第8章 癌と食事 

インデックス 第1節 消化管術後の食事について  | 第2節 大腸切除後の食事  | 第3節 頭頸部手術後の食事~嚥下調整食~  | 第4節 化学療法中の食事について  | 第5節 癌に効く?食事療法の嘘!生活習慣を見直す  | 第6節 ベータカロチン摂取は癌を増加させる  | 第7節 癌体験者の食事について  | 第8節 体重減少は主に骨格筋の減少が原因  | 第9節 初診時から栄養管理と理学療法を徹底  | 第10節 癌をめぐる都市伝説に翻弄される患者さん  | 第11節 良く噛んでゆっくり少量ずつ食べれば、何を食べても大丈夫  | <参考書籍>

癌研の栄養管理部では、癌専門病院として極力食事から体力、免疫力の増強をはかることを重点に嗜好優先の食事の提供をしております。そして徹底したニーズの調査、分析、計画、実施の手順を踏んで、摂食率の向上に総力を注いでおります。

  • 第1節 消化管術後の食事について

    ・胃術後の食事について

    胃は食べ物を貯めて腸が消化吸収しやすく整える働きがあります。手術により胃の機能が落ちるため食べ方を工夫することが大切です。

    <胃の働きと食事の摂り方のポイント>

    • 食べ物を細かくし、腸に少しずつ送る働きを補う為に、一口ずつ、良く噛んで、30分以上時間をかけて食べましょう。
    • 胃の入り口の噴門部は逆流を防ぐ働きをします。食後、食べてすぐに横に寝ないようにしましょう。
    • 胃の容量が少なくなっていますので、食事の回数を5~6回に分けて食べましょう。個人差はありますが、3ヶ月程度経てば、自然と食べる量も増えていきます。体重が減らなくなったら、3回食に戻しても良いでしょう。
    • 胃の上部からは「グレリン」という食欲増進ホルモンが分泌されます。そのため、術後は一時的に食欲が落ちる事がありますが、時間が経てば少しずつ回復します。食欲が出ない時は、神経質にならずに「食べたい」と思う料理を食べましょう。
    • 胃を手術したあと、食べてはいけないものはありません。硬い物や消化しづらいものは量を控えめに食べましょう。1~3ヶ月後にお腹に不快な症状がなければ、少しずつ試していただいて構いません。
    食物繊維の多い食品
    きのこ、こんにゃく、海藻、ごぼう、たけのこ、山菜など
    油を多く含む食品
    揚げ物、ジャンクフードなど
    硬い食品
    いか、たこなど
    消化の悪い食品
    中華麺、餅
    • 胃酸が減ると、食べ物を殺菌する力が落ちるので、刺身やお寿司などは新鮮なものを食べる  ようにしましょう。
    • 水分は、食事と食事の合間に、こまめに摂りましょう。
  • 第2節 大腸切除後の食事

    大腸の手術後1ヶ月くらいは腸の動きが弱く腸閉塞が起こりやすい状態です。腸の動きが安定するまでの間は、食べ方に注意しながら、食物繊維の少ない食事を摂ることが薦められます。術後は排便が不安定で下痢や便秘を起こしやすいため、水分補給を心がけましょう。

    <食事のポイント>

    • 食事はよく噛んでゆっくり食べましょう。
    • 食物繊維の多い食品は食べ過ぎないようにしましょう。
    • 下痢をしている場合は、水分を十分に補給しましょう。
    • 便秘の場合は、水分の摂取と適度な運動を心がけましょう。

    手術後1ヶ月は下記の食品は控えましょう

    ・食物繊維の多い食品
    きのこ、こんにゃく、海藻、ごぼう、たけのこ、山菜など
  • 第3節 頭頸部手術後の食事~嚥下調整食~

    嚥下(飲み込み)が困難になると、飲み物や食べ物が食道に入らず、気管に入ってしまう恐れがあります。気管から肺に入ると肺炎を起こす場合がありますので、特に注意が必要です。嚥下が困難な方には、医師、看護師、言語聴覚士と管理栄養士が一緒に患者さんひとりひとりの咀嚼・嚥下機能を評価しながら、次のような食事を考えます。

