第9章 『胃』手術後の食事 

インデックス 第1節 食事の基本  | 第2節 バランスの良い食事とは  | 第3節 次の症状があるときの食事  | 第4節 食品について
  • 第1節 食事の基本

    胃は食物を貯留し消化する働きをしています。胃が切除されると、これらの機能が障害されますが、退院後の食事に原則的には制限はありません。また、手術後しばらくの間は胃の機能が低下しているので、細かくきざんだり、やわらかく煮込んで、消化の良い食事をするようにしましょう。自分の体の状態に合わせて、いろいろな食品からいろいろな栄養をとることが大 切です。

    最も基本的なことは、おいしく、楽しく、食べることです。次のことに留意して、バランスの良い食事を心がけましょう。

    ①1回の食事量は無理をせず少なめに、沢山食べられないときは、回数を多くしましょう。
    退院後2~3ヵ月は、3食と2~3回の間食を目安に食べましょう。朝、昼、夕の3食を基本とし、午前10時と午後3時にビスケットと牛乳などの間食をとるなど、職場や仕事中でもとりやすいかたちに工夫するとよいでしょう。個人差はありますが、3~4ヵ月たったら3食の摂取量が増加して、間食の量は徐々に減らしていけるようになります。
    ②良く噛んで、ゆっくり食べましょう。
    良く噛むことで、唾液と食べ物がよく混ざり、胃腸の負担が軽くなります。食べ物を少しずつ腸に送り出す働きを補います。
    ③食事時間を規則的にしましょう。
    時間を守って食べることにより、食べ物を受け入れる態勢ができます。便通も安定します。
    ④食事内容は段階的に進めましょう。
    何を食べてもよいのですが、消化の悪いものを沢山摂ることは避けましょう。やはり体の状態に合わせて、段階的に進めていくことが大切です。
    • 繊維の多い食品は少量ずつ増やしましょう。
    • 細かくきざんだり、軟らかく煮込むなどの調理を工夫しましょう。
    • 天ぷら、フライ、コロッケなどの油で揚げたものも、少量ずつから食べはじめてみましょう。
    • 煎茶、コーヒー、紅茶などは薄めにして飲みましょう。
    ⑤食べ過ぎないように気をつけましょう。
    体調が良くなったからといって、決して食べ過ぎないようにしましょう。
    ⑥アルコール
    手術後、少量のアルコールは飲むことができますが、担当医との相談のうえで開始してください。しかし、人によって炭酸を含むビールはおなかが張り、食事をとりにくくなったり、ゲップが出たりします。食事に影響が出るようなら控えましょう。また、手術後アルコールに弱くなり、酔いやすくなる人もいるので気をつけてください。
    ⑦食事をするとき
    料理は好きな器に盛りつけ、楽しくゆっくり、時間をかけて食べましょう。食欲も増し、消化吸収も良くなります。
  • 第2節 バランスの良い食事とは

    朝、昼、夕食ともに主食と主菜と副菜そして野菜料理を揃えて食べましょう。 

    ・主食とは?米飯、パン、麺類、芋類、トウモロコシなど
    糖質は脂質とともにエネルギー源です。
    ・主菜とは?魚、肉、卵、豆類、乳製品
    体をつくる良質のタンパク源です。
    ・副菜とは?野菜、海藻、果物
    体のリズムを整えるビタミン、ミネラルの宝庫です。
  • 第3節 次の症状があるときの食事

