そして薬学や手術学で発展し、併せて医療機器が科学の発展と共に進化発展して今日に至っています。一方、東洋医学は臨床医学ないし統計医学で発展しています。栄養学も西洋医学と共に発展し、東洋医学の食養も併せながら発達しています。

<医食同源という言葉>

もちろん東洋医学から派生した言葉です。医療と食餌は同じ基盤に立っていると考えられ、中華料理の原点にもなっています。古くは春秋戦国時代にまで遡る考え方(山海経)で、最近では、薬膳と称す食物効能に生薬の薬効を加味して調理し、各種疾病治療や体質改善あるいは疾病予防に役立てる湯液(漢方薬)と食養の折衷的な療法も市民権を得てきました。 

中国近代、「清」の時代まで続いていましたが、御典医の中での最高位は「食医」と言われ皇帝の毎日の食事(薬膳と食物効能を加味して)をもって健康管理にあたっていました。皆さんは満漢全席と呼ばれる贅を尽くした料理をご存知でしょう。 

 

◆満州族と漢民族との融合料理(満漢全席)とは:

清朝の乾隆帝の時代から始まった満州族の料理と漢民族の料理のうち、山東料理の中から選りすぐったメニューを取り揃えて宴席に出す宴会様式である。後に、広東料理など漢族の他の地方料理も加えて、西太后時代になるとさらに洗練されたものとなった。盛大な宴の例では途中で出し物を見たりしながら、数日間かけて百種類を越える料理を順に食べる場合もあったと言われる。 

中国では古来より食べ物が人体にいかように影響するかは、食物の偏嗜や摂取過不足による人体への悪影響、摂取を禁じる疾病、また食品にも各々効能があり、いかに活用すべきかを極めて詳しくまた厳しく論じられていました。

ただ、いわゆる現代医学栄養学(これは食物を摂取するまでの学問)で、個人の体質の差異や消化吸収能力、個々の病態は全く無視されています。科学理論優先の栄養学とは異なり、長期間の経験に基づく、体質と病態重視の実践食事療法なのです。(世界最古の医学書「黄帝内経 素問・霊枢」の生気通天論・五臓生成論・宣明五気論・臓気法時論・五味論・五味篇等) 

基本的には食物には生薬同様に薬性薬味(四気五味)があり、それぞれに応じた効能を有しているとされています。葱や七味唐辛子などを「薬味」と称す語源でもあります。特に、生薬となる薬草を採取する人々は、農民とは別にして神の農民とも呼ばれました。薬膳と並行して薬草も整理されました。 

 

◆神農(神の農民)が採取する髪菜

海藻のもずくに似た茸の一種です。中華人民共和国青海省、陝西省、内モンゴル自治区等の乾燥地の草原で地表に生育します。毛髪状の群体を形成しこの群体は寒天質の基質からなり、この中に細胞が1列に連なり異型細胞を交える数珠状の細胞糸が埋もれています。別名でネンジュモ(念珠藻)の名称は、この細胞糸の形態に由来するそうです。極めて稀な希少金属ならぬ希少茸なので、人民の口に入りません。現在は環境問題もあって採取禁止の品目指定です。因みに海藻のもずくは海髪菜とも呼ばれます。

 
 
 

<四気五味とは>

四気(薬性)の寒・熱・温・涼・(平)とはその食品が摂取後に身体を温める働きが強いか、逆に冷やす働きが強いかを表しています。五味(薬味)の酸・苦・甘・辛・鹹・(淡)とは、その食品が酸っぱいか、苦いか、甘いか、辛いか、塩っぱいかの固有の味覚によって、それぞれ身体に異なる作用を起こすので、体質や、病態によって摂り方を考える事を表しています。 

 
 

<中医食養学による食品の寒熱効能>

下の表を参考にして平素摂取する食品を取捨選択しましょう。 

 

(熱性食品)
身体を温める食品
(寒性食品)
身体を冷やす食品
野菜大蒜(おおびる) 山椒(さんしょう) 胡椒 唐辛子 芥子(けし) (にら) (ねぎ) ラッキョウ 生姜 パセリ 人参 南瓜(かぼちゃ) 春菊 (ふき)・山菜類モヤシ 冬瓜 茄子 アスパラ セロリ チシャ 苦瓜 法蓮草 牛蒡(ごぼう) 胡瓜
果物胡桃(くるみ) トマト 西瓜 バナナ パイン 柚子 レモン 蜜柑 枇杷(びわ) 林檎
肉類羊肉 鶏肉 牡蠣 なまこ マグロ (うなぎ) 雲丹 アサリ 昆布 (はまぐり)
ビール 味噌