  • 第4節 化学療法中の食事について

    化学療法中の患者さんは、治療に伴い、「味覚」「臭い」「吐き気」「食べる気がしない」「口内炎」等の理由で食欲不振を訴える方がいます。そのような症状への対応は、料理の味付けを調整(だしのみの味にする、逆に味を濃くする)、量を半分にする、高栄養の飲料や食品を付けるなど注意します。

    また、少量でも食べられる喜びを保つために当院では食欲不振時の食事として1品を選択できる食事も用意しましょう。

    食欲不振時に1品を選択できる食事

    • フルーツ盛り合わせ
    • カレーライス
    • 温かいうどん
    • 冷たいうどん
    • 焼きそば
    • お好み焼き
    • いなり寿司
    • スープ(コンソメ・冷製ヴィシソワーズ)
    • ゼリー
    • ヨーグルト
    • プリン
    • アイスクリーム
    • シャーベット
    • ジュース

    ●食欲不振時に、好まれる料理の代表例

    酢味の物(お寿司、酢の物)、ソース味の物(焼きそば、お好み焼き)、味がしっかりとした物(カレー、ラーメン)、薄味の物(茶碗蒸し、奴豆腐)、麺類(うどん、ソーメン)、パン類(サンドイッチ、ピザ)、フルーツ盛り合わせ

    ※化学療法中で食欲が低下している時は、食べたい物を少しでも食べて、水分はしっかりと摂るように心がけて下さい。

  • 第5節 癌に効く?食事療法の嘘!生活習慣を見直す

    先日、ある患者さんとお話ししていて、抗癌剤の治療がうまくいって、癌をうまく抑え込むことができたので「しばらく抗癌剤をお休みしましょう」と医師側から提案されました。すると患者さんが「何かできることはないでしょうか?何かしていないと不安なんです。実は私は、癌が再発してから、玄米、菜食ばかりです。大好きな牛肉も一切食べていないのです」と言われるので、「大切なことは、生活の質を大切にすることだと思います。玄米、菜食が楽しくできるのならかまいませんが、つらいものを無理にやる必要はありませんよ」と言えば、「そうなんですね。私は牛肉が大好きだったのですが、癌が再発したので、何とかしようと思い、ずっと牛肉を食べずにいました」と、涙を流してお話しされたそうです。

    上記のようなことは、多くの患者さんにも当てはまるのではないでしょうか?「食事で癌を治す」本がおおはやりです。「食事で癌が治る」「癌が消えていく食事療法」「食べ物で余命数か月の癌が消えた」などの食事で癌を治すとうたった本は、たちまちベストセラーになるそうです。食事で癌が治ったりすれば幸いです。医者も薬も不要ですね。

    癌という病気になりますと、大抵の方はこれまでの生き方、生活習慣を反省することが多いのではないかと思います。完璧な生活習慣を送っていた、などという人はほとんど存在しないのではないでしょうか。

    多くの方は、これまでの自分の生活習慣を反省し、野菜中心にしたり、玄米食にしたり、ストレスがかからないように注意したりと、色々なことをしたりするかもしれません。では、医学的に食事が癌に与える効果は実際どうなのでしょうか?