    ①早期ダンピング症候群
    胃が切除された結果、胃から十二指腸、あるいは上部空腸内に、食事内容が急速に排出されることが引き金となって起こる生体反応で、食後すぐから30分以内に出現する冷や汗、動悸、めまい、脱力感、頭痛、呼吸困難等の症状をいいます。
    • まず、よくかんでゆっくり食べること。さらに食事の内容を検討し、消化の良いでん粉や糖質を多く含むもの、甘味の強い流動物は控えましょう。
    • 食事中の水分を控えるようにします(流し込むような食べ方は控えましょう)。
    それでも症状が続く場合は担当医に相談しましょう。
    ②後期ダンピング症候群
    腸管からの糖質の吸収によって急に血糖値が高くなると、血糖値を下げようとする反応(血糖を下げるホルモンであるインスリンの過剰分泌)が起こって、逆に下がりすぎてしまうことがあります。通常、食後2~3時間たったころにめまい、脱力感、発汗、震えなどが起きます。糖分を補うことで改善できます。
    • 予兆があることが多いので、そのとき、あるいは食後2時間くらいたったころ「おやつ」を食べるとよいでしょう。
    • でん粉や糖分を多く含んだ食事の摂取を控えるようにしましょう。これらの食品は吸収が早く、食後の血糖値を高くし、反応性の低血糖が起こりやすくなります。
    ③つかえ感や胸やけ
    胃切除によって胃の容積が減少し、摂取した食物を貯蔵する機能が低下したり、手術直後の胃の動きが悪かったりすることによるものです。一過性のことが多く、症状は徐々に改善します。
    • 食事は良く噛んで、ゆっくり食べましょう。
    • 食後30分は寝ないようにしましょう(立っていてもかまいません)。
    ④便秘や下痢
      排便のリズムは手術や食物の変化、生活の変化、精神的要因等により乱れやすく、手術後   は便秘や下痢になりがちです。自分で工夫しても症状が改善しない場合は、担当医に相談   しましょう。
    1.便秘のとき
    • 繊維の多いものをとってもよくなったら、野菜や果物など食物繊維をとるよう      にしましょう。
    • 水分を多くとりましょう。
    • 食事時間を規則正しくしましょう。
    • 生活のリズムを整え、規則正しい排便の習慣をつけましょう。
    • 適度な運動をしましょう。
    • 食事や生活習慣に注意しても改善しない場合は、担当医に相談しましょう。手術後半年ぐらいはおなかに力が入らないので、下剤が必要なことがあります。
    2.下痢のとき
    おなかの痛くならない下痢は、あまり心配しなくてよいでしょう。
    • 消化の良い食品をとりましょう。
    • 水分は不足しないように、むしろ補いましょう(ミネラルも一緒に補える、スポーツドリンクなどもよいでしょう)。
    • 1回ごとの食事の量は少なくし、食事回数を増やして、消化管の負担を軽くしましょう。
    ⑤カルシウムは不足しないように
    胃切除術後はカルシウムの吸収が減少します。普通の食事が食べられるようになったら、牛乳や小魚など、カルシウムを多く含んでいる食品をとるようにしましょう。また、カルシウムの吸収にはビタミンDが必要です。ビタミンDは、食事に含まれる成分をもとにして、日光によって皮膚でつくられます。適度に日光浴を楽しみましょう。
    カルシウムは、牛乳、ヨーグルト、チーズ、小魚、大豆製品、緑黄色野菜などに多く含まれています。ビタミンDは、魚類、肉類、卵類、干し椎茸等に多く含まれています。
    ⑥鉄やビタミンも不足しないように
    胃の切除により胃酸分泌が減少するため、鉄の吸収が悪くなって、鉄欠乏性貧血を起こすことがあります。鉄分を多く含む食品を食べるようにしましょう。ビタミンCには、鉄分の吸収を助ける働きがあります。積極的にとるようにしましょう。
    鉄分は、レバー、肉類、鶏卵、魚類、大豆製品などのタンパク源、緑黄色野菜などに多く含まれています。ビタミンCは、緑黄色野菜、その他の野菜、果物類に多く含まれています。
    また、胃を全部取った方ではビタミンB12の吸収障害により、手術後6年くらいしてから貧血が起こります。胃が少しでも残っている方には、ほとんど起こりません。これは食事療法では治りません。ビタミンB12の注射による補給が必要となりますので、医師の指示を受けてください。
  • 第4節 食品について