日本の女性は冷え性でお困りの方が多いようです。できるだけ身体を温める食品を摂り、寒性食品を避けましょう。調理も生もの特にダイエットのためのサラダ系統は避け、いったん加熱した食品にしすべきです。高熱や微熱が続いている方や咽の渇きが激しく、尿量も少なく色の濃い方なら寒性食品を多く摂るといいでしょう。一般的には、誰でも寒性食品は避ける方が  賢明です。

◆味覚の種類

 

かつて基本的な味の要素として挙げられていたものには、甘味、酸味、塩味、苦味、辛味、渋味、刺激味、無味、脂身味、アルカリ味、金属味、電気の味などがありました。 

 

1901年ヘーニッヒはアリストテレスの示した四つの味の舌の上での感覚領域を示しました。これが従来の舌の味領域です。 

しかし、今日ではこの説は否定されています。1916年ドイツの心理学者ヘニングは、この四つの味とその複合で全ての味覚を説明する四基本味説を提唱しました。ヘニングの説によると甘味、酸味、塩味、苦味の四基本味を正四面体に配し(味の四面体)、それぞれの複合味は、その基本味の配合比率に応じて四面体の稜上あるいは面上に位置づけることができると唱えました。 

 

ところが、日本では1908年に池田菊苗がうま味物質であるグルタミン酸モノナトリウム塩を発見しました。このうま味は四基本味では説明できないため、日本ではこれを基本味とする認識が広まりました。それでも西洋では長らく四基本味説が支持され続け、うま味が認められたのは最近のことです。 

 

現在では味蕾に受容体が存在するものとして定義されており、甘味、酸味、塩味、苦味、うま味の5つが該当し、五基本味と位置づけられています。ここでは、東洋医学の説明に留めて説明します。 

 

◆中医食用学(四気五味説)による食物分類表

いまから2千年以上も前に書かれた現存する最古の薬学書である『神農本草経』には、365種類もの生薬や食材が記載されており、“クスリには酸、苦、甘、辛、鹹(しょっぱい)の五味があり、寒、熱、温、涼の四気がある”と述べられています。 

漢方薬だけでなく、食材にも同じように「四気」や「五味」があり、薬膳ではこれらの食材のもつ特性を活かしながら調理することが大きなポイントになります。

熱 ←→ 寒
酸味 石榴(ざくろ) 米酢 葡萄 (すもも) レモン ヨーグルト 蜜柑 柚子 枇杷(びわ) トマト
苦味(ふき) (よもぎ) 山菜 春菊 ラッキョウ 銀杏 法蓮草 セロリ 牛蒡(ごぼう) チシャ 苦瓜 ビール
甘味人参 南瓜(かぼちゃ) 胡桃(くるみ) 柘榴(ざくろ) 椰子(やし) 海鼠(なまこ) 牡蠣 海老 赤貝 河豚(ふぐ) (うなぎ) マグロ 羊肉 鶏肉 粳米(うるちまい)(玄米) 小麦 胡麻 白菜 大豆 黒豆 山芋 薩摩芋 じゃが芋 蚕豆(そらまめ) 百合根 南京豆 蓮根 無花果(いちじく) 牛乳 牛肉 蜂蜜 豚肉 鶏卵 (うなぎ) 泥鰌(どじょう) 平目 (すっぽん) (すずき) (ぼら) 胡瓜 小麦 セリ モヤシ 針菜 冬瓜(とうがん) 茄子 法蓮草 牛蒡(ごぼう) はと麦 蕎麦(そば) アスパラ 玉蜀黍(とうもろこし) 林檎 西瓜 トマト バナナ (あわび) 雲丹(うに) (かに)
辛味大蒜(にんにく) (にら) (ねぎ) ラッキョウ 唐辛子 芥子(けし) 紫蘇(しそ) 山葵(わさび) 生姜 パセリ 山椒 胡椒 玉葱 春菊 大根 里芋 (かぶ) 大根(夏) 薄荷(はっか)
(から)大麦 海鼠(なまこ) 海老 青魚 (あわび) 烏賊(いか) シジミ ヒジキ 若芽 豚肉 醤油 麦芽 浅利 昆布 (かに) 味噌
 

◆現代中国で臨床経験から生活習慣病に効ありとされる食べ物

       