    癌と食事の関係を考える場合には、予防的効果と治療的効果に分けて考える必要があります。予防的効果というのは、癌になっていない一般の人が、癌になることを予防するといった効果です。予防に関しては、多くの研究がありますが、ハーバード大学の疫学研究で、癌死亡に食生活が約30%影響しているという報告があります。

    このことは、癌の治療効果を言っているのではなく、食生活を改善することにより、癌の発生をある程度は予防できるのではないかと言っているものです。個別の癌の研究でも、野菜の摂取や、塩分を控えることで癌の発生を予防できる可能性が示唆されています。

    例えば、野菜不足や肥満が、食道癌や、大腸癌、乳癌の発生原因になることがわかっています。ただ、特定の食事やサプリメントを推奨しているものではないことに注意してください。

  • 第6節 ベータカロチン摂取は癌を増加させる

    ビタミンやサプリメントで癌を予防できるのか?ということに、世界の研究者は古くから関心を抱いてきました。実際に、ビタミンやサプリメントの癌予防効果を検証するために、世界では多くの研究がなされました。

    ある治療法が本当に効果があるのかを検証するのには、治療群と治療をしないコントロール群とを無作為(ランダム)に振り分けて、その長期的効果を検証する「ランダム化比較試験」が必要です。

    このランダム化比較試験が治療介入を伴う研究法では、最も信頼性が高い研究となります。癌予防の研究でも、特定のビタミンを飲んでもらう群と、飲まないコントロール群(プラセボ群)とにランダムに振り分けて、癌の発生率を長期的に検証した研究が多く行われました。

    その研究結果をまとめたもの(システマティックレビューと言います)を、米国の政府機関の米国予防医学専門委員会(USPSTF)が2013年に報告しています。その結果は、27658人を対象とした2つの研究では、マルチビタミン摂取により、癌の発生をわずかに予防できたというものでしたが、324653人を対象とした24の研究結果は、どのビタミン、サプリメント摂取(ビタミンA、C、D、葉酸、セレン、カルシウム)をしても、癌の発生は予防できなかったという結果でした。

    このうち、ベータカロチンと、ビタミンEを使った予防研究は研究結果が一定して否定的でした。そして、ベータカロチンを使った 112820人を対象とした6つのランダム化比較研究をまとめた結果では、何と、ベータカロチンを予防的に飲んでもらった群では、癌を予防するどころか、喫煙者に対して、肺癌の発生が増えてしまいました。

    これらの研究で使われたベータカロチンの投与量は、1日30㎎と大量のベータカロチンが使われました。ベータカロチン30㎎というと、トマト1個にベータカロチンが 0.8㎎含まれると言われていますので、トマト37個分に相当します。

    ベータカロチンは、緑黄色野菜に多く含まれるビタミンA前駆体です。日本でも健康食品として一時期はやりました。ベータカロチンを過剰摂取すると、なぜ、癌が増えてしまったのかは、明らかではありませんが、偏ったものを過剰摂取することは、正常細胞を痛めつけることにもなります。

    細胞の癌化の機序はまず、正常細胞に傷がつくこと、すなわち、遺伝子に異常が起こることから始まりますので、ベータカロチンの過剰摂取が何らかの仕組みで遺伝子異常を引き起こしたのかもしれません。要は、癌予防は食事をバランスよくとることです。

    国立癌研究センター癌予防と検診研究センターがまとめた「日本人のための癌予防法」には、癌に対する食事に関しては:

    偏らずバランスよくとる。

    • 塩蔵食品、食塩の摂取は最小限にする。
    • 野菜や果物不足にならない。
    • 飲食物を熱い状態でとらない。

    と書かれています。

    ここでも、特定の食事やサプリメントは決して推奨していません。偏った食事療法、サプリメント摂取などは、癌予防どころか、癌を増加させることにもなりますので、注意が必要と思います。

  • 第7節 癌体験者の食事について

    癌体験者、癌サバイバーの方が、どのような食事を取ればよいのか?ということに関しては国立癌研究センター癌情報サービスで、米国対癌協会(American Cancer Society)が2012年に公表した、「癌サバイバーのための栄養と運動のガイドライン」第4版を引用して解説しています。

