第3章 癌になった時の症状 

インデックス 第1節 痛み  | 第2節 だるさ  | 第3節 眠気  | 第4節 吐き気  | 第5節 食欲不振  | 第6節 息苦しさ  | 第7節 気分の落ち込み  | 第8節 不安  | 第9節 全体的な調子  | 第10節 おう吐  | 第11節 下痢  | 第12節 便秘  | 第13節 腹部膨満感  | 第14節 皮膚症状  | 第15節 しびれ  | 第16節 38度以上の発熱  | 第17節 不眠  | 第18節 口内炎  | 第19節 がんの痛み伝達シート

癌にかかると、以下のような様々な症状が現れやすくなります。ここでは、具体的な症状および医療者への伝え方についてご紹介します。

痛み・だるさ・眠気・吐き気・食欲不振・息苦しさ・気分の落ち込み・不安・全体的な調子・おう吐・下痢・便秘・腹部膨満感・皮膚症状・しびれ・38度以上の発熱・不眠・口内炎

  • 第1節 痛み

    癌において最も一般的な症状であり、多くの患者さんが経験する症状です。早期癌患者さんの20~50%の人が痛みを自覚し、進行癌患者さんでは4人に3人が中等度から重度の痛みを経験します。複数の部位に痛みが生じることがあります。

    ①癌による痛み②癌治療による痛み③癌・癌治療と直接関連のない痛みに分類されます。

    伝わると
    癌や治療があなたの体にどう影響を及ぼしているのか把握することができて、もっと効果的に痛みを緩和する方法が検討され、治療が行われます。痛みが和らぐ場合が多く、気分も快方に向かうことが多いです。
    伝え方(例)
    痛み止めの薬を飲んでいますが、飲む前の痛みを「7」とすれば、服薬後も「6」まで下がる程度です。痛くなるのは明け方で、痛みで目が覚め、その後はもう痛みのため眠れないです。昨日の朝からこの状態です。右下腹部がズキズキと痛み、耐えられません。
    伝えて欲しいこと
    • いつごろから感じているか(先週から、月曜日から、今朝から…)
    • 具体的な部位(左手の指先、右下腹部、腰のあたり…)
    • どのようなときに感じるか(寝返りをうつとき、起き上がったら、歩くとき…)
    • どんなふうに痛むのか(しめつけられるような、刺すような、うずくような…)
    • どのように困っているか(寝ていられない、いつものように歩けない、何も考えられない…)

    癌による痛みの大半は、薬物治療により緩和させることも可能です。更に、薬物以外の治療法(放射線治療など)が検討される場合もあります。楽しい会話や心地よい場所、好きな音楽を聞くことなどは、痛みを緩和するのを手伝ってくれます。また睡眠や休息により、痛みが軽減する場合もあります。

  • 第2節 だるさ

    「体がだるい」「体がしんどい」 など、何か行動をしようとするときの疲れやすさや脱力感、全身の衰弱感だけでなく、「やる気が出ない」「集中力がない」などの精神的疲労感も含みます。

    伝わると
    だるさの原因が何かを検討され、対処されます。たとえば夜に十分な睡眠をとることができない場合には、睡眠のリズムを整える工夫をしたり、必要に応じて薬(睡眠導入剤など)が処方されます。睡眠や休息がとれるようになってくるとだるさもとれる場合が多いです。
    伝え方(例)
    先週からだるさがとれません。体を起こすのがとてもつらいです。
    伝えて欲しいこと
    • いつごろから感じているか(先週から、月曜日から、今日のお昼ごろ、入浴後 など)
    • どのようなときに感じるか(治療を受けた後、夕方になると、食後 など)
    • どのように困っているか(起き上がれない、動きたくない など)

    医療者とだるさについて話し合い、1日の生活の中での優先順位を決め、その活動ができるようにサポートを受けることができます。症状や程度、その変化、いつどのようなときに起こるかなど、だるさのパターンを見ながら活動と休息のバランスを検討して1日のスケジュールを調整します。

    休息は、短時間の休息を回数多くとる方が、疲労回復には効果的です。夜は、十分な睡眠をとることが重要です。できない場合には、睡眠のリズムを整えるような工夫をしたり、必要に応じて薬が処方されることもあります。また栄養や水分の補給にも気をつけること。