    ①お勧めの食べ物、控えたほうがよい食べ物
    1.お勧めの食べ物
    <タンパク質>
    皮なし鶏肉、ささみ、脂肪の少ない牛・豚肉、レバーなど
    あじ、かれい、すずき、さけ、たら、ひらめ、かき、はんぺんなど
    鶏卵、うずら卵など
    豆腐、やわらかい煮豆、ひきわり納豆、きなこなど
    牛乳、ヨーグルト、乳酸飲料、チーズなど
    <糖質>
    穀類粥、軟飯、うどん、パン、マカロニなど
    じゃがいも、さといも、長いも、大和いもなど
    果物缶詰、りんご、熟したバナナ、桃、洋梨など
    菓子ビスケット、カステラ、ゼリーなど
    <脂質>
    油脂植物油、バター、マーガリン、生クリームなど
    <ビタミンやミネラル>
    野菜やわらかく煮た野菜(かぶ、かぼちゃ、カリフラワー、キャベツ、大根、トマト、なす、白菜、ブロッコリーなど)、梅干しなど
    <その他>
    飲み物番茶、麦茶、ジュース、薄いお茶、薄い紅茶、薄いコーヒーなど
    <調理法>
    煮る、蒸す、焼く、細かくきざむ
    2.控えたほうがよい食べ物
    <タンパク質>
    油の多い料理(カツ、ビーフステーキなど)
    脂肪の多い肉(バラ肉、ハム、ベーコンなど)
    魚介貝類、いか、たこ、すじこ、かまぼこ、干物、佃煮、塩辛など
    大豆、枝豆など
    (大豆は加熱により消化率は向上しますが、炒り大豆は60%、煮豆でも70%です。一方、豆腐は95%、納豆は80%強と消化率が高くなります。)
    <糖質>
    穀類玄米、赤飯、玄米パン、胚芽入りパンなど
    油を多く使用した料理(ラーメン、チャーハン、焼きそばなど)
    繊維の多いさつまいも、こんにゃく、しらたきなど
    果物繊維が多く酸味の強い果物(パイナップル、柑橘類など)、干し果物など
    菓子揚げ菓子、辛いせんべい、豆菓子など
    <脂質>
    油脂ラード、ヘッド
    油を多く使う料理(天ぷら、フライなど)
    <ビタミンやミネラル>
    野菜繊維の多い野菜(ごぼう、たけのこ、ねぎ、れんこん、ふき、ぜんまい、わらび、きのこなど)
    香りの強い野菜(うど、にら、にんにく、みょうがなど)
    かたい漬け物(たくあん、つぼ漬けなど)
    海藻こんぶ、のり、ひじき、わかめなど
    <その他>
    調味料辛子、カレー粉、わさびなどの香辛料
    飲み物炭酸飲料、アルコール、濃いお茶、濃いコーヒーなど
    ②消化しやすい料理
    半熟卵、温泉卵、炒り卵、スクランブルエッグ、卵豆腐、茶わん蒸し、ふわふわ卵、卵とじ煮、オムレツ、かきたま汁、プリンなど
    シチュー、つくね煮、蒸し鶏、肉団子スープ煮、肉団子うま煮、そぼろ煮、 ロールキャベツなど
    煮魚、おろし煮、みそ煮、あんかけ、塩焼き、照り焼き、つけ焼き、刺身(貝類、筋のあるものは避ける)など
    グラタン、クリーム煮、シチュー、ババロア、牛乳ゼリーなど
    湯豆腐、煮奴、冷や奴、豆腐あんかけ、みそ煮、炒り豆腐、白和え、納豆、生揚げ含め煮などの豆腐料理
    一口大に切って料理する。
    含め煮、そぼろ煮、クリーム煮、マッシュポテト、ポテトグラタン、ととろいも、さといも含め煮、スープ煮、みそ煮、みそあんかけなど
    野菜繊維を切るように下処理する。
    クリーム煮、柔らか煮、あんかけ、煮浸し、みそ汁、みそ煮、おろし煮、温野菜など
    果物缶詰、りんご、コンポート、熟したバナナ、ジュース、フルーツゼリーなど
    主食全粥、おじや、軟飯、煮込み饂飩、煮素麺、ソフトパン、マカロニグラタンなど
    ③間食として、とりやすい食品
    乳製品ヨーグルト、牛乳、乳酸飲料、カスタードプリン、アイスクリーム、チーズなど
    果物缶詰、バナナ、りんご、ジュースなど
    パンバターロール、クリームパン、ソフトパン、ホットケーキなど
    菓子ビスケット、ウエハース、卵ボーロ、カステラなど
    ④1日にとりたい食品量の目安
    退院後すぐには、多くは食べられません。色々と試してみて、ご自分に合った食べやすい食物や食べ方をみつけていきましょう。はじめは、1000~1200kcalはとりたいものです。