    こちらでも、特定の食事療法やサプリメントを推奨しているわけではなく、「野菜、果物、全粒穀物を多く含む食事パターンにしましょう」と書いてあるのみです。

    医学的な研究としては、早期乳癌患者を対象として、低脂肪食を摂る食事療法群と、一般的な食事を取る群との大規模なランダム化比較試験が行われました。一つの研究(2437人を対象)では、低脂肪食群が、乳癌の再発を24%低下させるという結果になりましたが、もう一つの研究(3088人を対象)では、低脂肪食群と一般食群とで再発率には差がありませんでした。

    このように、医学的研究でも、特定の食事療法が、癌体験者のその後の経過を改善するという確固たるエビデンス(科学的根拠)が示されていません。

    癌を予防するために、一般の方、また、癌体験者であったとしても、特定の食事療法やサプリメントが癌予防につながるという医学的根拠はありません。癌を過度に恐れるあまり、自分で何とかしようと、偏った食事療法やサプリメントに頼ろうとする人は後を絶ちません。

    そのような食事療法は、決して楽なものでなく、生活の質まで落としてしまうものです。間違った情報に左右されないで、正しい情報を知って楽しい食生活を送って欲しいと思います。

  • 第8節 体重減少は主に骨格筋の減少が原因

    癌患者さんにみられる体重の減少は、癌そのものによる影響、手術による影響、抗癌剤治療や放射線治療による影響などが原因で起こります。癌細胞、免疫担当細胞が分泌するサイトカインが引き起こす代謝異常も考えられます。

    癌の手術を受けると、手術の侵襲だけでなく、傷が治っていく過程で代謝が影響を受けるため、エネルギーと栄養を補給する必要があります。また、栄養状態が悪いと抗癌剤治療や放射線治療の副作用が強く出るため、しばしば治療を中止せざるを得なくなります。治療を続けられなくなった結果、生命予後にも影響するおそれがあります。

    同じ癌といっても、癌の種類によって、また受ける手術によって術後の栄養障害、低栄養、体重減少、身体機能低下の程度は異なります。たとえば、胃癌の患者さんでは胃切除によって低栄養がほぼ必発です。低栄養によって体重が1割程度減少しますが、その相当部分は筋肉(骨格筋)の減少によるものです。筋肉量が減少し、筋力や身体機能が低下するサルコペニアは胃癌根治術後の重篤な合併症と長期予後の独立した予測因子であることが報告されています。

    胃癌のほか食道癌、膵臓癌なども術後に栄養状態が悪化しやすいことがわかっています。国内の研究で、サルコペニアの状態にある膵臓癌の患者さんは、筋肉量が正常な患者さんに比べて術後の生存率、無再発生存率が有意に不良だったと報告されています。

    抗癌剤治療、放射線治療の副作用で食欲不振、悪心嘔吐、下痢などの消化器症状が現れると食事が思うようにできず十分に栄養をとることがむずかしくなります。また、すべての癌に共通していえることですが、癌が再発や転移した場合、その治療が引き金になって低栄養を招くリスクがあります。

    癌が進行すると食欲低下や体重減少によってやせ衰え腹水や胸水などがたまっていきます。この状態を悪液質といいます。悪液質は前悪液質、悪液質、不応性悪液質の3段階で捉えられ、次のように主に体重の減少の程度で判断します。

    ・前悪液質
    体重減少が<5%、食思不振、代謝の変化
    ・悪液質
    体重減少が>5%、BMI<20かつ体重減少が>2%、サルコペニアで体重減少が>2%のいずれか。しばしば食事摂取量が減少し、全身の炎症を伴う
    ・不応性悪液質
    さまざまな程度の悪液質。癌による異化の亢進があり、治療抵抗性の状態、癌の状態を示すPS(Performance status)の低下、生命予後が3カ月未満など