    自律神経のバランスをととのえ、精神的にも安定した状態を保つことは、倦怠感の軽減につながります。呼吸法や音楽など、自分がリラックスできる方法を見つけてみてください。調子の良いときは、散歩をしたり、趣味を楽しむような時間を作って気分転換することをお勧めします。

  • 第3節 眠気

    十分な睡眠がとれていない場合などに眠気が出ます。癌の痛み止めの薬の服用を開始したときや増量したときに、眠気が生じることもあります。

    伝わると
    もし今まで痛みのせいで眠れなかった場合、痛み止めの薬を開始して痛みがとれると最初のうちは、普段以上によく眠れることが多いです。その眠気であれば数日で治まることが説明されることが多く、その説明で安心できることも多いです。
    伝え方(例)
    日中も、眠たくてぼーっとしている時間が多いです。新聞を読んでいたりすると眠くなります。横になるとすぐに寝てしまいます。最近、急に眠気が強くなった気がします。
    伝えて欲しいこと
    • いつごろから感じているか(薬を飲み始めたころから、先月、おととい など)
    • どのようなときに感じるか(薬を飲んだあと、食後 など)
    • どのように困っているか(日中起きていられない、すぐにうとうとする、会話が困難 など)

    規則正しい生活習慣、栄養バランスの良い食事などをこころがけることで、日中の眠気を抑えられることがあります。鎮痛薬による眠気であれば、概ね1週間程度で症状が改善することが多い傾向にあります。

  • 第4節 吐き気

    吐き気(悪心)及びおう吐も含めて癌患者さんの30~70%に発現します。抗癌剤や放射線による癌治療、癌の痛み止めの薬の服用時などにしばしばみられます。また精神的な要因や便秘によっても吐き気が生じることがあります。

    伝わると
    数日で治まらなければ、原因や病態に応じて適切な対処と吐き気止めの薬が処方される場合が多いです。吐き気が和らぐことが多く、気分も快方に向かうことが多いです。
    伝え方(例)
    先週、薬を飲み始めてから吐き気がずっと続いています。食欲もなく、無理に食べようとしても吐き気が出て、食べることができません。
    伝えて欲しいこと
    • いつごろから感じているか(先週から、薬を飲み始めたころから、今朝など)
    • どのようなときに感じるか(薬を飲んだ後、食事の後、お腹が張ったとき、便秘のときなど)
    • どのようになるのか(むかむかする、もどしそうになる、お腹も痛くなるなど)
    • どのくらいの頻度
    • 時間続くか(毎食後、30分程度 など)
    • どのように困っているか(食べ物も見たくない、体を起こしていられないなど)

    複数の原因が重なっていることがあるので原因と病態に応じて適切な対処と吐き気止めの薬が処方されることもあります。口の中のにおいが吐き気を誘うこともありますので、うがいなどをして清潔にするなど衛生面にも気をつけます。環境の調整も大切です。

  • 第5節 食欲不振

    食欲の低下あるいは消失した状態を食欲不振といいます。継続・深刻化すると体重減少につながることもあります。

    伝わると
    状態に応じて食事指導がされたり、必要であれば点滴をするなど対処されます。食欲が戻れば食事も楽しくなることが多く、体重ももとにもどってくる場合が多いです。
    伝え方(例)
    3日前から食欲がありません。無理に食べようとしても少し口にするともうお箸が進みません。水分ならばとれますが、固形物が難しく、少し体重も減りました。
    伝えて欲しいこと
    • いつごろから感じているか(先週から、月曜日から、今朝から など)
    • どのようなときに感じるか(薬を飲んだとき、暑いとき など)
    • 食欲不振の程度(今までの半分くらいの食事しかとれない、水分ならとれる など)
    • どのように困っているか(味を感じにくいのであまり食べられない、さっぱりしたものしか食べられない、体力が落ちてきた、やせてきている など)

    食事だけでなく、水分もあまりとれなくなった場合には、輸液(点滴)や経腸栄養が必要となる場合もあります。食べる楽しみややすらぎを第一としてカロリーや体重にこだわる必要はありません。食習慣や嗜好に合うように調整する。たとえば冷たいもの、酸味のきいたもの、咽喉ごしのよいもの、口当たりのよいもの、唾液の分泌を促すものなど食事の工夫も重要です。