◇野菜類

玉蜀黍
降圧作用・糖尿食・コレステロールを下げる
落下生
止血作用(落花生のカビには発癌作用) 
酢落花生
高血圧症:7~10粒を酢適量に一日浸け、両方食す
玉葱
降圧作用・降脂血作用 高血圧・動脈硬化・糖尿病に適
大蒜
降脂血作用
イカリ草
精力増強・降圧作用
温中補腎・活血・腎陽虚に適
鳩麦
健脾利湿・除痺鎮痛・鎮痙・制癌作用
蕎麦
高血圧症・動脈硬化症に適
黒豆
補虚養血・利水活血 腎虚に適
大豆
補益脾胃・糖尿病に適
豆腐
高血圧・動脈硬化・糖尿病・肥満症に適
山芋
滋養強壮・健痺・固腎・益精・補肺・血糖値を下げる
胡麻
滋補肝腎・滋補強精・高血圧・動脈硬化・糖尿病に適
高圧解毒
セロリ
降圧作用・降脂血作用が大きい
トマト
高血圧・動脈硬化に適
人参
健脾胃化湿・糖尿病に適
茄子
コレステロールを降下作用
白木耳
滋養強壮・免疫機能増強・抗放射線作用
黒木耳
高血圧症には適
椎茸
補益脾胃・強肝理気・血糖の降下・肝臓保護作用

◇果実類

山査子
降血圧作用・循環器障害に効果
胡桃
滋養強壮効果大きい
西瓜
天性の白虎湯・解熱・止渇・利尿作用
干葡萄
貧血
生津・止瀉
金柑
理気解鬱・消食化痰
健脾補腎・下半身虚
枇杷
咳嗽・喀血
蜜柑の皮
開胃理気・健胃整腸・痰
糖尿病
降圧作用・制癌
降圧作用

◇動物性

豚肉
補脾益腎・温腎壮陽
海鼠
益気養陰・滋補作用強い・高血圧・強肝理気
牡蠣
補虚安神・滋陰
昆布
降圧作用・降脂血作用
スッポン
滋陰補腎・養血・陰虚発熱に最適
 
 

◆まごわやさしい⇒和の食材の頭文字!

「ま⇒豆」
(納豆・大豆・豆腐・あずき・黒豆・油揚げ・高野豆腐など)
「畑の肉」といわれる大豆は、良質のタンパク質、ミネラルが豊富。栄養バランスが良く、生活習慣病予防に効果的です。豆腐なら3分の1丁、納豆なら1パックを毎日食べるようにしましょう。
「ご⇒ごま」
(アーモンド・ごま・ピーナツ・くるみ・栗・ぎんなん・松の実など)
ごまは、タンパク質・脂質・ミネラルがたっぷり。老化の原因となる活性酸素を防ぐ抗酸化栄養素も含みます。種実類の栄養成分は、切ったり刻んだり、すりつぶして使うことで、効率よく利用できます。⇒肥満もカラダの酸化が原因!抗酸化作用を多く含む食べ物です。
「わ⇒わかめ」
(ひじき・わかめ・のり・昆布・もずくなど)
カルシウムなどのミネラルが豊富。海藻類は酢や油と組み合わせると栄養成分が効率よく摂取できます。調理に酢・柑橘類の汁・植物油を利用しましょう。
「や⇒野菜」
(ほうれん草・トマト・白菜・キャベツ・セロリ・もやしなど)
β-カロテンやビタミンCが豊富。皮膚や粘膜を健康に保ち、抵抗力を維持します。野菜は1日に 350g(1/3量は緑黄色野菜、2/3量は淡色野菜)が目安です。煮たり炒めたりの加熱調理でかさを減らすとたくさん食べられます。⇒あと60g!野菜を効率的にとり入れるコツ。
「さ⇒さかな」
(青魚や鮭など)
あじは、DHAやEPA・タウリンが豊富で、血中のコレステロールを減らし、血液をサラサラにする働きと、疲労回復に効果があります。週に最低3食、できれば5~7食を魚料理にすると良いでしょう。
「し⇒しいたけ」
(まいたけ・マッシュルーム・しいたけ・しめじ・エリンギ・なめこなど)
しいたけは、カルシウムの吸収を助けるビタミンDが豊富で、カルシウムを骨に定着させるのに有効です。日光に当てることで、ビタミンDの量が多くなります。きのこ類は、食物繊維やビタミン・ミネラルの宝庫です。たっぷり食べても低カロリーなので安心です。
「い⇒いも」
(じゃがいも・さつまいも・里芋・山芋など)
炭水化物・糖質やビタミンC・食物繊維が豊富です。根菜類は腸内環境を整えてくれます。
⇒美肌は腸内環境から!食事で内側からキレイを作る方法

多種多様な食品を取り合わせ栄養素をバランス良く摂るためのキーワード「まごわやさしい」を毎日の食事に積極的にとり入れて、健康生活にお役立て下さい。