    的確な栄養管理によって前悪液質から悪液質に移行するのを遅らせることができます。

  • 第9節 初診時から栄養管理と理学療法を徹底

    骨格筋が減少することによって身体機能が低下すると、手術前はできていた仕事や家事や社会活動ができなくなり、人生の価値(QOL)が低下します。患者さんにとっては、せっかく手術を受けて癌が治っても、その後の人生が損なわれてしまったのでは、手術を受けた意味がありません。

    医療者にとっても癌の治療成績は上がっても、結果的に医療行為の価値が下がってしまうことは極めて遺憾です。

    国内や海外の研究で骨格筋量の多い人、筋肉量の多い人は治療後の経過が良好であることがわかってきました。骨格筋からさまざまな生理活性物質が出て、癌の発育を抑制することを示唆する研究報告もあります。したがって、術後は体重の減少、特に骨格筋の量が減少するのを抑えるために適切な食事をとって栄養状態を改善することがとても重要になります。

    そのため病院では、多職種が連携する栄養サポートチーム(Nutrition Support Team:NST)の機能を強化し、癌患者さんの低栄養を防ぎ、骨格筋量の減少を抑えるための取り組みを行っています。

    具体的には、患者さんは初診時から医師の診察のほかに管理栄養士と理学療法士の指導を受けられるようになっています。そのときに骨格筋量、体脂肪量、握力、下肢筋力、歩行速度の測定を行います。また、入院前の1週間、万歩計を使って毎日歩行数を測定します。高度侵襲手術を受ける患者さんは歯科、歯科口腔外科を受診し、口腔内環境の評価や口腔ケアを受けます。

    このように多くの病院では、癌患者さんの入院期間は10~12日程度で、退院後は外来で引き続き管理栄養士と理学療法士の指導を受けます。外来受診時には管理栄養士から栄養指導を受け、握力測定も行います。握力が低下している場合は理学療法士が介入し、自宅でもできる体操などを指導します。こうした取り組みによって、患者さんの体重減少を一定程度に抑えることが可能になりました。

  • 第10節 癌をめぐる都市伝説に翻弄される患者さん

    ところで、食事や栄養についての都市伝説がまことしやかな話として多くの日本人の間で伝播しているようです。都市伝説(urban legend)とは、近代あるいは現代に広がったとみられる口承の一種で、「口承される噂話のうち、現代発祥のもので、根拠が曖昧・不明なもの」です。曰く「野菜は毎日摂らなくてはいけない」、曰く「高齢者は野菜を沢山食べるべきである」など根拠もない根も葉もない愚かな話があります。

    ビタミンに関しては、私たちが主に野菜からとっているのはビタミンCで、めったに欠乏するものではありません。それ以外のビタミン(A、B群、D、E、Kなど)の多くは野菜以外から摂っています。いずれにしても、ビタミンの体内貯蔵量はとても大きく、野菜を毎日とる必要はありません。

    つまり、食い溜めができる栄養素です。また、野菜は栄養価が低いので、高齢者は栄養価の高い肉、米、イモなどを優先してとるべきです。よく「毎日30品目の食品を摂取しましょう」といわれますが、その根拠は不明です。

    癌患者さんの食事や栄養についても都市伝説が多過ぎます。「栄養を摂れば癌が成長する」と思っている人は多いのではないでしょうか。癌細胞は自律的に栄養を摂り込みますから、食事で癌が大きくなることはありません。宿主の栄養状態と癌の進行とは無関係です。

    「高齢者は癌の進行が遅い」ということもよく耳にしますが、加齢と癌の進行速度もあまり関係ありません。「肉食は癌の進行を早める」これも“まゆ唾”の噂話であり、前述したように癌患者さんにとって、肉が野菜よりもはるかに必要性の高い食品です。

    日々患者さんを診察していると、普通なら栄養障害が起こるはずがないような患者さんが低栄養になっていることがあります。その中には、間違った食事や栄養のとり方が原因と考えられる方がいらっしゃいます。患者さんから詳しく事情を聞くと、裏付けのない健康情報に翻弄されている背景が見えてきます。