  • 第6節 息苦しさ

    「呼吸がしづらい」「息が詰まる感じ」「空気を吸い込めない感じ」などの自覚的な症状です。呼吸困難は、客観的に表現するのが難しく、「胸がドキドキする」「息が切れる」「胸が締めつけられる感じがする」「胸が痛い」「だるい」など人によってその表現の仕方がちがってきます。肺炎や気管支炎、心不全、精神的なストレスが原因になっている場合があります。

    伝わると
    原因に対する治療や症状を緩和させる治療が行われます。息苦しさがとれると食欲も出てくることが多く、食事もとれるようになることが多く、体力も回復してくる場合が多いです。
    伝え方(例)
    食事はとれますが、トイレに行くにも、会話をするにも息が切れてしまいます。2週間ほど前からこのような症状が出ていて、動くのがおっくうです。座っていると少し楽です。
    伝えて欲しいこと
    • いつごろから感じているか(先週から、月曜日から、今朝から など)
    • どのようなときに感じるか(日常的に、体を起こしているとき など)
    • どのくらいの頻度
    • 時間続くか(3日間時々、1日に5~6回、5分程度 など)
    • どのように困っているか(安静にする必要がある、呼吸の補助が欲しい など)

    肺炎に対する抗生物質の投与など原因に対する治療や酸素療法、薬物療法のように症状を緩和させる治療が行われます。普段からどのような動作をすれば軽減するかを知っておいて息苦しいときには対処する。逆にどのようなことをしたときに息苦しくなるかを知っておいてできるだけ、その動作を避けることが重要です。

  • 第7節 気分の落ち込み

    癌に罹患すると、健康、仕事、役割、将来の計画の消失などを経験することが多いため、気分の落ち込みが起こることがあります。また、薬の副作用で気分の落ち込みを感じることもあります。仕事や家事が手につかない、眠れないなど日常生活機能に障害をもたらす情緒面の苦痛を経験することもあります。気分の落ち込みは、癌患者さんの多くにみられるもので、特定の人だけに起こるものではありません。

    伝わると
    原因や負担になっているのが何かを相談しながら進めていきます。休めない場合や食事がとれず身体的につらい場合には、必要であれば薬も処方されます。気分も落ち着いてくると治療に前向きになることができる場合が多いです。
    伝え方(例)
    毎日ひどく落ち込んでしまい、ものごとに集中できない。やる気が出ない。何をしても楽しめず物事をするのがおっくうです。
    伝えて欲しいこと
    • いつごろから感じているか(癌と診断されたとき、治療が始まったとき、今週特に など)
    • どのようなときに感じるか(朝起きたとき、一人で過ごしているとき など)
    • どのように困っているか(誰とも話したくない、だるくてしかたない など)

    担当医や担当の看護師が患者さんご自身の心や精神面に関連する問題についてお話をお伺いします。また精神科や心療内科の医師、心理職、心の問題を専門にする看護師、医療ソーシャルワーカーなどが、窓口になることもあります。カウンセリングやリラクゼーションの他に薬を併用した方がよい場合には薬が処方されます。

    信頼できる人や、担当医、看護師、相談支援センターの相談員などの医療者に気持ちを打ち明けることでつらさの軽減に役立ちます。

  • 第8節 不安

    癌患者さんが経験する心の状態の代表的なものが「不安」です。これはある程度は通常の反応です。それがあったからといって、直ちに治療が必要というわけではありません。しかし、日常生活に支障が出るほど強ければ、何か対策を考えることが必要となります。突然胸が苦しくなる、息苦しくなる、吐き気がする、めまいや動悸におそわれるといった体の発作的な変調が、不安の症状として起こることがあります。

    伝わると
    原因や負担になっているのが何かを相談しながら進めていきます。休めない場合や食事がとれず身体的につらい場合には、必要であれば薬も処方されます。気分も落ち着いてくると治療に前向きになることができる場合が多いです。
    伝え方(例)
    癌と診断されてから心配事が頭から離れずに、考えたくないのに嫌なことを考えてしまいます。すぐに怒ったり、イライラしています。そわそわして気持ちが落ち着きません。
    伝えて欲しいこと
    • いつごろから感じているか(癌と診断されたとき、治療が始まったとき など)
    • どのようなときに感じるか(治療の方針を聞いた時、将来の事を考えた時、夜になるとなど)
    • どのように困っているか(夜も眠れない、何事も手につかない など)

    担当医や担当の看護師が患者さんご自身の心や精神面に関連する問題についてお話をお伺いします。また精神科や心療内科の医師、心理職、心の問題を専門にする看護師、医療ソーシャルワーカーなどが、窓口になることもあります。

    信頼できる人や、担当医、看護師、相談支援センターの相談員などの医療者に気持ちを打ち明けることもつらさの軽減に役立ちます。治療のことで悩んでいる人は、病気について正しく信頼できる情報を得たり、同じ悩みを抱えた人と話すことで気持ちが和らぎ、病気とたたかう気力が出てくる場合もあります。

  • 第9節 全体的な調子

    ①痛み ②だるさ ③眠気 ④吐き気 ⑤食欲不振 ⑥息苦しさ ⑦気分の落ち込み ⑧不安までの8つの症状から今日の状態を総合的に判断していただくのが全体的な調子です。

    伝え方(例)
    この1週間は、前回の診察のときよりも、調子が悪化しています。昨日から経験したことがないくらいつらい症状が続いているので今日、先生の診察を受けに来ました。
    伝えて欲しいこと
    • いつごろから感じているか(日常的に、今週は特に、前回の診察後から など)
    • どのくらいの頻度
    • 時間続くか(3日ほどずっと、2日間、午前中 など)
    • どのように困っているか(安静にする必要がある、日常生活に問題ない など)
  • 第10節 おう吐

    吐き気(悪心)及びおう吐も含めて癌患者さんの30~70%に発現します。抗癌剤や放射線による癌治療、癌の痛み止めの薬の服用時などにしばしばみられます。また精神的な要因によっても吐き気が生じることがあります。

    伝わると
    原因や病態に応じて適切な対処と吐き気止めの薬が処方される場合があります。吐き気が和らぐことが多く、気分も快方に向かうことが多いです。
    伝え方(例)
    今朝、薬を飲んでから、吐き気が出て、3回おう吐しています。水分はとれますが、固形物は食べることができません。
    伝えて欲しいこと
    • いつごろから起こっているか及び回数(今朝から3回 など)
    • 内容物の程度(ほとんど水分、食べたもの、お薬も など)
    • 食事や水分がとれているかどうか(食事をとるとすぐに吐いて、水分も十分とれない など)

    複数の原因が重なっていることがあるので原因と病態に応じて適切な対処と吐き気止めの薬が処方されることもあります。口の中のにおいが吐き気を誘うこともありますので、うがいなどして清潔にするなど衛生面にも気をつけます。

    環境の調整も大切です。吐物は速やかに片づける、汚れた寝衣・寝具などは清潔なものと交換する、刺激的な香りの花を置かない、室内は適度な明るさに調整し、時々窓を開けて空気の入替えをすることも重要です。

  • 第11節 下痢

    下痢は、腸粘膜の障害による水分の吸収障害、腸の活発な蠕動運動による腸内容物の迅速な通過、腸粘膜からの腸液分泌作用の活発化などにより発生します。下痢が続くと食欲不振、腹痛、全身倦怠感、肛門周囲のびらん、血液中の電解質の異常、栄養状態の悪化につながります。

    伝わると
    原因や病態に応じて適切な対処、整腸剤や下痢止めの薬が処方される場合があります。下痢がおさまると食事もとれるようになることが多く、気分も快方に向かうことが多いです。
    伝え方(例)
    1日に1~2回ですが、3日間下痢が続いています。水のような便で1日に2回下痢をしています。今朝から2回下痢をしています。下痢止めを飲んでも止まりません。
    伝えて欲しいこと
    • いつごろから起こっているか及び回数(3日前から1日3回、今朝から4回 など)
    • どのようなときに起きるか(薬を飲んだとき、治療を受けた後2日間 など)
    • 排泄物の状態(水様便、白色便、着色便 など)
    • どのように困っているか(トイレが気になり何もできない、もれてしまう など)