    その例の一つが卵は1日に1個以上はコエステロールが増えて危険だ。これは厚労省までが指導をしたものです。人間は放置していてもコレステロールは自動生成します。むしろ、卵は高タンパク質ですから、沢山食べて欲しいものです。

  • 第11節 良く噛んでゆっくり少量ずつ食べれば、何を食べても大丈夫

    体重減少を抑えるためには、栄養バランスに注意しながら、高タンパク、高カロリーの食事を心がけることが大切です。タンパク質は筋肉をつけるためには不可欠な栄養素です。高タンパクな食品には、肉、魚、卵、チーズ、豆、ナッツなどがあります。また、献立に揚げ物を加えたり、野菜サラダにドレッシングをかけたりすることで高カロリーの食事がとれます。飲み物は、牛乳、ヨーグルトドリンクなどが勧められます。

    日本胃癌学会の『胃癌治療ガイドラインの解説:胃癌の治療を理解しようとするすべての方のために(一般用)』では胃癌の手術後の食事の摂り方について、次のようにアドバイスしています。

    • 口で胃を補う(唾液が十分混ざるようによく噛む)
    • ゆっくり食べる
    • 少なめに食べる
    • 食べてすぐに横にならない
    • 少量で栄養のあるものを食べる
    • 水分も忘れずに(水は食事より大事)
    • 甘いものは食べてもよい
    • 寝る直前は固形物を食べない

    癌といっても特別な食事の摂り方ではありません。同書はさらに「何でも食べてよろしい」といっています。加えて「肝機能が良ければお酒も飲んでかまいません」さらに「げっぷをうまく出せない人は無理をせずに、ビールではなく日本酒やワインに切り替えればよいのです」と助言しています。

    そして、一番大事なことは「普段から患者さんが好きなおいしいものを、心豊かに楽しみながら食べさせてあげること」なのです。長い年月を経て効果が現れる生活習慣病の患者さんの栄養指導と違って、癌患者さんの場合は頭を切り換えて臨む必要があります。

    抗癌剤治療や放射線治療の副作用などで食欲がないときや、炎症などでうまく食べることができない場合は、苦痛を我慢しながら無理に食べることはせず、好きなものを食べやすい量で食べたいと思った時に食べられるように用意しておきましょう。

    口から、おいしいと思えるものを食べることで活力が出て、生きる希望につながります。幸せな人生を食事や栄養で取り戻していただきたいと願っています。

    • よく噛んでゆっくり少量ずつ食べれば、何を食べても良いです。
    • 油を使った食品や肉、米、芋など、少量で多くの栄養を補給できるものを食べる。
    • 肉や乳製品は消化が良いので積極的に摂りましょう。
    • お酒やコーヒー、刺激物もほどほどならOK。
    • 刺身も新鮮ならば何も問題ありません。
    • 野菜やこんにゃく、海藻などは大きな塊で飲み込まないようにしましょう。
  • <参考書籍>

    患者さん向けに、担当の医師、管理栄養士が中心となり関連スタッフと協力し、なるべく分かりやすいように具体的な食事のとり方やレシピを掲載しています。

    抗癌剤・放射線治療に向き合う食事
    比企直樹,伊沢由紀子,小口正彦,小倉真理子/女子栄養大学出版
    大腸癌治療に向き合う食事
    比企直樹,高木久美,小西毅,松浦信子/女子栄養大学出版
    肝臓癌・胆道癌・膵臓癌治療に向き合う食事
    比企直樹,高木久美,井上陽介/女子栄養大学出版
    胃癌治療に向き合う食事
    比企直樹,望月宏美,熊谷厚志/女子栄養大学出版
    口とのどの癌治療に向き合う食事
    比企直樹,川名加織,佐々木徹,小泉雄/女子栄養大学出版
    胃を切った人のための食事
    比企直樹/ナツメ社