    軽い下痢の場合は、整腸剤や下痢止めの薬を内服して調整することが可能です。下剤の量が多すぎることによる下痢は下剤の量を減らしてみましょう。

  • 第12節 便秘

    便秘とは、一般的に、排便が順調に行われない状態のことをいいます。1日1回排便があっても量が少ないとき、便がすっきり出た感じがないとき、便が固くなかなか排便できないとき、あるいは数日以上も排便がないとき、排便の間隔が不規則なときなどがあります。

    伝わると
    原因や病態に応じて適切な対処が行われます。必要であれば下剤が処方されます。便秘がおさまると食事もとれるようになることが多く、気分が快方に向かうことが多いです。
    伝え方(例)
    2週間前の服薬後から便秘が続いています。毎日あったお通じが、今週は2回ほどしかなく、なかなか出なくてつらいです。気になって食欲もありません。
    伝えて欲しいこと
    • いつごろから起こっているか及び回数(先週から、5日前から など)
    • どのようなときに起きるか(薬を飲んだあと3日間、治療を受けたあと1週間 など)
    • 排便の間隔(3日間出ていない、以前は毎日出ていたが週に2回になった など)
    • どのように困っているか(お腹が張ったような感じで苦しい、食事する気になれない など)

    痛み止めの薬を使うと腸の働きが抑えられ、多くの方が便秘になります。また抗癌剤治療に伴って便秘になることもあります。こういった薬の使用に伴う便秘の場合、毎日下剤を飲んだり、量を調節しながら排便のコントロールをしていくことが必要になってきます。

    入浴や腹部マッサージなどを試されてはいかがでしょうか。また必要に応じて下剤が使用されます。食物繊維の多い野菜や果物を食べる、空腹時に冷水あるいは牛乳を飲むなど排便を促す工夫が重要です。

  • 第13節 腹部膨満感

    腹部に水分やガスがたまることで生じます。生理的な量をこえて腹腔内に液体が貯留した状態が腹水です。腹水は、癌患者さんでは、15~50%にみられます。腹水の症状は、腹部膨満感、腹部膨満、尿量減少や体重増加です。婦人科癌や消化器癌で多く見られる傾向があります。

    伝わると
    原因や病態に応じて適切な対処が行われます。必要であれば下剤が処方されます。腹部膨満感がおさまると食欲も出てくる場合が多いので、食事もとれるようになってきます。また気分も快方に向かうことが多いです。
    伝え方(例)
    先週から常にお腹が張った感じでひとまわり大きくなったように思います。食欲もあまりありません。
    伝えて欲しいこと
    • いつごろから感じているか(先週から、月曜日から、今朝から など)
    • どのようなときに感じるか(治療を受けたとき、食後30分後から など)
    • どんなふうに感じるか(一回り大きくなったように、いつもよりお腹が張った感じ など)
    • どのように困っているか(横になれない、食事がとれない など)

    原因や病態に応じて適切な対処が行われます。必要であれば下剤が処方されます。お腹に負担のかからない姿勢を保ち、食事は消化のよいものを選びます。

  • 第14節 皮膚症状

    抗癌剤により、皮膚や爪の新陳代謝を行う細胞がダメージを受けます。発疹・発赤では、ぷつぷつとした湿疹ができたり、皮膚全体が赤味を帯びることもあります。薬によっては、特徴的に手や足だけが赤くなることもあります。赤味が落ち着いた後は、色素沈着することが多いです。

    色素沈着は、皮膚や爪の色が黒味を帯びたり、黒い斑点状のものが出現したりします。皮膚全体が色素沈着することもありますし、手や足、足の付け根や膝の裏など、関節部位に限局して現れることもあります。乾燥性(掻痒性)皮膚炎では、皮膚の乾燥が強くなり、かゆみを伴うことがあります。

    伝わると
    原因や病態に応じて適切な対処が行われ、必要であればかゆみ止めの薬が処方されます。発疹などがおさまってくれば、いつも気になっていた症状が改善したことで気分も落ち着いてくることが多いです。
    伝え方(例)
    左手の甲に赤い発疹ができて、カサカサしていて痒くて仕方がないです。かいて血が出ているところもあります。
    伝えて欲しいこと
    • 具体的な部位(左手の甲、口の周り など)
    • いつごろから症状がでているか(先週から、薬を飲んですぐに、3日後から、今朝 など)
    • 皮膚症状のタイプ(発疹、紅斑、水疱、爪の異常 など)
    • どのように困っているか(痛みがある、患部があたって生活に支障が出ている など)

    入浴やシャワーなどで清潔にすること。またそのときにも石鹸を十分に泡立てるなど圧力、摩擦など刺激で皮膚を傷つけないようにします。皮膚が乾燥し、柔らかさや滑らかさが失われると、より傷つきやすくなります。入浴後は、クリームを塗布するなどで保湿を行いましょう。

  • 第15節 しびれ

    しびれは自発的に生じる異常な感覚をさし、血のめぐりが悪くなったり、神経が過敏になっていることが原因で起こります。正常な感覚が鈍っている、あるいは失われる「感覚鈍麻」と同時に認められることが多くあります。

    伝わると
    原因や病態に応じて適切な対処が行われます。必要であれば、状況に応じた薬が処方されます。しびれがおさまってくると、日常の動作も楽になってくる場合が多いです。
    伝え方(例)
    月曜日から右手の指先や手の平が、ピリピリと引っ張られるような感覚がありしびれています。特に物をつかむ時にしびれが起こります。
    伝えて欲しいこと
    • 具体的な部位(左手の指先、右足の親指 など)
    • いつごろから感じているか(先週始めから、月曜日から、今朝から など)
    • どのようなときに感じるか(治療を受けたとき、冷たいものに触ったとき など)
    • どんなふうに感じるか(正座した後のようにジンジン、しびれて何も感じない など)
    • どのように困っているか(痛みがある、物がつかめない、歩きにくい など)

    一般的には、神経線維の栄養補給、再生促進のためにビタミン剤(B1、B12)が使われます。癌の浸潤や圧迫に伴う神経障害が原因となったしびれには、モルヒネなどのオピオイド鎮痛薬があまり効かないことが多く、鎮痛補助薬(抗痙攣薬、抗不整脈薬、抗うつ薬、ステロイド、NMDA受容体拮抗薬などからなります)が使われることがあります。

  • 第16節 38度以上の発熱

    抗癌剤治療を受けてから1~2週間すると、白血球の数が少なくなり、病原菌に対する体の抵抗力が弱くなります。感染症を起こす可能性が増え、また、時に菌が血液中に入り、敗血症などの重篤な感染症を引き起こすこともあるため、注意や予防が大変重要となってきます。

    伝わると
    重篤度に合わせた治療が行われます。入院が必要になる場合もあります。
    伝え方(例)
    化学療法を受けている腫瘍内科の患者です。抗癌剤を服用しています。今朝から38度以上の熱が出ています。寒気がして下痢もしています。
    伝えて欲しいこと
    • 現在の熱は何度あるのか(38.5度 など)
    • いつごろから発熱しているか(朝から、1時間前から、薬を飲んで30分後 など)
    • 発熱以外の症状(寒気がする、下痢がある、食事がとれない など)

    抗癌剤治療後の発熱の大部分は、細菌感染症によるものと考えられています。原因を探るためにいくつかの項目を確認して、優先順位をつけて治療が行われます。虫歯からの感染も多いため、口腔内を清潔にしておくことは大切です。体の抵抗力が落ちている時期は、いろいろな部位から感染症を起こす可能性があります

  • 第17節 不眠

    眠れない」といっても、寝付けない、夜中に何度も起きる、熟睡感がない、朝早く目覚めてしまうなど、その内容はさまざまです。また原因も病気によるショックや不安、症状による心身の苦痛など、身体的な要因や精神的な要因によるもの、生活環境による要因などがあり、複数の原因が重なっていることもあります。

    伝わると
    原因や病態に応じて適切な対処が行われます。必要であれば安定剤や睡眠導入剤が処方されます。不眠がおさまればぐっすり眠ることができるようになり、疲れもとれてくる場合が多く、また気分も快方に向かうことが多いです。
    伝え方(例)
    2週間くらい前からよく眠れず、疲れがたまっています。布団に入っても寝付けず、朝まで眠れないこともあります。
    伝えて欲しいこと
    • いつごろから続いているか(2週間前から、先週から など)
    • どのように困っているか(よく眠れない、眠りが浅い、朝早く目が覚める など)
    • 原因として心あたりがあるか(ストレスがある、痛みなどがある、抑うつ気分がある など)

    担当医だけでなく、心療内科や精神科の医師、癌相談支援センターのスタッフが手助けをしてくれます。不安な気持ちを話したり、体の症状に対する適切な治療を行ったり、療養環境を整えることによって症状をある程度和らげることができます。必要に応じて安定剤や睡眠導入剤が処方されることもあります。適度な暗さ(明るさ)に調節する、ぬるめのお風呂に入るなど睡眠を助ける工夫も重要です。

  • 第18節 口内炎

    癌治療で起こる口内炎は、治療が口の粘膜に影響しておこります。抗癌剤治療では、口内炎を起こしやすい薬剤の投与を受けたとき、放射線治療では、口の粘膜に放射線が直接当たるときに口内炎が起こります。

    口内炎には強い痛みが伴います。特に口の粘膜からのどの粘膜に口内炎が広がると、形のある食べ物ばかりではなく、水などの液体をとることもつらく困難になってきます。この状態が長期間続くと、栄養不足や脱水状態になることもあります。

    伝わると
    原因や病態に応じて適切な対処が行われます。必要であれば痛み止めの薬が処方されます。なるべく自然なかたちで口から栄養をとり続けることができる場合が多いです。
    伝え方(例)
    治療後5日目くらいに口内炎ができてヒリヒリします。痛くてかたいものが食べられません。
    伝えて欲しいこと
    • いつごろからできているか(先週、治療後5日目、今朝 など)
    • どのように感じるか(口の中がザラザラする、ヒリヒリする など)
    • どのように困っているか(痛くて話せない、痛くて飲み込めない、食事ができない など)

    口を診察したり、痛みの具合を聞いて症状に合わせてうがい薬や痛み止めが処方されます。口から食事をとることができる間は、少しでも刺激の少ないものを食べやすい形で食べることが大切です。熱いものは避け、人肌程度に冷ましてから食べるなど食事の工夫が重要です。また口の掃除やケアも必要です。なるべく粘膜を傷つけないように掃除することが重要です。

  • 第19節 がんの痛み伝達シート

    【監修】日本医科大学武蔵小杉病院
    腫瘍内科教授
    勝俣範之 先生【監修】国立研究開発法人
    国立癌研究センター東病院
    精神腫瘍科長
    小川朝生 先生

    痛みは血液検査とは異なり、医療者が目で見て確認できないものです。この伝達シートを利用して、不快に感じる「痛み」「吐き気」「便秘」「眠気」などを医療者に伝えてください。

    2節図3

    全ての医療者が支えます

    2節図3

    患者さんやご家族の「癌のつらさ」は医師だけでなく、あらゆる医療者が受け止めることができます。患者さんやご家族のつらさを受け止め、共に考え、少しでも気持ちがやすらぎ、前向きに治療を進められるように支えていくのも、緩和ケアの役割です。

    身近な医療者につたえよう

    「病院のなかで誰に言えばいいのだろう?」と悩む必要はありません。話しやすい医療者に伝えれば、患者さんやご家族のつらさや不安な思いは、担当する医療者(医療チーム)のなかで共有され、必要に応じて問題解決の力となれる専門家につないでもらえます。

    「お世話になっている先生方に、面倒をかけたくない…」「わがままだと思われて、嫌われてしまうのではないか?」そんな遠慮や心配はいりません。大事なことは、あなたのつらさを伝えて、支援を求めることです。

    2節図3

    ※このほか多くのスタッフで「緩和ケアチーム」が形成され、患者さんやご家族を支えます。

    <参考資料>

    • 恒藤暁・内布敦子編「系統看護学講座 別巻 緩和ケア」(2014、医学書院)
    • 緩和ケア普及啓発事業「緩和ケア.net」
    • 日本緩和医療学会リーフレット「癌がわかったときからはじまる緩和ケア」